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例外者の異常な日常  作者: 枯木人
第一章~最初の一年前半戦~
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1.終わりの始まり

 雨によって桜の花びらがほぼ散ってしまった私立白水高校の入学式から四日目が経過した日の帰りのホームルーム。一年四組に転入生が現れると担任から報告があった。


(……何で四日目に? 中途半端な……空席もなかったし欠席者はいなかったから、マジで転校生だな……)


 一年四組出席番号六番の今村 ひとしはそう思いつつ担任の話を聞き流しながら帰る準備を進めた。担任の話は決められたホームルームの時間より早く終わり、担任は出て行く。


(勝手に帰ったらどうなるかね……気づかれない自信はあるが……)


 今村がそう思っていつつも転校生を待っていると教室の前の扉が開き、中に男女二人が入ってくる。その姿を見て同時に同級生たちがざわめき始めた。


 今村もその入室者に軽く目を見張ってすぐに細めた。


(理事長じゃねーかあれ……何だあの転校生……裏口入学か?)


 今村は二人の中、男を見て理事長だとすぐに思い出してそう思う。

 しかし、同級生たちの視線は女の転校生の方を向いていた。白く、腰の辺りの毛先まで纏まった美しいストレートな髪。およそここにいる人間と同じとは思えないほど整った容貌。健康的な白い肌。男子はもちろん女子までみとれてしまう美貌……

 しかし今村の乱視の上に低い視力ではそんなものは見えていない。そのため今村がまぁいいかと思いぼけっとすることを決めた中、理事長が口を開いた。


「さて、皆さんお察しの通り、私は白水 廉也この学園の理事長です。」


(別に誰も察してないけどな……にしても若ぇなぁ理事長……二十半ばくらいにしか見えんぞ?)


「今、私がここに連れてきた子は少し事情がある子なので皆さん気にかけておいてください。」


(うわ要らん介入だなかわいそうに……)


 今村が理事長の発言に一々突っ込む中、話は進行していく。


「それでは祓君自己紹介を。」


 長々とした理事長の話の最後に彼がそう言うと白髪の美少女は一歩前に出て口を開いた。


「……天明てんみょう はらえ。北の王国、フェデラシオンから来ました。十四歳で、趣味はなし。身長は152センチメートル。体重は42キログラム。バスト74ウエスト52…」


 少女は澄んだきれいな声で無表情に自己紹介をし、秘匿するべき個人情報まで平淡な声で述べ、理事長に途中で止められる。


「えー祓君は少し事情がある子なので今日はこのあたりで、」


 今村はその言葉を聞いて終わりかと思った。そして早く終われと言わんばかりの視線を前にいる二人に向け、目で訴える。そんな中前にいる二人が小さい声で話しているのを聞き取った。


「で、どうですか?」

「一番右の四番目、左列三番目の後ろから二人目、その隣の二番目……」

「わかりました。」


 白髪の美少女、祓との会話が終わると理事長は座席表を見ながら言った。


「石川さん、今村君、森君はこの後ここに残ってください。では解散です。」


(あ?)


 今村の心の言葉には若干濁点がついていた。しかし、内心の感情など一切面に出さずに理事長を見ていると彼は残っていた生徒たちが居なくなるまで待って呑気に仕切り始める。


「はい、それでは森君は今から、今村君は十分後、石川さんは更にその十分後にこの教室に入ってください。」


 三人だけが残った教室で理事長は有無を言わせない口調でそう言った。仕方なくその通りにする三人。


(何だってんだ……俺は帰って漫画を読まねばならないのに…)


 不機嫌そうにいつの間にか教室の前の廊下に準備されていた椅子に座り、バッグから本を出す今村は内心で溜息をつく。


(はぁ……まぁこの本も面白いからいいんだがさっき読み終わったばっかりで……)


 とりあえずお気に入りのシーンの所を開こうとすると理事長が教室から出てきた。すると不安そうに石川が理事長に話しかける。


「あの……中でなにをするんですか?」

「ははっ特に心配はいりませんよ? 石川さん。」

「そうですか……」


 まったく解決していないのにもかかわらずすぐに引き下がった石川を文庫本から少しだけ目だけを向けて観察した後、理事長も見て本日だけで何度目かの内心での溜息をつく。


(答えになってないな……それで納得するって大概だなイシカワさん。ってか理事長がイケメンだからか? イシカワさん理事長に惚れちまってるんかね? まぁ俺にゃあ関係ないか。)


 今村は目の前のことに対してもう関係ないとばかりに本に目を落とす。しかし理事長がこちらの方を向いて口を出してきた。


「あー今村君は大丈夫ですか?」

「……まぁ内容によりますけど大体大丈夫でしょう……」


 何の根拠もなく適当に答える今村に理事長はオーバーリアクション気味に言ってくる。


「頼もしいですね! それでは私は理事長室に戻るので君たちも終わったら帰ってもらって構わないです。」


 理事長はそう言い残すと去って行った。


(フム、帰っていいかな?)


 前言はどこへやら、今村がそう思っていると教室の扉が開き、中から森が出てきた。今村は森の方に寄って小声で話かける。


「……中で何があった?」


 石川よりかは話しかけやすいと思っての行動。しかし森の返事はない。


「……どうしたんだ?」


 更に声をかける今村。しかし森は返事どころか動かない。不審に思った今村は森を観察してみる。その状態を訝しげに思ったのか石川も近づいてきた。


「! こいつは……」


 そしてようやく今村は森が動かない理由に気づいた。石川は何があったのか気になりそんな二人の方に駆け寄る。


「どうかしたんですか!?」

「立ったまま寝てやがる……」

「……すごいですね。」


 今村の言葉と森の状態に呆れながら石川は何とも言えない顔で石川はそう言った。



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全盛期、相川だった頃を書く作品です
例外者の難行
例外者シリーズです
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