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もしかしなくても最強?

 車を降りると、目の前に巨大な建物がそびえ立っていた。


 表向きは普通のオフィスビルだが、やたらと警備が厳重で、入り口には金属探知機みたいなゲートがある。夜なのに人の出入りも多い。


「すごい建物ですね」


感心したように言う。実際、映画で見るような本格的な施設だ。


 (マジですげぇ。秘密基地じゃん)


 《確かにカッコいいな。俄然戦隊感出てきたな》


 (さっきから、謎の戦隊推し何なん? 時代はライダーっしょ。ってか変身だしライダー感増し増しだろぉ?)


 《はぁ、これだから素人は。戦隊だって変身するだろ。しかも半魔って複数いるって話だし、戦隊で決まり》


 「昴くん、すごいでしょう?」


 乙葉が俺の隣で嬉しそうに笑う。


 「私も最初はびっくりしました。地下もすごく広いんですよ」


 (乙葉ちゃんきゃわわ)


 《んー、キツイっすわー》

 

 「そうなんですか」


 クールに答える。さりげなく髪の毛をサラリと靡かせて妖艶さも演出してみる。


 いろはさんが先に立って歩く。


 「では、まず受付で手続きを済ませましょう」


 巨大なエントランス。大理石の床に高い天井。受付には制服を着た女性が数人座っている。


 (んおー、なんかちゃんとした感じだなぁ。秘密組織感はないな)


 《政府直下組織で、フィクションみたいな寂れた秘密組織感あったら怖いだろ。仕事任せたくないだろ》


 (確カニ)


 「艶見です。スカウト人材の手続きをお願いします」


 「お疲れさまです。鏡昴さんですね、確認いたします」


 受付の女性がタブレットで何かを操作する。


 (受付のおねーさんも綺麗だね)


 《節操ねぇなこいつ》


 「身分証明書をお預かりします。後日、新しいIDカードと共にお返しします」


 俺は学生証を渡す。


 「それでは昴くん」


 いろはさんが振り返る。


 「ここで私たちとは一旦お別れです。局長がお待ちですので」


 「わかりました」


 (乙葉ちゃん……バイバイ。さよならのハグとかしていいかな?)


 《キモさがストップ高更新しております》


 「私は報告書を作成しないといけないので」


 いろはさんが微笑む。


 「乙葉ちゃんは後で寮の案内をお願いします」


 「はーい! 昴くん、後でお部屋に案内しますからね」


 乙葉が手を振る。


 二人が去っていく。俺はポン吉と、受付の前に立っていた。


 (部屋の案内……チャンスかもな!)


 《何のチャンスだよ、何の》


 (いや、こう、仲が深まるイベント的なのがさぁ)


 《深まるほどの友好関係が、形成されていると考えていること自体に、驚きを隠せないんだが》


 (おい)

 

 

 「鏡さんですね。初めまして」


 ポン吉とくだらない会話をしていると、声をかけられる。振り向くと、だらしない格好をした男性が立っていた。ぼさぼさの黒髪、眠そうな目、シワだらけのシャツ。まるで三日間寝てないみたいな顔をしている。


 「私、八罪管理局局長の根倉眠です。よろしく」


 (根暗民だってよ。やべぇな)


 《ぜってぇ字ちげぇだろ。ってか局長って、偉い人だろ。失礼だぞ》


 「鏡昴と申します。よろしくお願いします」


 丁寧にお辞儀する。第一印象は大事だ。


 「はい、よろしくお願いします。堅くならないでいいからね。さあさあ、面談室に行きましょうか」


 根倉局長が歩き出す。後ろからついていくが、歩き方がすごいだらだらしている。何と言うか、いつそのまま崩れ落ちてもおかしくなさそうな感じ。


 エレベーターに乗って、十階まで上がる。廊下を歩いて、奥の部屋に入る。


 「ささ、座って座って」


 面談室は意外と普通だった。テーブルと椅子、ホワイトボード。会議室みたいな感じ。


 根倉局長がタブレットを取り出して、何かを確認している。


 「えーっと、鏡昴さん。今日は大変でしたね」


 あくびをしながら話す。


 (普通にクソ失礼だよな。これからお世話になる人じゃなきゃぶん殴ってるわ)


