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第1話 期末考査と避難訓練と神隠し?!

柔らかな日差しが、窓際の机と私の頬をぽかぽかと温めていた。

カーテンが風に揺れるたび、教室に淡い影が落ちる。


トントン。トントン。


「おーい、江波。起きろって。あと10分でテスト終わるぞ。」


「・・・見直ししとけよー。っておい、江波! 名前すら書いてないじゃんか、起きてすぐ書きや!」


関西弁交じりの若い試験監督の先生が、半分あきれた声で私の机の、ちょっと空いた隙間をたたいてくる。


……そうだ。今は期末テストの真っ最中だった。ふわぁ、名前書かなきゃ。‥‥


昨夜――いや、正確には今朝4時までゲームしていた私は、当然のように睡魔に負けていた。

昨日の試験が終わって帰宅してから、昼ごはん、3時のおやつ、夕飯を適当に済ませ、

風呂も“ちゃぷん”で終了。 そこからはずっと新作MMORPGにログインしっぱなし。


だって、期末初日の15時からオープンβテストが始まったんだよ?

スタートダッシュ逃すわけないじゃん。

しかも、うちに下宿してた“お兄ちゃん”(血縁的には母の再従兄弟)に、

「テスト勉強するからパソコンの設定お願い〜」 と猫なで声で頼んだら、

メモリ増設までして返してくれた。


……まあ、ちょっと胸を押しつけながら肩もみしたのは、内緒。

そんな強化PCでログインした「空想物語」。

キャラメイクに1時間かけて、スターターエリア“夢想の花園ドリームガーデン”に降り立った瞬間、

私は完全に沼った。


――で、今に至る。

「う、うん……たぶん大丈夫です……」

眠気で呂律が回らないまま答えると、先生はため息をついた。

「あと3分な。しっかり見直せよ。それと名前も書き忘れてるぞっと。」


……7分寝てたらしい。やば。



キーンコーンカーンコーン。


チャイムと同時に答案が回収されていく。 私のも回収された……と思ったら。

「おい江波おきろ! 寝るなって!名前も番号も書いてないぞ!」

コツン、と出席簿で小突かれる。地味に痛い。

「え、書きましたよ……ほら」

「それペンネームだろ!フルネームで書け!番号も!」

ぶつぶつ言いながら「4番 江波梨華」と書き直すと、先生は答案を抱えて職員室へ走っていった。


前の席の内田智康――通称トノが振り返る。

「江波、大丈夫か?」

「……」

意識は半分夢の中。声だけは聞こえる。

「まあ、あの先生優しいから助かったけどさ」

「……ふみゅ〜……」

「いや寝るなって。担任来るぞ?」


ガラガラガラ。

「おーい、ナミ、寝てんのか」

担任の滝村恭一――通称キョーちゃんが登場した。

「キョーちゃん、なんでナミこんな寝てんの?」

隣のリュウが聞くと、キョーちゃんは頭をかきながら言った。

「昨日な、俺と同じネトゲやってたんだが……俺は2時に落ちたんだよ。で、12時の時点で“寝ろ”って言って、ナミだけPTから外したんだが……今朝ログ見たら5時までやってたっぽい」

「おいおい、それでも教師かよ!」

「いや注意はしたからな?悪いのはナミだ」

教室がどっと笑いに包まれる。

「で、先生、今日はもう帰れるんですよね?」

誰かが聞いた瞬間――

ウーッ!ウウーッ! 『訓練、訓練。家庭科室より――』

突然の避難訓練放送。教室が一瞬で静まる。

「……あ、あぁ……その……ナミの話をしてて、連絡するの忘れてた。」

「朝のSHRで言ってよ!」 生徒たちのブーイングが飛ぶ。


「とにかく、お前らは副担の市川先生についていって避難しろ。俺はナミを連れていく」

市川先生は、一見おっとり系の美人だが、存在感が薄くてよく忘れられるタイプ。

「はーい、じゃあ先に行きますね〜」

と言った瞬間、もう廊下にいなかった。逃げ足だけは速い。

「おい、お前ら早く出ろ!委員長は、集合場所でいつもどうり人数確認して阿南先生に報告!」

「イェッサー!」

委員長を筆頭に、クラスの生徒たちはノリ良く避難を開始した。

私はというと――眠気MAXで、耳だけが状況を拾っている。

「ほらナミ、起きろ。おんぶしてやるから背中つかまれ」

言われるまま、私はキョーちゃんの背中にしがみついた。

このシチュエーション、普通ならあり得ない。


……むにゅ。

そう、私はれっきとした女子である。しかも胸が大きい。

男性教員が女子生徒をおんぶして運ぶなどという行為は決して許されるわけではない。


「役得役得。ナミ、明日は早く寝ろよ?」

ではなぜ、私がキョーちゃんに素直におんぶされるかというと、単純に「いとこ」だからである。

家でもよくおんぶしてもらっているので、私自身特に気にしていなかったが、

友達の前では、普通に注意してくる。

・・・・・・えー、いいじゃん。歩きたくないし。楽だもん。減るもんじゃないし・・・・・・

眠気が覚めぬまま、そんなことを考えつつ、おんぶしてもらっている。

キョーちゃんは苦笑しながら階段を駆け下り、私を抱えてグラウンドへ向かった。


しかし―― グラウンドに、私とキョーちゃんの姿は現れなかった。

「え、あの二人駆け落ち?」 「いやいや、さすがにないだろ」

ざわつく生徒たち。 だが、どれだけ探しても私たちは見つからなかった。


警察も動いたが、結論は――「行方不明。神隠しの可能性あり」だった。


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