藁
書いてある内容は、苛め等に触れてますので、不快になりそうな方はブラウザバックしてください。
必要のない人間はいらない。
人が沢山いる交差点。行きかう人々は様々で見ていて飽きない。信号の色は守る無頼を気取る青年。いい女のフリをする女子。そのうち別れるであろう若いカップル。気力も無く自己を守るサラリーマン。いつまで若いつもりか解らないOL。
まったくもって飽きない。その代わりに皆、僕に怒りを感じさせる。特に彼らが僕に何かをした訳ではない。ただ、必要でない人間が僕の周りに溢れている事が僕は気に食わない。行きかう奴らの中で目の合った奴の目を僕のチョキでつぶしてやりたいとも思う。きっと「ギャっ」と言って一通りの騒ぎの後に僕が捕まるだけなので決してやらないが。
しかし不思議なもので、もし気に食わない奴の目を僕の指で潰すとしても、僕はきっと何とも言えない罪悪感を負うのだろう。嫌いな奴なのにだ。蚊やゴキブリを潰しても、中学校で苛められている奴を助けなくても罪悪感なんて無いのに、僕が目を潰すという行為には罪悪感がある。
何故かを考えたら直ぐに答えに至った。
蚊を潰すのも、苛められている奴を助けなくても、僕に責任なんてないからだ。
蚊を潰さなければ血を吸われるし、ゴキブリは社会的に嫌われていて、僕が生まれるから殺すのが当たり前と教えられている。というか殺すと喜ばれる。
苛められてる奴は……別に誰に教えてもらったのかは解らないが「苛められてる奴が悪い」と相場が決まっている。苛めている人間は何故か人間的に人気者だ。アーリア人かよお前。そう考えると苛められてる奴は可哀想だが、もう社会的に「苛められている奴は人間的にしかるべき」とされているので、僕は助けないだろう。だって教育委員会のいじめでの自殺者は、今年も0人を記録するのだから。もし苛められてる奴が死んだとして、それを助けなかったとしても、「いじめ」で死んで居ないのだから僕は関係ないのだ。
そう思って心が少し痛くなった。
時たま見る朝の戦隊物のTVを見ると心が少し痛むのは、きっと僕が僕の「ヒーロー」に成れなかったからなのだろう。良い事は面倒だし、悪い事は見ないフリだし。いや、僕は身体的には弱いわけだし、むしろ守られるべきであって然るべきなので守ってください日本警察。……最低だ僕。
いや、でもきっと僕は底辺じゃない。
人が沢山いる交差点。行きかう人々を見ると僕は少し安心する。
良かった。僕はきっとこいつ等よりも世界から必要とされていると思える。
きっと僕は「ヒーロー」では無いが、きっと普通よりもちょっと特別だ。自分の悪い所もあると自分で認めてあげるし、人の事を簡単には信じない。上等なものだ。デスノートを読めば頭良くなった気がする。よし、子供心も忘れていない。
そして僕は自分を取り戻す。
そうすると不思議なもので、周りの人々はやはり必要のない人間に思える。
くだらない。
そう周りを見下せれば、僕は僕で居られる。
雑踏を抜け出し、僕は家に帰った。一人の時間は、自分を成長させると僕は信じている。
さて……僕はどう一人の時間を有意義に過ごすかを考えた。歴史上の偉い人が人は考える藁だと言っていたが、まったく至極な言葉だ。一通り考えを巡らせ、僕は答えを出す。
ゲームでもするかな。
ありがとうございました。