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人間嫌いの転生貴族 ~散々恋破れたので美少女に言い寄られてもなびきません~  作者: 藍色黄色


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第54話


 エンシェントドラゴンの無力化が確認されて、俺たちは勝どきの声を上げた。


 勝利に喜び合って、次にメイジ班の仲間が俺のもとに集まった。


 惑星魔法についての質問攻めに遭っていると、クランシャルデさんとドランギルトさんが助けてくれた。


 離れた位置で待機している本隊と合流した。


 ドランギルトさんが、エンシェントドラゴンの討伐は成ったことを声高らかに宣言した。


 勝利宣言をしたわりにドランギルトさんの表情はパッとしない。


 彼とネメスさんはジマルベスの顔だ。彼がこの場にいないことで感傷にひたっているのだろう。


 俺はドランギルトさんにかける言葉が浮かばなくて、疲れた足でクラスメイトと合流した。


 同級生は全員無事だった。


 兵士の中には、踏み砕かれたりブレスで蒸発した人もいる。喜びの声を上げるのはためらわれたけど、それでも少し目がうるんだ。


 晴れて俺たちはジマルベスへの帰途についた。


 緊張が解けて脱力した体は鉛と化したかのように重い。教室内ではにぎやかなクラスメイトも今は言葉を話さない。


 帰ったらまずは湯を浴びたいけどその前に意識が飛びそうだ。どこかで馬車を使えないだろうか。


 眠らないためにあえて中身のない談笑を試みる。


 当初クラスメイトの反応は悪かったものの、次第に話に乗ってくれた。


 後方から足音が迫る。


 振り向くと黒い巨体があった。


「坊主、ここにいたのか。探したぞ」

「ドランギルトさん。俺に何か用ですか?」

「用事ってほどじゃないんだが、少し聞きたいことがあってな」

「惑星魔法についてなら後日論文をまとめるのでその時に」

「違う、そっちではない。俺が知りたいのはネメスの方だ。その、見たんだろう? 奴の最期を」

 

 最期と聞いて、光の荊が破られた時のことを思い出す。


 俺はロードメデブルクの死体を確認したわけじゃない。もしかするとどこかで生きている可能性もある。


 ドランギルトさんはそう考えていないようだ。


 生きているなら今回の防衛戦に駆けつけなかったのはおかしい。命を懸けて時間稼ぎをしたに違いない。そんなふうに考えている。


 どこかで療養しているだけかもしれないのにすごい信頼だ。


 隠す理由もない。俺は馬車で引き返す際に見たことを告げた。


「そうか。教えてくれてありがとな坊主」

「いえ。あの時は何もできませんでしたから、こんなことでも役に立てて何よりです」

「こんなこととか言うな。俺にとっては大事なことだ。十分役に立ってるさ」

「ドランギルトさんとロードメデブルクは仲がよかったですよね。初めからそうだったんですか?」


 言っちゃなんだけど、俺はロードメデブルクに関して少し懐疑的だ。


 リザードマンの集落跡地におもむいた時、ロードメデブルクは魔族を敵視しているような発言をしていた。


 そんな人がどうして魔族のドランギルトさんと戦友をやっていたのか純粋に興味がある。


 ドランギルトさんがかぶりを振った。


「いいや。オレたちは初めから仲がよかったわけじゃない」

「そうなんですか?」

「ああ。何せオレは奴のことをいけすかないヒョロガリだと思っていたからな。ネメスの奴も俺のことをうとんでたと思うぞ」

  

 思わず目を見張った。


 信じられない。あれだけ仲のいい二人が、もとは険悪な関係だったなんて。


「何か仲を深めるきっかけでもあったんですか?」

「特に語るようなできごとはなかったが、しいて言うならオレが奴を見直して声をかけたことか」

「見直すとは?」

「かつて行われた作戦で絶望的なやつがあってな。その場にいた仲間の大半があきらめムードだったんだ。そんな中ネメスだけが打開の策を考えて、見事作戦を成功に導いたのだ」

「すごいですね。もしかしてそれが智のネメスと呼べるようになったゆえんですか?」

「ゆえんと言うよりはきっかけだな。それからも何度か難しい作戦を成功させて、それが陛下に評価されて異名がついたって感じだな」

「なるほど」


 つまり武のシュバルも同じ経緯でつけられたわけだ。


 しかし声をかけただけで今みたいな関係に落ち着くなんて。当時から互いに気になっていたんじゃないのか。


 いいなぁ。ライバルから親友って、何だかとっても青春してて。


 くやしいから、いい年して青春した恥ずかしエピソードを聞き出してやる。


 ドランギルトさんを問い詰めようとした時、後方で爆発音が鳴り響いた。


 視界内を飾る仲間がバッと振り返る。


「何だ今の。兵器が暴発したのか?」

「爆弾なんて持ち込んでなかったはずだけれど」


 悲鳴が上がった。空気が緊迫して動揺が広がる。


「クランシャルデ! 生徒を連れて避難所に向かえ!」

「あなたはどうするの?」

「オレはしんがりを努める。まだ仲間が残っているからな!」

 

 ドランギルトさんが背中を向けて走り去る。


 俺も加勢したいところだけど体はヘトヘトだ。助力に行ったところで足手まといにしかならないだろう。


 クランシャルデさんやクラスメイトとジマルベスへの道のりを急ぐ。


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