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祝、根倉きゅん加入

 管理局の屋上で、私は夜空を見上げていた。


 星が、綺麗だ。都市の光は増えたけれど、三十年前と変わずに。

 


(いやー、この三十年色々ありましたねー、ポン吉さん)


《だな。一番やばかったのは、内閣府に乗り込んだ時じゃねぇか?》


(ああ、あれね)


 私は、苦笑する。


 あの時のことを思い出すと、今でも冷や汗が出る。


(一歩間違えば……ってか、普通にテロリストだよな)


《完全にテロリストムーブかましてたからな、お前》


完成された箱(パーフェクトエリア)に弱った魔物閉じ込めて、そのまま建物内に入ったことを思い出す。

 

(要求飲まなきゃ、この魔物ここで自由にするぞ、とか。我ながらヤバすぎだと思う)


 まず、魔物とは何かから説明しろよと、今なら思うけど、あの頃はまだ余裕なかったからなぁあ。

 

《でも、成功したじゃねえか》


(まあね。あの場にいた人は頷くしか選択肢無かったでしょ)


 私は、笑う。


 あの時、政府の偉い人たちの顔が真っ青になったのを覚えている。


 でも、結果的に管理局は政府直轄組織になった。


 だから、よかったんだ。そう、よかったんだよ。そういうことにしておこう。


 多分。


(それに、管理局の絶対的マドンナにもなってしまったし)


《なってしまった、じゃなくて、狙ってなっただろ》


(狙ってなんかないよ?)


 私は、また笑う。


(まあ、この世界の主役たる私にかかれば、意図せずとも一組織のマドンナにもなってしまうんだよ)


《相変わらずだな、お前》


(謙虚でしょ?)


《謙虚の意味、辞書で調べたらどうです?》


 私は、くすくすと笑う。


 ポン吉との掛け合いは、いつも楽しい。


《それはそうと、昴さん。とうとう来ましたね》


(ん?)


《懐かしの彼が》


(ああ!)


 私は、ぽんと手を叩く。


(わっかわかしい、根倉きゅんですねぇ)


《根倉きゅんって……》


(だってさ可愛いじゃん)


《可愛いか? あれ》


 私は、窓の外を見る。


 建物の中では、根倉さんがまだ仕事をしているはずだ。


(恋人も家族も全て失って、やる気を失い、怠惰に落ちた半魔のくせして)


《くせして?》


(見事に私に惚れちゃって。ほんっと面白い)


《お前、性格悪いな》


(いや、本当に面白いんだもん。恋人を失って間もないのにさ。叶わないと初めから知ってる恋に落ちるとか哀れすぎてもうね。可哀想面白いよ)


 私は、笑う。


《一挙手一投足に赤面するのは、流石にマジかこいつって思ったけどな》


(でも、心のアフターケアも兼ねてたから、それもしょうがなしっしょ)


《アフターケア?》


(だってあの人、全部失ったんだよ? 心、ボロボロだったじゃん)


《まあ、そうだけど》


(だから、優しくしてあげたの)


《優しく……ねぇ》


(優しくしたよ!)


《あれは、誘惑されたと勘違いしてもおかしくねぇと思うがな。まあ、結果オーライだけどな》


 私は、頷く。


(私には劣るけど、天才の部類じゃん? 根倉さんって)


《そうだな。根倉局長は凄かったからな》


(だから早く再起したら、早く強くなれる。ソロで原罪魔群(オリジンシン)の一角潰してもらわなきゃいけないんだからね)


《お前、本当に容赦ないな》


(だって出来るって知ってるもん。未来の彼を知ってるからさ)


 私は、真剣な顔をする。


(根倉さんには、強くなってもらわないと。私達の知ってる彼よりももっと。じゃないと計画が狂う)


《計画ねぇ》


(それにしても)


 私は、また笑う。


(傷ついた青年の前に、年齢不詳の色っぽい美少女が甲斐甲斐しく指導してくれるんだぜ?)


《……》


(惚れないやつ、いないって)


《自分で言うあたり、昴らしいよ》


(でしょ?)


《褒めてねえよ》


(えー)


 私は、ふくれる。


 でも、すぐに笑顔に戻る。


(まあ、いいや)


《で、これからどうすんだ?》


(これから?)


