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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第五章~家庭の事情~
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9.留学生

「はぁ…」


 二学期が始まった。今村は盆を過ぎてから夏休みの間中本屋に入り浸ったり、閉鎖空間に行ったり相馬更生計画、最後の間を改修工事したり…と何気に忙しい生活を送っていた。

 その為、盆を過ぎてから祓とは会っていない。家に置いて来た式神の下には何度か祓が来ていたようだが知ったことではないのだ。


(もっかいミャーとタマとニャーをもふってから学校行こうかな。)


 サーベルライガーたちに壊滅的なネーミングをしていた今村は大人(成猫)になった時の彼女のことも考えずにもう一回もう一回ともふり続けている。


「よし、もふろう!『ワープホール』!」


 今村は自空間の方に飛んだ。


「みゃー」

「にゃー」

「…にゃふ…」


 飛んでいくとすぐにサーベルライガーたちが出迎えてくれる。今村は足元にすり寄って来る彼女たちを抱えると顔を埋める。

 因みに今村以外がこんなことをすればすでに凶器となっている牙が脳天に突き刺さる。


「あー…回復する…」


 ほっこりする今村。草と太陽の匂いがするやわらかな毛並みを存分に堪能するとスライムたちによる手入れの行き届いた草原に横になる。

 するとサーベルライガーたちは今村の横に並んでローブの中に潜り込もうとする。普通の獣だと軽く死んでしまうのだが、そこは今村の加減次第。三匹は頭の方からもごもご入っていく。


「はっはっは…」


 今村はローブで全員を自分の上に乗せると目を閉じ…ようとして学校のことを思い出した。


「休もっかな…」


 何だか学校に行っているのが馬鹿らしくなってき始めた今村。だが、一度休むと永遠に行かなくなる気がする。一応それでも卒業はさせてもらえるし、勉強も特にしなくてもいいのだが今村は変な所で律儀。一度契約をしたのならば行かないといけない気分になるのだ。


「…でも何かなぁ…もふりながらだったら大丈夫な気がする…そうか。」


 今村はサーベルライガーを学校に持っていくことに決めた。



















 始業式。ミャー、ニャー、タマを連れて体育館の椅子に座っていると思わず目を疑った。


「今週だけとなりますが、フェデラシオン国第一公女様、ニフタ・ネージュ様がこの学校に訪問なさいます。皆さん見かけたらしっかりと挨拶をするように…」


 理事長多忙の為、代わりに校長が壇上にいる白髪の美少女を紹介して体育館は騒然となる。それで今村の肩と頭に載ってうとうとしていた三匹がびくっとして起きた。


「…ねぇ…あの人白崎さんじゃ…」

「そうだな…後触ったら指なくなるから気を付けろ。」


 出席番号的にすぐ後ろの小野が今村の耳元で壇上の人物について言及する。それと同時に今村が右肩のニャーに掛けている「錯視錯覚」を小野にだけ見えるようにしておく。


「えっ…何その子可愛い…」

「フシャー」

「超可愛い!」


 確かに悶絶しそうなほど可愛い。それは認めるがれっきとした地獄の猛獣で、その上今村謹製の武闘派スライムたちの手ほどきを受けているし魔合成物質を摂取しているため、戦闘能力は折り紙つきだ。

 比較するならこの子猫サイズ一匹で現世の虎数十頭分くらいの力量はある。

 後、魔法が多少使えるようになった。


「よしよし…」


 今村は宥めるために耳の辺りを撫でて落ち着かせる。頭の上のタマが自分もと催促して、左肩のミャーもねだる。今村はローブと髪で相手をしてさっさと「幻夜の館」に帰ることにした。

