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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第五章~家庭の事情~
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8.やってしまった

 食事は父親がセクハラ紛いのことをして呉羽にボコされた後、母親に吊し上げられる…位の他愛もないやり取りが行われる以外に特に事件は起こらなかった。


 強いて言うのであれば祓が持っていた冥界のお土産がちょっとおいた・・・をして食事先にいた人を食事にしようとした位で、それも未然に今村が防いだ。


(…何を思って先生は私にアレをくれたんだろ…)


 帰り際祓はずっと不思議に思っていた。


 そして家の直前に迫ったいた帰りの車内で母親が祓に訊く。



「この後どうするの泊っていく?」

「あ゛ぁ?」


 今村が思いっきり不機嫌な声を思わず漏らしたがそれは呉羽の声でかき消された。


「えぇ!でも泊める場所ないよ家…」

「仁の部屋に一緒に寝ればいいじゃない。」


(…もう一回守護霊を交代する必要があるみたいだな…)


 因みに守護霊交代を行うと人格が変わる事が多い。

 今村は過去、親に軽く殴られたりなど怪我には至らないものの多少痛いことを受けていたが15歳の誕生日になった途端前世の記憶の一部が流れて来たのでとりあえず入れ替えてみて成功したのだ。

 父親は殴って来たのを普通に止めて関節を極めた所で行った上、未だに攻撃してきたりするので守護霊交代が成功したかどうかは微妙な所だが…



 一応その時に力を使い過ぎたせいで力の目覚めが遅くなったのではないかと今村は睨んでいる。


「え…でもお邪魔では…」

「大丈夫大丈夫。」

「大歓迎だ!」


(『呪具発剄』イルネス…腹痛でいっか。)


 父親を強制退場させて今村は反対できる理由が薄いことを知る。運転席の父親が五月蠅くなってスピードを上げたりしているのを聞き流して考える。


(…部屋にあるものを触られると不味いからな…あととっておきのギミックがあるし…そっちは是が非でも守らないといけない。)


 父親は祓を襲う可能性があるので却下、母親は寝る場所が決まってないので不可能、妹はボロを出しそうなので無理。


(…夜中、『ワープホール』で帰らせて明朝迎えに行くか。)