 《お世話にならなくても、この程度で殴るなよ》


 「艶見さんから概要は聞いてますが、改めて確認させてもらいたいと思います。ですがまずは……お母様の件、お悔やみ申し上げます」


 (まぁ、すぎちゃったことはしょうがないしなぁ)


 《母ちゃんに対して、えらいドライだな。母ちゃんが泣いてるよ》

 

 「……ありがとうございます」


 本当に悔やんでいます、でもこれから前を向いていきます。そんな難しい演技を完璧にこなす。


「魔物とは何か、半魔とは何かの説明。昴さんが、半魔であるという事。ここまでは艶見の方から説明があったかと思いますので、此処では省かせてもらいますね」


 「はい」


 (よく聞いてなかったけどな。まぁ何とかなるっしょ)


 《めっちゃ重要なとこ聞いてなかった気がするなぁ》

 

 「で、艶見の報告によると……」


 根倉局長がちらりと俺を見る。少し緊張してるけど、落ち着いた雰囲気を演出する。


 「隠してるんだろうけど、ごめん。君って女の子だよね?」


 《おっとぉ、ここで即バレです。昴選手、心境をどうぞ》


 (正直驚きで、頭の中真っ白です)


 「……気づかれましたか」


 混乱している割には、冷静な声色を出せた。長年培ったスキルは裏切らない。


 (完璧な擬態だと思ってたんだけどなぁ。いろはさん色欲って言うし、透視能力でもあるのかな)


 《エロ漫画じゃポピュラーな能力だしなぁ。いろはさんは竿役に適任だった!?》


 (竿役女性……アリだな)


 「ああ、大丈夫だよ俺も全然わからなかったから」


 根倉局長が手をひらひら振る。


 「艶見の枢要罪色欲だからさ、そういうのわかっちゃうのよ、ごめんね? 異性を魅了したりする能力だからさ。ま、それだけじゃないんだけどね」


 (魅了とか、もうエロゲー主人公じゃん?)


 《ヌキゲーみたいな世界に……》


 (ダメだそれ以上はいけない)

 

 「そうなんですか」


 (いっそいろはさんに魅了してもらって、そのまま付き合ってしまえば……)


 《乙葉ちゃん乙葉ちゃん言ってたやつはどこいった》


 (乙葉ちゃんも魅了してもろて)


 《ダメだこいつ。早く何とかしないと》

 

 「いろはと俺しか知らないから安心してね。にしてもこんなにイケメンなのに女の子なのか。オジサンびっくりだよ。あ、これセクハラにならない? 今ってさ厳しいじゃん? そういうの」


根倉局長が慌てたように手を振る。


 (はいセクハラでーす。死んでくださーい)


 《男に厳しい。それが鏡昴》

 

「大丈夫です」


 苦笑いする。仕方ないから許しますよ、とでも解釈して貰えば良い。


「っとまぁその辺は諸々置いといて、ちょっと適性見るにあたって模擬戦でもやる?」


 (はい無茶振りー。こう言う上司ってやりがちよねぇ)


 《ほんとやーねー》

  

「模擬戦ですか」


「誇とかでいいかな、歳も近いし同性だし……って同性じゃないんだった。まぁいいか」


 (いきなりさ、知らんキャラの名前出されても困るわ)


 《自己紹介も同時にしてくれないと、反応に困るよな》

 

根倉局長が立ち上がる。


「じゃあ、地下の訓練場に行きましょう」


エレベーターで地下に降りる。地下三階。


 (地下に訓練所ってロマンだよな)


 《戦隊モノには訓練所無いけどな》

 

「あー何で男装してるかとかって聞いても大丈夫な感じ? あ、話しても大丈夫ここ用のある半魔しか来ないから、今日は昴くん貸切だし」


根倉局長が気遣うように言う。


「ああ、それは……」


少し考えてから、正直に答える。


「性自認は女なんですが女の子が好きで、男になればノーマルの人にもモテると思って」


(まあ、嘘ついても仕方ないしな)


《素直だな、珍しく》


「なるほどね……まあ、人それぞれだからね」


根倉局長が納得したように頷く。


 (人のプライベートな話を聞いといてその反応? ほんと男ってクソ)


 《主語がでかい。炎上しちゃう》


 ドアが開くと、巨大な空間が広がっていた。


 「すごいですね」


 感心したように言う。体育館の何倍もある広さ。天井も高い。床はマットが敷いてある。


 (うおおお、本格的すぎる)


