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正直戦闘はだるい

「お前の欲望、俺が全部剥がしてやるよ」


 俺はクールに決め台詞を吐いて、生成した槍を魔物に向けて飛ばす。


 (あー、決まった! めちゃくちゃかっこよく決まってしまった!)


 《罪を数えた方がかっこいいんじゃね?》


 槍は魔物の胸部に直撃する。しかし、金貨や宝石でできた装甲に阻まれて、大したダメージを与えられない。


 (それじゃパクリだろ! 俺のはオマージュ)


 《はいはい。それよか全く効いてないがいいのか?》


 魔物——強欲のゴーレムが俺に向かって突進してくる。巨大な拳を振り下ろしてきた。

 俺は素早く横に避ける。


 (やっば、当たる当たる当たる)


 《おーおー、当たったかと思ったな》


 (ほぼ当たってたわこれ! ヤベェマジやべぇ)


 《ほぼ当たってるって、当たってんのか当たってないのかわけわかんねぇな》


 そのまま、ゴーレムの拳が床に激突し、大理石の床が砕け散る。


 (うわ、威力やべぇ。当たったら死んでた)


 《当たってないって事じゃん!?》


 俺は距離を取りながら、再び槍を生成する。今度は複数本。


 「もう一度だ!」


 5本の槍を同時にゴーレムに向けて飛ばす。


 (これで仕留められるだろ)


 《一本が5本になったところで……》


 しかし、槍はゴーレムの体表の金貨や宝石を弾き飛ばすだけで、本体には届かない。


 (なんで効かないんだよ!)


 《でしょうね》


 ゴーレムが再び俺に向かってくる。今度は両腕を振り回しながら。

 俺は後方に跳んで避ける。華麗に、まるでダンスでもしているかのように。


 (俺がでかいなら、頭押さえて漫画でよくあるアレ出来たのに!)


 《ゴーレムでやろうと思うやつ多分お前だけだぜ》


 (そんなことないって。多分乙葉ちゃんならできる)


 《食った分だけでかくなるもんなぁ》


 もとの身体能力が貧弱だからか、あまり実感ないが半魔になったおかげか、身体能力も向上しているみたいだ。


 ゴーレムの攻撃を避けながら、俺は戦況を分析する。


 (槍じゃダメなら、もっと威力の高い武器を作るか)


 《何があるか?》


 (大砲とか?)


 《室内で大砲は無しだろ》


 (じゃあ、もっと鋭い武器で)


 俺は今度は剣を生成する。両手持ちの大剣。


 「今度はこれだ!」


 ゴーレムに向かって突進し、大剣を振り下ろす。


 しかし、やはり金貨の装甲に阻まれる。


 (くそ、全然ダメージ通らない)


 《装甲を剥がすしかないんじゃね?》


 (そうか、一枚一枚剥がしていけばいいのか)


 俺は作戦を変更する。大剣で装甲を削り取る作戦に。


 ゴーレムの左腕を狙って、大剣を振るう。金貨が数枚飛び散る。


 (おお、削れた!)


 《地道にやるしかなさそうだな》


 しかし、ゴーレムも黙ってはいない。俺の攻撃に反応して、右腕を振り回してくる。


 俺は身をかがめて避ける。


 (ちょ、あっぶね見えてたなら言えよ)


 《わりぃ。お尻に一本長い毛があって気になっちゃって》


 (それ今じゃなくてよくねぇえええ?)


 攻撃と回避を繰り返しながら、俺は少しずつゴーレムの装甲を削っていく。


 金貨、紙幣、宝石。様々な貴重品が床に散らばっていく。


 (なんか宝探しみたいだな)


 《拾って帰るか?》


 (魔物の一部だった物とか気持ち悪いわ)


 戦闘を続けていると、ゴーレムの動きに変化が現れた。装甲が削れて軽くなったのか、動きが速くなっている。


 (え、速くなった?)


 《軽量化されたんじゃね?》


 (漫画によくあるこっちの方が強いんです状態じゃん)


 攻撃を避けながら装甲を削る最中、ゴーレムの拳が俺の頬をかすめる。


 (いーたいー! 当たった!)


