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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第五章~家庭の事情~
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10.超攻撃的

「あ、やっと帰ってきましたね。」


 中に入ると何か見たことがある奴がいた。


「えっと…何か最低な名前だったのは憶えてる…誰だっけ…」


 今村は会うなりいきなり罵倒から入った。相手は極めて不本意な顔をする。


「誰が最低な名前ですか…ラバーですよ。」


 その言葉で思い出した。恋人か、ゴムか結局不明で最終的に両方ってことにしようと決めた地獄の動物愛護団体みたいなところの研究員だ。それを思い出して今村は三匹の子猫たちを見る。ついでに言語理解の術を掛ける。


「みゃー?(どしたの?)」

「にゃー…(撫でて…)」

「zzz…」


 急に立ち止まった今村を三匹は不審に思ったようだ。今村はラバーに疑問をぶつける。


「何しに来た。」


 そこから立て板に水と言った感じで喋り倒してくるが、今村は面倒だったので「呪式照符」で簡単に結論を見た。


「つまり、俺がサーベルライガーとコミュニケーションを取っていたのではないかという説が浮上して来たから何か掴めないかと5日間世話になりに来たわけだな?」

「…まぁ要するにそういう事です。」


 折角の長口上を遮られて不機嫌になるラバー。今村は言ってみる。


「じゃあにゃー、みゃー、ふしゃーって高い音、やや高い音、普通の音、やや低い音、低い音、それ以外をそれぞれ百回言って、練習だ。」

「え…あ、はい。…普通に喋ってた気が…それに成猫はそんな声出さないし…」

「じゃあガルルルルも色んなバリエーションで。」


 超適当なことを要求する今村。ラバーも訝しげな顔をする。


「おいおい。簡単な単語から教えようと思ったのに変なこと要求したのはそっちだぞ?」

「…そうか、人間の子供と同じように子猫が発する言葉は簡単な言葉なのか…」


 ラバーが納得する中、今村に乗せられている子猫たちが何か話し出した。


「にゃー…にゃーにゃにゃー(お腹空いた…金本位制の貨幣制度だったよねここの国)」

「みゃー?みゃみゃみゃー、みゃ~(金本位なの?信用貨幣だったと思うけど…ほら中央国家が中立国代表として作ってたと思うよ。)」


 ミャーの返事を受けてニャーが落ち込む。


「にゃ?にゃにゃにゃにゃー…(そだっけ?じゃあスライムさんに貰った金じゃご飯買えないかぁ…)」

「ふみゃ~?(ご主人様に言えばもらえるよ~?)」

「後で何か買ってやるから静かに。」


 タマが言った言葉でニャーがお願いするのに先んじて今村はそう言った。目の前ではイケメンさんがミャーミャー言っていてキショイ。子猫たちもそちらの方に気をとられたようだ。


「みゃ…みゃぁ…(何アレ…)」

「にゃー?(ミャーちゃんの追っかけ?)」

「みー!みゃー!?(やだよ!ご主人様アレ殺していい!?)」

「ダメ。これあげるから大人しくしてなさい。」


 今村はそう言って魔牛と呼ばれる牛のジャーキーをミャーに与える。


「涎垂らすなよ?」


 ご飯に夢中で返事はない。他二匹もおねだりしてくるのがとても可愛いので今村はそっちにも与えておく。ただ同じ大きさだとミャーが可哀想なのでミャーのジャーキーが一番大きい。


「…今村くん…普通にその子たちと喋ってるみたいだけど…あの人のあの行動の意味は…?」

「特にない。後で冷静になった時が面白そうだったからやらせてみた。」

「…相変わらずね…」


 呆れる白崎。そんな二人のやり取りを祓は暗い気持ちで眺めていた。


(…楽しそうに…私の方が一緒なのに…)