 《映画みたいだな》


 「誇ー、来てるー?」


 根倉局長が声をかける。


 「はい、こちらです」


 声の主は、訓練場の奥から現れた。


 俺より少し背が高い、端正な顔立ちの男性。黒髪の短髪で、姿勢がピンと伸びている。制服みたいな服を着て、まるでエリート軍人みたいな雰囲気。


 (うわ、めっちゃ強そう。ってかちょっとイケメン? 死んでくれや)


 《ほんと男嫌いだな》


 (俺以外のイケメン全員死んでくれ)


 「高城誇です。よろしくお願いします」


 深々とお辞儀する。動作の一つ一つに品がある。


 「鏡昴です。こちらこそ、よろしく」


 丁寧にお辞儀を返す。負けてられない。イケメン度は圧勝だが。


 (まぁ遠目イケメンだけど、よったらそこまででも無いな。笑うわ)


 《相変わらず失礼なやつだなぁ》


 (でもそこが可愛いんでしょ?)


 《まぁな》


 (えへへ……ってなんだよこのやりとり恥ずいな!)

 

 「誇、新人の適性検査をお願い」


 「承知いたしました」


 高城誇が俺の方を向く。


 「鏡さん、失礼ですが戦闘経験は?」


 (無いでーす。でもあんたはぶちのめす)


 《ぶちのめされる未来が見えるぜ》

 

 「ありません」


 「そうですか。では、基本的な指導も兼ねて」


 「誇、手加減いらないからねー」


 根倉局長が言う。

 

 (ほんとコイツ何なん?)


 《仮にも上司だぞ》


 「わかりました」


  俺は余裕を見せるように答える。


 (マジこの2人ぶちのめすわ)


 《強い言葉を使うな。弱く見えるぞ》


 「鏡さん、殺さないようにだけやりますね」


 高城誇が真顔で言う。


 (マジ俺のこと下に見てるなコイツ)


 《実際格下も格下だけどな》


 「あ、変身するには欲望解放デザイアリリースって言って抑えを解放すればできると思うからね」


 根倉局長が説明する。


 (でざいありりーす? ダサくね?)


 《ダサいダサく無いでやってないと思うぞ》 

 

 「はい! やってみますね!」


  明るく答える。


 (まぁ、俺は完璧なんだし変身とかいらねぇや。)


 《自意識の肥大化が止まりません》


 高城誇が訓練場の中央に立つ。


 「こちらへ」


 俺も中央に向かう。余裕を装って歩く。


 (ぶっちゃけこんな、はいスタート。で戦闘開始することないから)


 《そんなこと分かった上でやってんだよ》

  

 「では、始めさせていただきます」


 高城誇が構えを取る。


 「欲望解放デザイアリリース


 その瞬間、高城誇の体が変わった。


 身長が一回り大きくなって、筋肉が膨らむ。肌が鱗みたいに硬くなって、目が縦に細くなる。額に小さな角が生える。


 完全に竜人だ。


 (うおおおお、マジドラゴンじゃん! 変身キーワードはダサいけど)


 《やべぇ、カッコいい! 確かにキーワードはダサいな》



 「すごいですね」


 余裕そうに、感心したように言う。


 「では、攻撃させていただきます」


 一歩、踏み出した。


 (うぇぇぇぇ、早すぎぃ!)


 《あんなにでかい口たたいてだのに。ダッサ》


 その瞬間、俺の前に透明な壁が現れた。バリアだ。


 高城誇の拳がバリアにぶつかって、ガン、と音を立てる。


 涼しい顔で受け止める。


 (焦ったー。バリア出てよかったー。どういう原理で出てるのか全くわかんねぇこれ)


 《そんなわけわかんねぇ物に命かける気が知れねぇ》


 高城誇が連続で攻撃してくる。でも、全部バリアで防げる。


 俺は動かず、余裕の表情で立っていた。


 (うわー申し訳ないわー。あんなに殺さないようにとかイキってたのに、傷一つつけられないとか)


 《最初焦ってた奴が何いってんだか。バリアの出し方熟知してから言ってください》


 その時、高城誇の姿が掻き消える。すぐさま後ろから衝撃音。


 (……は? 心臓止まるかと思ったわ。後ろにバリア移動してくれてたみたい)


 《俺が誇認識できてたからじゃね? 俺かお前どちらかが、脅威と認識したらバリア発動&移動とか? 知らんけど》


 ゆっくりと振り返ると、高城誇の表情が険しくなっている。


(あ、プライド傷ついちゃった? 本気移動後の攻撃も見切られちゃったし? 振り向きもせずに止められちゃったし?)