《管理局の運営とか》


(ああ)


 私は、頷く。


(管理局の理念は、私たちのいた頃と少し違ったものに変化させることに成功してるし)


《そうだな》


(このままの路線でいいと思う)


原罪魔群(オリジンシン)への対策も進めてきてるしな》


(そうそう)


 私は、満足そうに頷く。


(あとは、仲間を集めなおすだけ)


《集めなおすというか、出会い直すというか》


(うん。烈志さんとか、いろはさんとか、灯さんとか)


《まだ生まれてねえやつもいるけどな》


(それは、これから)


 私は、笑う。


(焦らず、ゆっくりやっていこう)


《お前が焦らずって言うの、珍しいな》


(だって、焦っても乙葉には会えないし)


《そりゃそうだ》


(そうそう。乙葉に会う時にまた好きになってもらえる様に……)


 私は、声が沈んでいくのに気がつく。


 その時、ドアが開く音がした。


 振り向くと、男性職員が立っていた。


「あ、鏡さん。こんなところにいたんですね」


「ああ、ちょっと息抜きに」


 私は、にっこりと笑う。


 男性職員の顔が、真っ赤になる。


「あ、あの……お疲れ様です」


「お疲れ様」


 私は、また笑う。


 男性職員が、慌てて去っていく。


《お前それわざとか?》


(何がさ)


《笑っただけで惚れされるゲーム》


(いやいや、私は普通に笑っただけだよ?)


《その普通が、やばいんだよ》


(えー)


 私は、また笑う。ケラケラと乾いた笑みを浮かべる。


 ポン吉が、呆れたように息を吐く。


《あと、希さんと一さんのことだけど》


(ああ、あの二人ね)


《引退するって言ってたけど、どうすんだ?》


(二人には、代表は渡してもらうけど、まだまだ働いてもらうつもりだよ)


《働かせんのかよ》


(だって、必要だもん)


《お前、恨まれるぞ?》


(大丈夫、大丈夫)


 私は、手を振る。


(あの二人なら、押し切ればなんだかんだやってくれるから)


《押し切るって……》


(七十までは行けそうだよね、あの二人なら)


《無茶言うな》


(無茶じゃないよ。健康だもん、二人とも)


《それはそうだけど》


(それに、希さんは未来が見えるんだから、自分の寿命もわかってるはず)


《それもそうだけど》


(だから、大丈夫)


 私は、自信満々に言う。


《お前、本当に容赦ないな》


(必要なことだから)


 私は、真剣な顔をする。


(二人には、もう少し頑張ってもらわないと)


《はいはい》


 ポン吉が、諦めたように言う。


 私は、また夜空を見上げる。


 星が、綺麗だ。


(乙葉……)


 心の中で、呟く。ポン吉にも聞こえない様に。

 会いたくてたまらないよ。


 苦しくて苦しくてしょうがない。


 不安で押し潰されそうだ。


 また繰り返したら?


 もうやり直せないというのに。

 


《どうした? 会いたくなったのか?》


(そう、ちょっとね。私にあって一目惚れさせちゃったら可哀想だなぁって)


《そうかい》


(会う頃には80近いババアなのに、一目惚れさせたら悪いでしょ?)


《好かれる前提なのかよ》


(そうだよ。じゃないと――生きていけない)


 私は、笑う。ケラケラと。


《……そうか》


(うん)


 私は、また夜空を見上げる。


(ポン吉まーたなんか気遣ってるでしょ?)


《そりゃそうだろ。相棒がショボーンとしてるのに、流石に茶化せねぇって》


(そこは、ふざけてくれないとさぁ、マジになっちゃうじゃん?)


 誰もいない晴れた屋上で、私の足元にだけ一粒雨が落ちる。

 

《泣くなよ。オレとお前2人でやれば不可能なんかひっくり返せるだろ?》


 私は、笑った。


(そうだね)

 

 涙が、少し溢れた。


《オレ達は、時間も騙し切って過去へ来たんだぜ? 出来ないことなんかあると思うか?》


(無い)


《だろ? 全て救ってハッピーエンドにする事なんて、オレ達だったら出来て当然だろ?》


(うん)


《天下無双のポン吉様がついてるんだぜ?》


(うん。世界最強天才美少女の昴とその相棒だもんね)


 私は、拳を握りしめる。


(出来るよね)


《ああ》


(多分)


《多分かーい。そこは言い切れよ》


 私は、また笑った。今度は少しだけ晴れやかな気分で笑えた気がする。


 

昴ちゃんマジババァ

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