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コンクリートに溶ける

闇の鈴

作者: 秋野まい
掲載日:2025/12/16


今年もあっという間に終わろうとしている。


仕事の忘年会を数度こなして、週末がきた。

木枯らしが吹く、イチョウがまだ散っている。

絨毯みたいな黄金の道の先はどこにも繋がっていない。

葉っぱを蹴ってお辞儀おして、鳥居をくぐる。


「…………鈴。」


ぼそりと呟いて、カランと賽銭箱の前に垂れ下がる縄を揺らすと、鈴が鈍い音が空気を震わせた。


神様仏様、私はここですよ。

無病息災と………結婚できますように。


パンパンと小さく控えめに手を叩く。


ふらりと立ち寄った誰もいない神社で、願望を祈る。都合の良い神頼み。

叶うなんて思っていない。


気持ちのよい青空はイチョウとのコントラストがあってとても写りが良い。

SNSに投稿しても誰もリアクションはくれないけど、とりあえず写真を撮ってあげておく。美しい物を誰かとわかちあいたい。この景色を綺麗だねと、誰かに話したかった。


1年が過ぎ去るのは早い。

親も会う度に歳を取り、終末の足音が聞こえてくる。人生は短い。


母が私のために貯めている結婚式の頭金の事を知っている。


愛情深い母の唯一といっていい希望を叶えることができそうになくて途方に暮れる。


「寒いな。」


境内にある木製のベンチに腰掛けると、もう何も考えたくなくなってしまった。

携帯を見る気もなくなってポケットに両手をいれて空を見上げる。

よく晴れ渡って乾燥した冬の日だ。


目をつぶって金曜日の忘年会を思い出す。


子供のいる同僚も、旦那さんと交代で忘年会に参加するとの事で久しぶりの飲み会に楽しそうな笑顔だった。

子供が2人いる同僚が、子供が1人いる同僚と次の子供について話している。

縁のない話。

にこにこにこにこ、羨ましいな。羨ましくて泣いてしまいそうだ。


気を使っているのか部長と話すのは仕事のことばかり。


プライベートは地雷原。


みんな仕事もプライベートも充実して楽しそう、幸せそう、私は気が狂いそう。


頭の中の誰かが囁いてる。


ここはお前の場所じゃない。


じゃあ私はどこに行けば良いのだろうか。


帰り道はイルミネーションがキラキラ煌めいて夢のよう。美しくて楽しい都会の賑わいで、目が眩む。


幹事なので、お会計をして解散して。みんな家族の元へ帰る。

私はどこに帰るんだろう。


「やっぱり寒いな。」


木枯らしが吹く。

晴れていても師走の空気は凍えそうだ。立ち上がると、また風が吹く。帰れ帰れと促している。

あの薄暗いワンルームに帰るんだ。


木枯らしに追い立てられるように家路を急ぐ。


カンカンと踏切がなり、小さい子供を連れた家族がゆっくり歩く。

休日の歩道はゆっくり歩くのだ。

ああ、なんて寒いんだろう。


芯まで凍えてしまう。


目を閉じると、クリスマスツリーの電飾がキラキラと煌めいて鈴の音が聞こえる。


シャンシャンシャンシャン


音楽が聞こえる。


底冷えしていて地を這うように、孤独に響く。


瞼の裏に煌めくイルミネーションの残像が閃いて、そして真っ暗になる。


暗闇の中に鈴の音が響くのを、しばらく、ただ聞いていた。

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