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六章 月 その十一

「やっと眠ってくれたみたい」

 音を立てぬよう、扉を静かに閉めて、ミヨは言った。

「そう。本当にやっとね。元気があり過ぎるのも困りモノだわ」

 腰に手を当てて、少しばかりの疲労感と共に、レナは呟く。

 王都の郊外近くで、ひっそりと営まれる安宿の一つ。

 現在、彼女達は、そこに部屋を取って滞在していた。

 古臭く控えめな建物は、決して立派とは言えない。

 だが、内部は非常に清潔に保たれており、宿の主も丁寧な応対をしてくれる、値段のわりには好感の持てる所だった。

 彼女達がこんな場所にいるのは、ナヅチの頼みによるものだ。

 孤児院の子供達全員を、この宿に泊まらせ、もしもの時は、守る役目を引き受けたのである。

 そんな事をする理由は、唯一つ。

 今夜あるだろう、孤児院への何者かの襲撃に、子供達が万が一にも巻き込まれぬようにするためだ。

 高い確率で危険が及ぶとわかっているのなら、子供達をあの孤児院に置いておくのは得策ではない。冷たい言い方をすれば、足手まといになってしまう。ただ敵を迎え撃つ事と、誰かを護る事では、難易度に大きな開きがあるのだ。

 それをよく理解している故に、レナ達も子供達の事を引き受けたのである。

「……はあ。それにしても、疲れた……。テナさんの苦労が知れるわね……」

「私もへとへとだよ……」

 レナの実感のこもった言葉に、ミヨが同意と共に苦笑する。

 適当に理由をつけて、子供達を王都の方へ連れ出したまでは良かった。

 しかし、暗くなってから、今夜はこの宿に泊まるという事を告げた時、それを納得させるのには酷く苦労したのだ。

 なにせ、この宿に泊まる本当の理由を教えるわけにもいかない。そんな事をすれば、余計な心配をさせてしまう。何より、下手をしたら、孤児院へと子供達が自ら飛び込んで行ってしまう可能性もある。

 故にレナ達は、

「フウガ達が居る機会に、夜まで孤児院を徹底的に掃除する。だから、皆には、こっちの宿で一晩だけ過ごして欲しい」

 ――と、そんな風に説明する事にしたのだ。

 だが、そうしたらそうしたで、今度は子供達は、「自分達もじーじ達を手伝う!」とそんな風に言い出したのである。

 こんな状況でもなければ本当に素晴らしい話だが、当然、これにはレナとミヨも焦った。

 このまま子供達を孤児院へと帰らせてしまったら、何のために王都まで連れて来たのかわからなくなってしまう。

 その後は、もう子供達との終わりの見えない押し問答である。

 軽く二時間近く掛けた説得の後、結局、昼に王都を回った疲れもあって、子供達の方が根負けして部屋で寝こけてしまい、現在に至っていた。

「だけど……」

 ふと、子供達が眠っている部屋を振り返って、ミヨが言った。

「あの時のナヅチさんの話……やっぱり本当なのかな」

「……疑ってるの?」

 レナが声に真剣味を帯びさせて訊いた。

 ミヨは、頭を振って否定する。

「ううん。そうじゃなくて……突然な上に予想外過ぎて、きちんと飲み込み切れていないんだと思う。だって、ナヅチさんがあの〈常闇〉の首領で、テナさんは暗殺者だったなんて……いくら何でも……」

「そうね……。確かに、簡単には受け入れ切れないわよね……」

 レナも同意して、小さく息を吐く。


 ――〈常闇〉。


 今となっては、過去のものとして多く人々に知られるそれは、およそ十七年程前には、世の裏側を知る一部の者しか把握せぬ存在だった。

 その正体は、暗殺組織。

 大金と引き換えに、依頼した人物が排除して欲しい人間を、誰にも知られず悟られず、確実に始末する。依頼者が望むのなら、それは事故を装った暗殺であり、病死に見せかけた毒殺であり、あるいは、見せしめの意味も込めて、あからさまに暗殺とわかるような殺し方もした。