 家の中ではあまり使いたくないが、寝るときに誰かが横にいると落ち着かない。安眠するためなら仕方ないと割り切って今村はそれを受け入れた。



















 帰宅して自室に入ると祓も付いて来た。そして色んなことから遮断されて少し不安になる。


「せ…先生…これ」

「あぁ…言ってたろ?これの所為で面倒臭いことになったって。結界。かなり強力だから俺も例外なく術が使えない。あと、遮音、遮光、耐衝撃が付与されてる。」

「…何でそんなに…」

「昔誰かさんたちが俺が寝込んでた時に壁ごと壊して無理やり侵入して来たから。」


 今村は祓の方を見ながら真顔で言った。


「あ…その…スミマセン…」

「二度とするな。俺は病気で死んでもいいけどここにあるものが壊れるとか考えたくもない!」


 無神経な言葉しか言わない今村を一瞬睨みつける祓。


「あ?」


 今村はその視線を受けて睨み返す。


「何か文句あるのか?また壊す気か?」

「違います…死ぬとか軽々しく言わないでください!」

「はっ!平和な時代になったもんだね。昔は死なんざその辺に転がってたのによ。」

「論点が違います!別に誰が死のうとも構いませんが先生は死なないでください!」

「無理。最後はみんな死ぬ。…ってか誰が死のうと構わないってそれはちょっとアレなんじゃね?」


 苦笑交じりに今村は言って、祓はその態度にムカつく。そしてふて寝することに決めた。


「寝ましょう。」

「あ?『ワープホール』で送るぞ?」

「嫌です。」

「拒否権はない。」


 今村はそう言って強引に祓を連れてドアの方に向かう。


「嫌です!」

「うっさい。協力してもらっといてなんだがうっさい。…?」


 今村がドアに手を掛けた所で違和感に気付く。押せないのだ。


「…何だ?」

「ていっ!」


 今村がドアを前にして訝しんでいると祓が拘束から抜け出した。だが、今村はそれどころではない。ドアが開かないのだ。


「…何で?」


 するとドアがほんの僅かながらに開いてそこから紙が一枚部屋の中に滑り込んできた。

 文面は以下の通りだ。




 早く孫の顔を見せなさい。ドアは箪笥で閉じてるので無理に動かさないでね。




 以上。今村はその文面を何度か見て叫んだ。


「ざっけんな馬鹿どもがぁっ!」

「…どうしたんですか?」

「出られない。」

「…それは困りましたね…お風呂に入れないです。」

「そこじゃねぇだろ!」


 この結界は「αモード」状態の今村が2日かけて作り上げたもの。今村が作り上げた結界なので壊すのは作るのよりも簡単だが少なくとも「αモード」で一日かけなければならない。


(これはマズイ。設定安置型ドレインキューブの中にある性欲とかが夜の間に戻ってくる。)


 あらかじめ結界内に内包している術はそれ以上にもそれ以下にも設定を弄ることはできない。

 今村はその辺の性欲の処理は顔を洗ったり歯を磨いたりしながら行っていたので部屋の外でないとできないのだ。


「…ところで先生。この部屋って術使えないんですよね?これ何ですか?」

「ちょっ!おい!」


 そんなことを考えているとまさにその話題となるものを祓が手にしていた。


「止めろ!触るな!」


 今村が結構本気なのを見て祓は先程の会話を思い出す。


(…こんなのが先生の命よりも大事なもの…?…ふざけないでください…)


 祓はそれを見て非常にムカついた。衝動的に破壊したい気分になる。


「落ち着け。落ち着け…」

「…これが先生の命よりも大事なものですか…?」

「ある意味そうだから!今はそれをそっとしておいてくれ!」


(抵抗できない女とヤったら死にたくなる。化物の子なんか残せるわけないだろ!)


「…今何故か非常に嫌な気分になりました。」

「奇遇だな俺はさっきからずっと嫌な気分だ。」


 因みに今村は術なしでヤったら100発100中の呪いが掛かっている。ここでヤるのは非常にまずい。


「…では交換条件です。」

「何だ?」

「一緒に寝ましょう。」

「はぁっ!?」


 全部分かっててからかっているのではないだろうかという考えが浮上してくる。


「あの狭い布団の中に二人で?」

「はい。」

「何で?」

「布団は一つ。寝る人は二人。それなら当然の成り行きじゃないですか。」

「前提条件。お前女、俺男。」

「問題ないです。」

「大有りだ!」


 だが、言うなればそれ以上に不味いことが目の前で起こっている。あれを壊されたら今の提案より不味いことになる可能性が大きいのだ。


(冷棄却法は長時間もたないから…あぁ選択肢が一つしかない…)


 今村は諦めた。そして先に言っておく。


「…寝るなら言っとくが…俺は残念ながら何かに抱きつく癖があるぞ…それでも…」

「いいです。」


 あっさり了承。






 翌朝、今村は危惧していた通り祓に抱きついて、祓は今村より早く目が覚めるもののしっかりホールドをし返す。

 そして箪笥が退かされて呉羽が様子を見に来たところでドアが開く気配がして今村は起きる。が、目の前が真っ暗で柔らかくて暖かい…が、退かせない。

 呉羽が何か言ってるところで離れたそれは祓の胸で今村はやってしまった…と呟く。


 それを耳聡く聞いた呉羽が騒ぎ立て、家中大騒ぎになり、お盆に実家に帰省するときにも祓は付いて来て目立ちまくり、この日の話題で今村は面倒なことになった…と頭を抱えた。




 ここまでありがとうございます!

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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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