 《かすっただけだろ》


 (痛い痛い、血出てる気がする)


 《真面目にいうぞ? ほんと大した事ないから》


 俺は頬を拭いながら、さらに攻撃を続ける。やっぱりピリピリする。


 今度は槍と剣を同時に使う。槍で牽制しながら、剣で装甲を削る。


 (槍と剣の異種双剣術、カッコ良すぎる)


 《槍飛ばしてるし、大剣両手で握ってるけどな》


 しかし、作業は思ったより時間がかかる。ゴーレムの装甲は分厚く、なかなか本体が見えてこない。


 (まだかよ……飽きてきた)


 《命かかってるので飽きてもやめるな》


 その時、ゴーレムが突然大きく腕を振り上げた。


 (でかい攻撃来る!)


 《避けろ!》


 想像以上の素早い動きに、俺は咄嗟にバリアを展開する。


 (ちよ、はや)


 《しんだ?》

  

 ゴーレムの両拳がバリアに激突し、強烈な衝撃が俺を襲う。


 (うわあああ!)


 《しんだ?》


 バリアにひびが入るが、なんとか持ちこたえる。


 (殺すな!)


 《いやもう、ダメかと思って》


 俺は汗を拭いながら、改めてゴーレムを見る。まだまだ装甲は残っている。


 (いつまでかかるんだよ、こ れ)


 《しりとりするか?》


 ポン吉としりとりをしているうちに、ゴーレムの胸部付近で何かが光った。


 (あれ? 何か光ってる)


 《なんだろうな》


 よく見ると、金貨の隙間から小さな光が漏れている。


 (もしかして、あれが弱点?)


 《可能性高いな》


 俺は胸部を狙って槍を飛ばす。しかし、金貨の装甲に阻まれて届かない。


 (やっぱり装甲が邪魔だな)


 《全部剥がすの頑張れ》


 俺は決意する。全ての装甲を剥がして、あの光る部分を露出させる。


 (お前もちょっとは手伝えし)


 《んえー、じゃ槍ちょっとやるよ》


 ポン吉と俺は一気に攻撃のペースを上げる。


 剣で左腕の装甲を削り、槍で右腕を攻撃し、時々バリアで攻撃を防ぐ。


 (削れ削れ削れ! この退屈を……ぶち壊す)


 《幻想じゃないんだな》


 金貨、宝石、紙幣が次々と飛び散っていく。銀行の床は貴重品だらけになった。


 (この散らばった金貨たちさ……

 残るかな?)


 《気持ち悪いんじゃなかったのかよ。意地汚いぞ》


 ゴーレムの胸部の装甲も少しずつ薄くなってきた。光がより強く見えるようになる。


 (あれが核だな、きっと)


 《狙い撃ちできそうか?》


 (もうちょっと装甲を削れば)


 俺は集中して胸部を攻撃し続ける。


 剣で金貨を弾き飛ばし、槍で宝石を砕く。


 そして、ついに——


 光る物体が完全に露出した。


 小さな金貨だった。他の金貨とは違って、異様に輝いている。


 (あれだ!)


 《やっと終わったな》


 俺は全力で槍を生成し、その光る金貨に向けて飛ばす。


 槍は正確に金貨を貫いた。


 次の瞬間、ゴーレム全体が光に包まれる。


 「うわああああ!」


 ゴーレムが叫び声をあげて崩れ始める。


 体を構成していた金貨や宝石が次々と砂になって落ちていく。


 (やった! 倒した! これで作業から解放される)


 《お疲れさん。中は単純作業の連続になってたからな》


 最後に、ゴーレムは完全に砂となって消え去った。


 床には大量の砂が残るだけ。


 俺は疲れ切って膝をつく。


 (疲れた……思ったより時間かかった)


 《手際……悪かったもんな》


 (でも、倒したぞ! 褒めて!)


 《偉いぞ!》


 ポン吉に頭を撫でられ、俺は満足感に浸りながら、誇の方を見る。


 誇は残りの4体の魔物と戦っていた——いや、戦っていたというより、一方的に蹂躙していた。


 誇の体が青白い光に包まれている。深化の状態だ。


 その状態の誇は、まさに竜そのものだった。


 爪で魔物を引き裂き、炎で焼き尽くし、あっという間に3体を倒してしまう。


 最後の1体も、誇の前では赤子同然だった。


 一瞬で勝負が決まる。


 (ふん、俺が欲望解放(デザイアリリース)すればチョロだぜ?)


 《じゃあやれよ。みんなのまでよ!》


 誇が深化を解いて、俺の方を見る。


 「やっと倒したのか。遅かったな」


 (は?)


