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アイリーの魔法具店  作者: ガミ、ガミ男
第1章【レイヴンウッド裏通り魔法具専門店編】
3/11

第二話【面接】

「では、適当ににかけて」


「失礼します!」


 ぺこりとお辞儀をして彼女は椅子に座る。

 彼女の正面に私。そして、なぜか横にケイシーも座ってる。


「じゃあ、自己紹介おねがい」


「はい! エマ・オルベックです」


「ここで働きたい理由は?」


「チラシに載っていたからです!」


 さも当たり前ですみたいにエマは言う。


「理由になってねぇじゃねぇか……」


 呆れた顔でツッコミを入れるケイシー。


 まあ理由なんてどうでもいいんだ。意欲があるかどうかが重要だから


「何か資格はあるかい?」


「ないです!」


「ないのかい!」


 またもやツッコミを入れるケイシー。なんか楽しくなってないか、こいつ。


「魔法は何級なんだい?」


「初級ですらないです! 去年、アウルム学園を退学になりました」


 ……うん。自信満々に言えることはいいことだ。それがたとえマイナスなことだとしても素直なのはいいことだ。たぶん。


「じゃあ、魔法に関われる仕事だからここで働きたいってことかな?」


「はい! 昔から魔法が好きだったんですけれど、退学になって。それでも魔法に関わりたくて!」

「親御さんはそのことは?」


「あ〜、実は内緒にしてまして〜」


 頭をかきながら、バツの悪そうな顔で言う。


「入学も反対されて、無理を言って入れてもらったので、申し訳ない気持ちがあって……。だから、日々バイトをしながら入学金を返済して、勉強も続けて、自分のツケは自分で払おうと思ってるんです」


「偉い! 偉いぞ〜」


 オヨヨヨと涙を拭くふりをするケイシー。

 確かに、親に言いづらい件ではある。その中で迷惑をかけずに自立している彼女は偉い。すごく偉い。そして、すごくかわいい。


「接客はできるかい?」


「はい! 酒場でアルバイトしてました! 」


「魔法は好きかい?」


「はい! 大好きです」


「学ぶ意欲はあるかい?」


「はい! 頑張って勉強してます!」


「わたしはかわいい?」


「はい! とてもかわいいです!」


「採用っ!」


「やったー!」


 エマは椅子から立ち上がり、ピョンピョンと喜びの舞を踊る。


「まじかよ! そんなんでいいのかよ!」


 学ぶ意欲はさえあればいいよ。あとかわいいし。


「かわいいのが8割占めてるだろ」


 呆れた顔でケイシーは腰に手をやる。否定はしない。かわいいは正義だから。


「いつから来れる?」


「いつからでも行けます」


「じゃあ今日からよろしくね」


「はい! ……え? 今日からですか?」


「だめならいいけど」


「だめじゃないです! 今から働かせて下さい」


「おーけーおーけ。とりあえず、少し質問があるんだけど」


 先ほどまで笑顔だったエマが真剣な表情に変わり、かしこまる。


「はい、なんでしょうか」


「なんで退学になったの? 言いたくなかったら言わなくてもいいけど」


 魔法が使えなくても、そう簡単に退学にはならないはずだ。あそこでは実戦的な魔法以外の分野も学べるし、普通に授業を受けていれば、たとえ才能がなくても卒業する頃には最低限、中級を名乗れる程度には育ててくれるはずの教育機関だ。


「実はですねー」


 恥ずかしそうに俯きながら、エマは言う。


「魔法がひとつも使えなくてですね……」


「はぁ? じゃあアンタどうやって入学したんだよ」


「魔力はあるんですが、魔法を使うとなるとできなくて……」 


 後半につれて声が小さくなっていくエマ。とりあえず実践あるのみだ。こういうタイプは最初の失敗を引きずって、魔法を行使できないことが多い。自分に自信がないやつが魔法を使えるわけがない。魔法はイメージの世界だ。


「よし! じゃあとりあえず魔法を使って見せてくれ」


「あのっ、初級魔法ですら使えないんですよ」


「そこまでやらなくていいよ。指先に小さな火を灯してみなさい」


「わかりました!」


 ぐぬぐぬ言って指先を力むエマ。


「力を入れても魔法はでないよ。イメージするんだ。体内に流れる魔力を指先に流して、そこから小さな火が灯ることをイメージするんだ」


「火が灯るイメージ……! これだ!」


 エマの指先に魔力が渦巻いていく。

 まずい! 魔力が暴走してる。このままじゃ火が灯るどころか、火が吹き荒れて大惨事になる。


「火が噴きだしそうですぅ〜!」


 エマの指先の周囲に大きな球体の水を作り出す。

 障壁魔法でもよかったが、発動の速さではこちらが勝る。


「火が溢れそうですぅ〜!」


 水の膜が、内側から突き破られそうになっている。火というより、もはや暴れ狂う炎だ。

 もっと厚みと強度を上げないとまずいな。しかし、なんて魔力だ。放出量なら私と同じ……いや、私以上か?

 そりゃ魔法なんて使えるはずがない。こんな荒々しくて、化け物じみた魔力を制御して魔法を行使できるわけがない。


 できるとしたら、そいつは魔人クラスだ。


「店長さーん! おさまりました〜」


 エマの放出した火がおさまったらしい。

 とんだじゃじゃ馬だ。

 あんなバカみたいに魔力を消費したくせにピンピンしてる。魔力量も桁違いにあるのだろう。

 かわいいアルバイトを拾ったと思ったら、最高級の光る原石だった。これは磨けばとんでもないことになるぞ。もしかしたら新しい魔人候補にもなりうる。


 いい拾い物をした。


「よし、オマエ。今日から私の弟子になりなさい」


「はい!? どういうことですか店長!」


 ギョッとエマは目を見開く。


「店長じゃない、師匠と呼びなさい。これからオマエは私の従業員であり、私の魔法の弟子である。わかったか?」


「じゃあ働きながら、魔法を教えてくれるということですか?」


「そうだ」


 エマはぷるぷると体を揺らし、勢いよく顔をあげる。そこには満面の笑顔が貼り付いていた。


「よろしくお願いします! お師匠さま!!」


「う、うん。よろしくね」


 眩しいほどの笑顔と元気な声に、少し気圧される。あまり魔術師にこんな元気な子はいないので、耐性がない。魔術師はどっちかというと、どんよりしたやつか、傲慢で口うるさいやつの方が多い。


「一石二鳥ということか?」 


 それまで部屋の端で避難していたケイシーが、戸惑いながら言葉を発した。

 私にとっても一石二鳥だ。ぞれじゃあ、最初のレッスンといこう。


「それじゃあ、まずは実践レッスンだ」

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