 つまり、〈常闇〉というのは、そういう集団だったのだ。

 この組織に依頼をするのは、何も裏に生きる者達だけではない。

 権力欲に塗れた貴族、憎悪に取り憑かれた平民――他者に対する殺意を持つならば、地位や立場などは問わなかった。その存在と接触する方法さえ知り得れば、金銭を代償に、誰もが組織に依頼をする事が可能だった。

 そして、その増え続ける需要を受けて肥大化した組織は、いつしかアマテラス神聖王国の国王スメラギ・ミコトと神聖騎士団の知る所となる。

 結果、第一師団を率いるスサノ・ラシン――フウガの父によって、〈常闇〉は壊滅させられるに至った。

 この出来事は、当時は大きな事件として、王国の人々に多く知れ渡った。滅びた〈常闇〉の名も、その日より、多くの者達にとって周知のものとなったのである。

 だが、組織の首領たるナヅチと、そこに所属していた暗殺者の一人であったテナは、すでに組織壊滅の一年前に組織を抜けていたのだ。

 その動機を二人は、こう語った。


 ――人を殺める。

 その行為を続ける事に、もはや耐えられなかった。


 ナヅチは言った。

「当時の私は、暗殺者として生きる己に何ら疑問を持たず、人を殺める事を当然のように是としていた。だが、そうして過ごして来た長い年月と……テナの存在が私を変えてくれたのだ」

 組織は、その人員の多くを、素養のある人間を勧誘するか、もしくは身寄りのない子供を攫い、幼い頃より暗殺者として育て上げる事で集めていた。

 テナもまた、物心つく前に身寄りを失い、組織に攫われた一人だった。

 最初、ナヅチにとって、テナへ向ける感情は、他の攫われてきた子供達に対するものと何ら変わる事はなかった。

 これから暗殺者として鍛えられ、将来使い物になるかどうか振るい落とされていくだけの道具のようなもの。特別、興味が向く事もない、ただそれだけの存在。

「しかし、私も年老いていた。もはや若き頃のような氷を鋭く研いだような冷たき心は持てず、長き時により積もった内なる疲労は、無意識にその拠り所を探せていたのだ。……あるいは、そもそもの私の性質が、その生き方を許容出来ていなかったのかも知れない」

 本人も気づかぬうちに擦り減っていっていた彼の心。

 それは、いつしか導かれるように、そのテナという少女へと特別な感情を抱かせる。一人前の暗殺者として成長し、優しさも暖かさもまるでない殺伐とした世界に生きながら、未だにその目の奥の光を失わぬ、輝かしい存在に。

 だから、テナもまた――そんな変わりゆくナヅチと自然と心を通わせていくようになる。

 ……そして、あの日。

 ナヅチの元を訪れたテナは、父にように慕い始めていた彼へと、その秘め続けた内心を吐露した。


「もはや、自分は暗殺者として生きていく事に耐えられない。共に組織を抜け、今とは違う、別の

生き方を模索しよう」


 ナヅチは、それを受け入れ、頷いた。

 〈常闇〉を捨てる事を決意したのだ。

 およそ、自身の若き頃を思えば、考えられないような選択。

 だが、彼もまた、その疲れ切った心は、すでに限界を迎えていたのだ。

「これまでの私の行ってきた事を思えば、全く持って都合の良い話だ。だが、さりとて、その気持ちに気づいてしまった以上、あのまま〈常闇〉の首領として生き続ける事は出来なかった」