《素人に手も足も出ないとか、確かにキツいな》


 虚空に槍を生み出してみる。やったらなんかできた。


 (なんか槍出せた件)


 《これぶつけたら気持ち良さそうだな》


 爽やかに微笑む。


 「次は此方から、行きますね」


 槍を相手に向かって投げつける。特に考えずにやったら出来た。しかも誘導機能付きだ。

 必死に逃げてるのが面白くて槍を2つ、3つと追加していく。


 (最初あんなに舐めた顔してたのに、見ろよあの焦った顔。爆ウケ)


 《ちょっと可哀想になるな》


 マニュアルで操作しようと試してみたが上手くいかず、誇に当たりそうな槍を逸らしてしまう失態。2人とも気付かないといいけど。


「あー、2人ともそこまで」


 根倉局長の言葉で槍を止める。止まれと思ったら止まった。


 (もうさ、俺最強ってことで良いんじゃね? 返信すらしないで圧倒しちゃったし)


 《誇が、めっちゃ弱いって可能性大》


 誇がうらめしそうな顔をしながら、此方に向かって歩いてくる。


 (うらめしそうな顔のドラゴンとかヤッベぇ)


 《創作の世界でもなそうだな。コレは爆笑不可避》


  ニッコニコの笑顔で、迎えてあげる


 「ありがとうございました。お互い怪我一つなくて良かったですね」


 《めっちゃ煽ってるぞそれ》


 (わざとよわざと。ボコボコにするつもりが、傷一つつけられなくて、逆に徹底的に追い詰められるとか。ダサすぎて俺なら憤死物だね)


 高城誇の目が冷たくなる。


 「高城先輩に指導していただき、能力の使い方ある程度理解できました。ありがとうございました」


 (燃料ついかァ)


 《ドラゴン怒らすなよ。ドラゴンだから怖いぞ》


「此方も勉強になった。ありがとう」

 

 誇が、低い声で言う。明らかに敵意を向けられている。必死に抑えてる感じが伝わってくる。


 「いやーすごいね。まさか即戦力になるとは思ってなかったよ。誇これでもうちの2番手なんだよ? それを欲望解放(デザイアリリース)無しに圧倒するなんてねぇ。」

 

 根倉局長が拍手している。


 (あれで2番手とか、この組織の底が知れるな)


 《お前のその外面なかったら、リンチされてるぞ》 

 

 「ちなみに。うちの最高火力は、鏡くん……昴くんでいい? 時間無制限の状況なら、理論上は乙葉ちゃんなんだよ」


 (可愛くて、強いってマジ? 俺の嫁凄すぎ)


 《勝手に嫁認定してるけど、全部合わせても5分も会話してないぞ》

  

 「そうだったんですか!? 通りで何となく安心できる感じしたんですね」


 此方は本当の笑顔で答える。


 「それじゃ昴くんは、虚飾の半魔って事で。今日からよろしくね。」

 

 高城誇が元の姿に戻る。でも表情は相変わらず険しい。


 「明日から本格的な訓練が始まります。今日のような軽い気持ちでいると怪我するので気をつけてください。」


 低い声で言う。


 (はい、負け惜しみ? 捨て台詞とかダサすぎない?)


 《言ってやるな。プライドを保つために必要な事なんだよ》


 「はい、楽しみにしてますね」


 俺は微笑み、圧倒的な余裕の表情をみせる。格の違いを見せつける。


 「お疲れさま。じゃあ、今日はこれで終わり」


 あくびをしながら言う。


 「乙葉ちゃんが受付のとこで待ってるから、案内してもらって」


 (乙葉ちゃんが待ってる! 急がねば)


 《また始まったよ》


 「それでは、失礼します」


 高城誇に軽くお辞儀して、俺は訓練場を出る。

 気分はルンルン。スキップしたいくらいだ。


次動きます

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