「…さてと、祓。久し振り。あと白崎…アレさっき何か別名名乗ってた気が…」

「あぁ…うーん白崎菫はこっちで活動する時の名前よ。」

「じゃあどっちがいい?」

「呼びやすい方で。」

「…適宜使い分けるわ。…ところで祓は何でそんなに落ち込んでるんだ?」


 ここでようやく今村が祓の様子がおかしいことに気付いた。その状況下で白崎は不本意そうな顔をする。


「…いえ。何でもないです…」

「ちょっと今村くん…年下の女の子を下の名前で呼び捨て…?」

「呼べって言うから。」

「…私の時は呼ばなかった癖に…」


 祓はそれを聞くだけで少し優越感を取り戻す。そして白崎に言った。


「それは先生と私は恋人どもっ…」

「ストップ。」


 今村がローブで祓の口を塞ぐ。それに対して白崎が柳眉を跳ね上げた。


「…恋人?ちょっと聞き捨てならないわね…今村くん説明を。」

「えーと…とりあえず場所を変えるか。ここはうるさいし…」


 後ろでニャーニャー高い声で言っているイケメンをちらっと見て今村は部屋を変えることを提案。

 自分で騒音の元凶を作り出した癖に…という白崎のジト目を後ろに感じつつ今村は移動した。



















「…で?コロルと恋人なのは本当の事?」

「…事実と言えば事実だ。それは否定できんな。理由は色々あるんだが…」


 祓の部屋に着くなり白崎はそう訊いてきた。今村もそう質問されるとそう答えるしかない。だが、理由を説明すると白崎は少し落ち着いた。


「…そう。お見合い回避のために…」

「そうだ。祓もその為に協力してくれてるだけだ。…あと祓。お前勘違い受けるから今のことはあんまり人に言わない方がいいぞ。噂が広まってしまったらお前本当に俺と付き合う破目になるかもしれんからな…」


(望むところなんですが…)


 そう思ったが表面上は了承しておく。何か言うと今村が反対するのは分かり切ったことなので、外堀を埋めるなら勝手にしていないといけないのだ。


「それにしても…死んだことにして行った先が今村くんのところねぇ…ねぇ今村くん。」

「あ?」

「私とコロルだったらどっちを恋人に選ぶ?」


 いきなり爆弾投下。今村の顔が引くつく。


「何でんな事答えねぇといけないんだ…」

「大事なことよ。」

「…お前結婚するよな…確か…」


 そこで白崎の顔が歪む。


「えぇ…誰かさんが告白を受けてくれなかったし…最後会いに来てもくれなかったから…」

「…あー…その…お前を好きって奴がな…」

「そんなの知らないわ。この最低男。私はあなたを呼んだわよね。間違っても蜂須賀君なんてお呼びじゃなかったのだけど?」


 静かに怒っている白崎。今村は苦い顔をしている。


「…まぁアレだ…その件については悪いと思ってるが一応言い分はある。」

「聞かせてもらおうかしら。納得いかなければ無理にでも私の処女を貰ってもらうけど…」

「…お前どんだけアグレッシヴになってんだよ…イメージ崩壊も良い所だ…」


 祓も頷いた。フェデラシオンでは見たことがない顔をして生き生きとしている。


「…あーとりあえず俺と付き合うとか言うのは時間の無駄だ。」

「話にならないわね。貰ってくれるの?それならそれでいいわ。」


 取りつく島もないというのはこういうことを指すのだろう。今村は「ドレインキューブ」で強制的に記憶を失わせたいと強烈に思ったが、常人に「ドレインキューブ」を使うと廃人になる可能性があるため出来るだけ使いたくない。


「く…前世で俺は虐殺しまくった。だから…」

「今と前世に関係は?」

「過去の…」

「今、私の目の前にいるあなたと私の関係にそれがいるの?」


 超攻撃的だ。今村は困る。ぶっ殺してもいいが、中学時代に結構仲が良かったし、卒業式時にはちょっと可哀想なことをした。

 それに少しでも強硬な手段に出るとおそらくアーラムが白崎を消す。それは一応回避しておきたいところだ。


(うーん…実際何の害も及ぼされてないし…一度喧嘩してた時に本を見張っててくれた恩もある…殺すのはあんまりだよなぁ…)


「今度はだんまり?いいからインバイト家のあの男が私を犯す前に早く…お願い…」

「…インバイト家のあの男?」


 懇願になりつつある白崎の言葉の中に今村は光明を見つけた。


「…婚約者よ。まだ結婚はしてないから婚前交渉はなしという事でまだ身の潔白を守っているけど…」

「…つまり、それをどうにかすればいいんだな?」


 今村は邪悪な笑みを浮かべた。思わず攻撃的だった白崎も引くほどの邪悪さだ。


「任せろ。そういうの・・・・・は大得意だ。」


 今村はそう言ってその場を後にした。



 …逃げたとも言える。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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