「だから、私達は組織を抜けた。今度は奪うのではなく、育むために。償いなんて言うつもりはないの。ただ私達は……もう望まぬままに誰かを殺める事はしたくなかったのよ」

 その後、彼らは正体を隠したまま王都に潜んだ。

 そこで使われなくなった貴族の別邸を改装し、孤児院を開くと、ゴウタ、ライ、フヨウを孤児として引き取り、育て――今も多くの子供達を同じように育ててきたのだ。

 これが……ナヅチ達の隠された真実。

 全てを明かされたレナとミヨ、そして、ウズメは、しばし言葉を失った。あまりの内容に、すぐには全てを受け止め、理解する事は出来なかったのだ。

 それでも、なんとか平静さを取り戻した彼女達が、まず思った事は、


 ――自分達には、この二人を神聖騎士団に突き出すような真似は出来ない。


 と、いう一つの事実。

 二人が組織を抜けるまでの間に行ってきた事は、紛れもない罪だろう。

 だが、だとしても、孤児院の子供達には、二人が必要なのだ。子供達から彼らを奪う事など出来ない。

 そして、今のナヅチとテナは、もはや人を人と思わぬ冷酷な暗殺者ではなく、ただただ子供達を想う当たり前の人間――親そのものなのだ。

 ならば、今は胸に秘めようと。

 それが騎士候補生としては間違った選択だったとしても、真実を包み隠さず話してくれた二人と――彼らに育てられた仲間であるライ達を信じようと思った。

 何故なら、彼女達が知るのは、子供達が心から慕う孤児院の院長であるナヅチと子供達の世話役であるテナであり暗殺者としての彼らではないだから。

 数日前に抱いた想いを思い返すと、戸惑いを振り払って、レナは言った。

「でも、私達は決めたんだもの。ナヅチさんとテナさんの味方で居ようって。だから、今は、子供達の安全を確保する事だけを考えましょう」

 ミヨも胸に手を当て、頷いた。

「……そうだね。レナちゃんの言う通りだ。今更、そんな事を考えて悩んでたって仕方ないもんね」

 そうして話が一段落して。

 レナは、ちらりと廊下の窓から、外へと視線を馳せる。

 見つめる方角にあるのは、フウガ達が今まさに襲撃者を迎え撃っているだろう、孤児院だった。

「…………」

 胸中で、不安が渦巻く。

 襲撃者がどれほどの相手かはレナにはわからない。

 しかし、何かの弾みで、再びフウガが例の痣を出してしまうのではないかと気が気でなかった。

 もちろん傍にはライ達も居るし、心配ばかりした所でどうしようもない事も理解している。それでも、理屈では抑えきれない思いがあるのもまた確かだったのだ。

「レナちゃん」

 そんな親友の様子を見かねたのか、ミヨが声を掛けてくる。

「えっ……な、何?」

「……全くもう」

 呆れたように、ミヨは溜息を吐く。

 レナは戸惑って、目をしばたたかせた。

「だ、だから、何なのそのリアクションは」

「――心配なんでしょ? フウガ君がまた、あの痣を出しちゃうんじゃないかって……」

「! う……いや、そんな事は……」

「隠しても無駄。私達、何年、友達やってると思ってる?」

 ミヨは、したり顔で指を振る。

 もはや諦めすら感じながら、レナは肩を落とす。

「やっぱり、バレバレなのね……」

 そんな彼女に、ふと優しい微笑を湛えて、ミヨは言った。

「そうそう。……っという事で、レナちゃんはフウガ君の所へ行ってあげて」

「え、ええっ!」

 まさかの提案に、レナは素っ頓狂な声を上げる。

「だ、だけど、子供達の事、ナヅチさんに頼まれているのに……そんな勝手な理由でここを離れるわけにはいかないじゃない」

 しかし、ミヨは退かなかった。

「レナちゃん。私、知ってるんだよ。子供達と一緒の時だって、頻繁に上の空だった事。本当、わかりやすいよね」

「…………そこまで気づかれてたの」

「そんな状態じゃ、どのみちまともに護衛なんて出来ないでしょう? だったら、私一人の方がマシだよ」

「ミ、ミヨ……? あんた、そんなキツイ事を言うキャラだっけ……?」

「さて、どうだったかな」

 くすくすと楽しげにミヨは笑うと、

「ほらほら。そうと決まったら、さっさと行った、行った」

 素早くレナの背後に回ると、ぐいぐいと押して来る。

「…………で、でも」

「レナちゃん」

 まだ逡巡するレナの名を、ミヨが再度呼ぶ。

 少女の双眸の奥に宿るのには、ただただ真摯な光。

 自らの最愛の友を純粋に心配し、応援する優しい想い。

「――ミヨ」

 それを見た瞬間。

 不思議な程にあっさりと、レナの中で決心がついた。

 ミヨは、こんなにも自分を気遣ってくれている。

 自分の我が儘な想いの通りにさせてくれようとしている。

(そう……全部、私のために……)