 《あー、それは言ってはいけない》


 (自分が早かったからってそういうのよくないと思います!)


 《まあ、傲慢さゆえの発言よな。哀れ》


 俺は立ち上がって、誇を睨む。


 「すみません。頑張ったのですがやはり慣れてなくて」


 声に少しムキになった感じが出てしまう。


 (クソ、かっこ悪い)


 《攻めてここだけでも完璧な返し欲しかったな》


 誇が歩いてくる。


 「まぁ、初任務にしては上出来だ。ちゃんと倒せたからな」


 (上から目線むかつく。いや上なんだけどさぁ)


 《上だからこそ仕立てに出るべきだよな。昨今の日本》


 「それに、戦い方は悪くなかった。無駄な動きが多いが、基本はできている」


 誇が俺の戦闘を評価してくれる。


 (褒められてる? 貶されてる?)


 《褒めてると思っとこうぜ》


 (うがー、もうこの任務最悪の出来だわー)


 依里ちゃんが近づいてくる。


 「昴くん、お疲れさま。すごかったよ」


 依里ちゃんが微笑みかけてくれる。


 (依里ちゃんは優しい)


 《天使だな》


 「ありがとう、依里ちゃん」


 俺も笑顔で答える。


 「でも、怪我してない? 顔に傷が……」


 依里ちゃんが心配そうに俺の頬を見る。


 (あ、さっきかすった傷か、思い出したら痛くなってきた)


 《なんなんだろうな、傷認識すると痛くなるこの現象》


 「大丈夫、かすり傷だよ」


 俺は手で頬を拭う。少し血がついた。


 「それより、人質は大丈夫だった?」


 「うん、無事だよ。みんな眠ってもらったから、記憶にも残らない」


 依里ちゃんが安心したように答える。


 (今回については、だーれも見てなくてよかったわ)


 《だいぶダサい立ち回りだったからな》


 誇が通信機を取り出す。


 「局長、魔物5体を全て撃破しました。人質に被害はありません」


 『お疲れさま。撤収してください』


 根倉局長の声が聞こえる。


 「了解しました」


 誇が通信を切る。


 「よし、撤収だ」


 俺たちは銀行から出る。


 外では、警察官も報道陣も野次馬も、みんな気持ちよさそうに眠っている。


 (平和な光景だな)


 《これが平和……? 目腐ってんだろ》


 車に戻る途中、俺は振り返って銀行を見る。


 つい先ほどまで、あの中で魔物と戦っていたなんて信じられない。


 (初任務、終わったんだな)


 《どうだった?》


 (疲れたけど……意外と楽しかった)


 《そか、よかったな》


 車に乗り込んで、管理局に向かう。


 帰り道、俺は今日の戦闘を振り返っていた。


 確かに時間はかかったけど、ちゃんと魔物を倒せた。ダサい立ち回りは要改良だけど、倒せたからまあ……いいか。


 誇には「遅い」と言われたけど、初任務なんだから仕方ない。という事にしておこう。


 (次はもっとうまくやってやる)


 《向上心あるじゃん》


 (そして、乙葉ちゃんに褒めてもらうんだ)


 《褒めたオレの気持ち返せよ》


 でも、確かに誇との実力差は大きい。


 あの圧倒的な戦闘力。4体の魔物を一瞬で倒してしまう力。


 (深化か……欲望解放(デザイアリリース)さえ使えれば……)


 《みんなにバラしていいなら使っちゃえばいいじゃん?》


 (なんか、女じゃ乙葉ちゃんに恋してもらえない気がするから無理)


 《まぁ、しゃーないな》


 車は夜の街を走る。


 初任務は終わった。


 俺の戦いは、まだ始まったばかりだ。


 (次こそは、華麗に魔物を屠ってやる)


 《頑張れよー》


 俺は心の中で、そう誓った。


 (ちゃんと応援しないかね!)


 《いや、どうせ次もあわあわするんだろ?》


 (泡だって!? 母さんのことか!? 母さんのことかー! シュインシュインシュイン)


 《え……ちゃいますけど》

 

 結局、俺は最後まで誇の言葉を根に持ち続けていた。


 でも、それが俺の成長の原動力になるんだろう。


 きっと。たぶん。メイビー。おそらく……。

上手に戦闘描写かけるようになりたい。

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