 途中小野が大きな牙に興味を持って外側から触れたら斬れたりなどしたが切れ味が鋭すぎたため、くっつけていれば元通りになったりした以外には特に騒ぎもなかった。



















「…久し振りね。」

「あり?さっきあっちにいたのに…」


 今村が「幻夜の館」に行こうと子猫たちと戯れながら歩いていると何故か目の前に先程壇上に上がっていた人物がいた。


「挨拶もなしにどこか行くなんて酷いんじゃない?ねぇ鈍感非道男さん。」

「…酷い言われようだな…」

「当然よ。…で、あっちが『幻夜の館』ってところね?」

「あぁ…まぁ。」


 今村は酷く曖昧な答えを返す。ニフタ・ネージュは特に気にした風もなく今村の手を取った。そして肩と頭を見る。


「…その子たちは…」

「もしかして見えるのか?」

「えぇ…可愛らしい猫…猫?虎かしら…」

「ライガー。サーベルライガーだ。名前はニャーとミャーとタマ。」

「…酷すぎるわ。」


 そんな他愛もない話をしつつ2人は「幻夜の館」に歩みを進める。そして祓が今村を出迎えた。


「先せ…っ!」

「あら…コロ…」

「先生大好きです!」


 ニフタが何か言う前に祓が大声でそれを遮った。突然の告白にニフタは顔を顰める。ついでに今村も顔を顰める。聴覚を失ったからだ。


「…コロル?いきなりどうしたの?先生って…」

「お姉さまお願いします。私が公女だということは先生に知らせないでください!」


 祓は必死になって懇願する。過去に今村が王族、公族が嫌いだと言っていたからだ。


「…あぁ戻った。…ってか祓いきなり何を…」

「愛してます。大好きです。」


 再び聴覚を失う今村。何故かテレパスも使えない。


(…もしかして体が無意識に防衛してるとかか…?あまりにも罵詈雑言を吐かれ続けて来たから心がこれ以上耐えられないとか思って聞こえないようにしてるとか…恋人役を頼んでおきながらずっと放置だったからそれ位酷い事言われてるのかもしれんな…)


 何も聞こえないのだから考察を行う。そして実際とは全く逆のことに思い至る今村。


 だが、それは仕方ないのかもしれない。一度目は約束を果たせなかったとき、二回目は異世界に行って放置した時、そして大体の場合において今村は結構酷い状態において祓に告白を受けていたのだから。


 そんな聞こえない状態で祓はニフタに話をする。


「先生はそこにいる今村仁さんの事で、私に生きることを教えてくれた人です。」

「…それは何となく察しが付くけど…いきなり告白したのは何故?」

「そうすれば先生は聴覚を無くすからです。先生は呪いで好意を一切受け付けない体なので。」


 その言葉にニフタはハッとする。


「…そう。そういう事…」

「お願いします。嫌われたくないんです!公族だったことはなかったことにしているんです!先生はそれを知りません。唯の貴族と思ってるんです!」

「…別にいいわよ。コロルは事実死んだことになっているのだし…それにしても…実際に何か変な能力持ってるみたいだし、呪われてる…だからか。」


 祓の頼みを軽く引き受けた後、ニフタはぶつぶつ呟いている。その内子猫をもふもふしていた今村の聴覚が復活して「幻夜の館」に入ることになる。


「にしても仲が良いみたいだけど…どういう関係?」

「コロルは貴族だから…一応面識はあるのよ。」

「はい。」


 今村はそれ以上突っ込まなかった。話を聞けば面倒なことに巻き込まれるのが分かっていたからだ。


 今は忙しいし、予定もたくさんある。これ以上面倒なことには関わりたくないのだ。だから「幻夜の館」に入る時にニフタが祓の耳元で呟いた言葉も聞こえなかったことにする。


「…手伝ってもらうから…」


 何をかは聞こえなかったが、聞こえないことにしておいたから問題はないのだ。




 

 ここまでありがとうございます!




 ちょっとした愚痴。


 あぁぁああぁ…間に合わなかった…中学生間に合わなかった…ここまでに完結しておきたかったのに…


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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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