第8話
翌日ラピアの歓迎会じみたものが開かれた。
ラピアの表情にはまだ陰りがあったけど、一日経て少しはショックから立ち直ったらしい。ご馳走を前にしたラピアの表情には微かな笑みが見られた。
長男のオイデイン兄さんが横からラピアに声をかけた。
伯爵家とのコネを作ろうとしたんだろうけど、声をかけられたラピアの方は笑みをぎこちなくしている。
ラピアと目が合った。
小さな顔が微笑んだ。俺の方に足を出した彼女のとなりで、オイデイン兄さんが目付きを鋭くした。
にらみつけられたのは俺。
元々ラピアの目的は俺なんだ。そんな目を俺に向けられても困る。
嫉妬する長男をよそにラピアが口を開いた。
「先日は助けてくれてありがとうございます。申し遅れました、私はラピア・フランスキーです」
伯爵令嬢がドレスのすそをつまみ上げて一礼した。
俺も礼儀作法にのっとってあいさつを口にした。
そのまま談笑へと移行する。
ラピアがフリッツランド領に来た理由は俺にあった。十に満たない身で無詠唱魔法を開発した俺に興味を持ったんだとか。
無詠唱魔法を使ったことは領の外にも広まっているようだ。
歩み寄った父に、無詠唱魔法を披露するように言われた。
すでに日が落ちている。魔法でアピールするなら火属性が適している。
ただ【火球】を打ち上げるだけじゃ芸がない。
術式構築デバイスを起動した。
火球の術式をいじって、爆発するタイミングを【命中時】ではなく【発射から5秒後】に変更する。
手の平をかざして魔法を放った。紅蓮の球体が空高く上がったのち鮮やかに爆ぜる。
ラピアが顔を輝かせてはしゃいだ。
花火と言えば連続した爆発だ。
魔法を撃ち上げながらさらに術式をいじくって、時間差で連続発動する改造魔法を作り上げる。
火の大輪が夜空をかざって、ラピア嬢の歓迎パーティは成功を収めた。
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