 だったら今は、そんな彼女の優しさに甘えよう。埋め合わせなら、後からだって出来る。

 フウガを痣の呪縛より救い、そして、ウズメにも負けない。

 そう決めたのなら、こんな所でじっとしてるわけにはいかないはずだ。

「……ごめん、ミヨ。この間から、あんたには、いつも背中を押されてばっかりで」

 ミヨは、まるで何でもないように、ただ暖かな微笑みを浮かべた。

「気にしないで。学園に入る前までは、私の方がその立場だったんだもの。ただの恩返しだよ」

「ありがとう。――行って来る!」

 迷いを振り払ったレナは、もはや躊躇う事なく宿を飛び出して行く。

「…………」

 ミヨは、そんな親友の背中を優しげで……そして、ほんの少しだけ切なさを宿した瞳で見つめ続ける。

 そして、誰にも聞こえないような小さな声で囁いていた。

「レナちゃん、絶対に負けちゃ駄目なんだからね……」


 ◇ ◇ ◇


 孤児院内、ナヅチの部屋。

 揺れるランプの光に照らされて、薄闇がぼんやりと侵食される。

 外で行われる戦闘などなかったかのように静寂に包まれた部屋の中で、ナヅチは椅子に深く腰掛け、目を閉じていた。

 その姿は、これから訪れる誰かを待っているかのようにも見えた。

 瞼がゆっくりと持ち上げられる。

「――十八年ぶりか。クロガネ……いや、シロガネか?」

 ナヅチは、振り返る事なく、背後へ声を投げた。

「クロガネは死んだ。組織が神聖騎士団に壊滅させられた時にな。――そう、貴様のせいでだ、ナヅチ」

 返事があった。

 扉も窓も開いた様子などなかったはずなのに、ナヅチから数歩程離れた後ろに、いつしか一人の男が立っていたのだ。

 他の暗殺者達と同じく、全身を黒装束で包み、その目だけを覗かせている。その身に着けた衣装こそ同じでも、放つ殺気、威圧感などは、まるで別物だった。

 紛れもなく手練れ。そして、暗殺の技能のみでなく“戦う力”を有した男である事が知れた。

「……なるほど。私のせいか」

 否定する事なく、ナヅチは呟く。

 対して、シロガネは憎しみに塗れた言葉を吐き出した。

「他に何がある。組織を抜けた貴様達が漏らさねば、神聖騎士団に〈常闇〉の所在地が明るみに出るはずもなかった」

「さて、な」

「…………あえて、俺をここまで侵入させたのは、何のつもりだ?」

「気づいていたか」

「当然だ」

 ナヅチは、ゆっくりと椅子から腰を上げると、振り返った。

「かつて、〈常闇〉の首領であった私……。ならば、最初にお前と向き合うのは、私であるべきだろうとそう思っただけだ」

「今日訪れるのが、俺であるとわかっていたと?」

「わかるさ。伊達に、長く組織の首領はやってはいない。その日が迫る度に、この孤児院の周囲で微かに香る空気は、あまりに懐かしかった」

「ふん、ならば死ぬ覚悟も出来ているという事か」

「生憎だが、私は自ら進んで死に行くつもりはない。そんな行為に意味はなかろう。ましてや、償いになど、決して成り得えはせん」

「知った事ではないな。〈常闇〉、そして、我が半身――双子の弟クロガネの仇として、存分な苦しみを与えた後、殺してくれる」

 じりっと一歩、シロガネは前へ出る。

 部屋の中に、濃厚な殺気が充満していく。

 それを受けても、ナヅチは顔色一つ変える事なく、復讐者を見つめていた。

「知っているぞ、ナヅチ。今の貴様には、もはや戦う力はない。病と老い、それらが貴様をただの老いぼれへと変えたのだ。その無力――せいぜい思い知って、死ぬが良い」

