第3話
引き続き魔法の勉強にいそしんだ。
天気のいい日は中庭に出て魔法の訓練をした。水の球を飛ばしたり、風の刃を飛ばして実践を繰り返した。
日を経るたびに魔法の威力と撃てる回数が増えた。
魔力回路の活性化が関係しているらしい。腕立てで筋肉がつくのと同じく、魔力回路も負荷をかけることで向上するようだ。
負荷をかけるのが大事。
平常時も負荷をかける魔法がより強くなれるのでは?
そう思ったけど、レイシア先生に該当する魔法は存在しないと告げられた。
その日から俺は魔導書を漁り始めた。
暇さえあれば書庫にこもって魔導書を開いた。ページに記された文字を視線でなぞって、魔法の構築に必要な術式について学んだ。
ここまで来るとプログラミングの領域だ。ただ魔導書を開くだけじゃ解決しない。
俺はより魔法の勉強に熱を入れた。
予習して初級の内容を終わらせて、レイシア先生に術式構築の教えを請うた。
レイシア先生は両親と話し合って、中級魔法の勉強を許可してくれた。
さすがに内容は難しくなった。
授業の時間だけで修得は難しくて、レイシア先生が屋敷を出た後は復習に時間を使った。
書庫で魔導書を開く時間はなくなったけど、術式構築のためと考えれば苦にならなかった。
魔法学の基礎を固めて、いよいよ学びたかった内容に目を通した。
術式の構築には構築魔法なるものを使用するらしい。
強力な魔法ほど術式は複雑だ。
複雑な術式は専用の魔導具を用いて構築される。
俺は誕生日プレゼントにその手の魔導具を欲したけど、男爵家の財布では購入できないほど高価な物品らしい。
魔導具の購入はあきらめて、俺にできることを考えた。
目的はあくまで魔術回路に日常的負荷をかける魔法の開発だ。そこまで複雑な術式はいらないはず。
初歩的な構築魔法を身に着けて、既存魔法の術式をいじっては中庭で改造魔法を放った。
いじった箇所の違いと、それにより起こった魔法の差異を比較して、術式が担う役割を検証した。
俺は常時まとうタイプの魔法に目をつけた。
当てはまったのは【風纏】。体に風をまとって身を守る魔法だ。
物が吹っ飛ぶから常時発動には向かない。
その一方で、術式から風を発する箇所を取り除けば魔力をまとう術式ができるのではないかと考えた。
失敗した。
魔法の成り立ちを考えるべきだった。
風纏は風が発生していたんじゃない。これは空気中の魔力を旋回させて、結果的に風を発生させる魔法だった。
でも仕組みが分かればこっちのものだ。
風が出ないように旋回スピードや魔力の量を調整する。歩行の邪魔になることを考えて、位置を頭上に限定した。
できた。
完璧ではないけど、魔力回路に負荷をかける魔法の完成だ。
名前は仮に【育成】とでもしておこう。消費魔力は少なめだけど、一日中使えばそれなりの消費量になる。
いずれ防御に転用したいけど、ひとまずはこれで我慢だ。