 言葉とは裏腹に、シロガネは、すぐには飛び掛からなかった。

 例え、戦う力を疾うに失っていたとしても、このナヅチという老人が油断ならぬ相手だと、よく理解していたからだった。

 しかし、その様子見も、すぐに終わる。

「夜見へ堕ちろ、ナヅチ!」

 腕を一振りすると、どこからともなく短刀が出現し、その手に握られる

 そのままシロガネは滑るように、ナヅチへ迫った。

「――させはしない」

 声は、本棚の陰から、唐突に響いた。

 暗殺者として稀なる実力を持つはずのシロガネにして、その存在を気づかせず潜んでいた伏兵。

 その人物は、ナヅチを襲う脅威を、手刀一つで弾いた。

 シロガネの手を離れた短刀が、部屋の隅へと転がって行く。

「……っ! やはり、貴様も居たか。テナ」

 打たれた腕を押さえ、シロガネが後方へと退く。

 ナヅチを救ったテナは彼を背後に庇い、シロガネと対峙する。

 今の彼女は、子供達と接している時とは別人のように見えた。薄く開いた細目に宿る光は冷たく、その構えには隙はない。

「ナヅチ様は殺させない。この方が抗う力を失ったというならば、私こそが彼の盾であり刃よ」

 シロガネが、改めて彼女を眺め、嗤う。

「仮にも、かつては師であった俺へ躊躇わず牙を剥くか。なるほど、裏切り者らしい行動だ」

「……いいえ、違うわ」

 テナは、はっきりと否定の言葉を吐く。

「少なくとも、〈常闇〉が滅びたのは私達が原因ではない」

「ほう……。では、何故だと言うのだ」

「私達は組織は抜けた後も、その情報を一切誰かに漏らす事はしなかった。例え、それが許されざる存在だったとしても、〈常闇〉は私達の生きた場所であり、そこに属す者達は仲間だった。だから、組織は離れても、〈常闇〉に関する事を口外せぬ事が、せめてもの義理立てと思ったのよ。……それが、どうしようもなく自己満足であったとしてもね」

「それを信じろと? そして、万が一信じたとしても、俺が大人しく引くとでも?」

「思わないわ。だけど、これだけは言わせてもらう。

 〈常闇〉の存在が明るみに出た理由……それは、ナヅチ様が抜けた後、首領を引き継いだ貴方達が、むやみやたらに組織を拡大したからよ。暗殺組織は、闇に潜むからこそ成り立つもの。その根底を忘却し、より強い権力を求めた故に、〈常闇〉は滅びた……。わかる? 必然だったのよ。組織が潰されたのは。貴方達双子によってもたらされた破滅だった」

 テナの指摘を受けても、シロガネは憤る事もなく、静かに嘲りの笑みを広げ続ける。

「――言ってくれる。だが、例え貴様の言う通りだとしても、俺にとってナヅチや貴様が憎むべき裏切り者――そう、敵であるという事は変わるまい」

「憎むべき敵……そうね。そうなのでしょう」

 テナは肯定し、頷いた。

 伸びた手が自身の胸元を掴み、服をはだける。

「けれど、それは私にとっても同じ事。我が師である双子の一人、シロガネ――」

 薄闇の中、肌が露になる。

 同時に、僅かに覗く豊満な乳房のすぐ上。

 そこに、正常な人間なら有り得ぬ物があった。

 半透明で、内部に淡い黄金色の光を宿す石。

 それは、肉に深くめり込み、彼女と完全に一体化していた。

「お前は、私の憎むべき――敵よ」

長い間、更新が止まってしまい申し訳ありません。

今後も頻繁な更新は出来ないかもしれませんが、執筆だけは続けていきますので……。

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