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人間嫌いの転生貴族 ~散々恋破れたので美少女に言い寄られてもなびきません~  作者: 藍色黄色


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第27話


 次の日からラピアは熱心に授業と向き合ってくれた。


 花火以外にもきれいな魔法がある。その事実は彼女のモチベーションを高めたようだ。


 いきなり水属性の派生たる氷属性に挑むのは難易度が高い。まずは基礎を固めることに重きを置いて、術式をいじる楽しさを伝えることを心がけた。


 授業に並行して自分を高めることも忘れない。昨晩得たアイデアを形にするべく術式を組み上げた。


 授業がない日には冒険者として依頼を受けて、フランスキー領の外に生息する魔物相手に魔法を試した。


 黒い氷は光を乱反射しないものの、森の中や広場では異様に目立つ。


 場所によって色を変えられるように、色を指定するコードの位置を一番上に指定した。


 氷属性以外でも似たような魔法を試した。風や土はもちろん、水と風の複合たる雷属性でも同じことをやってみた。


 魔法といえど雷は雷。意図して制御するのは難しい。かたまりを作る前に標的へ向かったり、魔物に当てたいのに樹木をうがったケースは何度もあった。


 雷は高い物に落ちやすい。とがった物体ならさらに可能性が増す。


 いっそ敵を土属性の魔法で突き上げてから放電させようかと思ったけど、それだと下からくし刺しにした時点で勝負がつく。そこから雷を落とすのはオーバーキルだ。


 現状は使い道がない。魔法業界で雷属性の魔法が流行らない理由をかいま見た。


 魔法開発の難航とは裏腹に、ラピアの腕はめきめきと上達している。


 取り組んでいる箇所が基礎だからというのもある。


 足踏みが必要な応用とは対照的に、基礎学習の大半はインプットで事足りる。取り組めば取り組むほど着実に伸びる。


 後方からどんどん迫られる感覚に駆られて難易度高めの依頼を受けた。


 フランスキー領を後にして馬車に揺られる。


 途中で下りて土の地面を踏みしめる。


 森に入った。自然の息吹に包まれながら足を進める。


 気配を感じて足を止める。


 囲まれている。そっと嘲笑する小宇宙(コズミックパワード)を構える。


 沈黙が長い。左胸の奥から伝わる鼓動だけが俺の聴覚を刺激する。


「今から出る。攻撃する気はない」


 目を見張る。


 それは地の底から響くような低い声だけど、確かに人の言葉だった。

 

 正面の茂みがガサッとなって人型が現れた。


 爬虫類特有のうろこ。トカゲじみた頭部。


 リザードマンか。


「人の言葉を話せるのか?」

「ああ。人間、聞きたいことがある。そのロッドをどこで手に入れた?」


 右手に握るロッドに横目を振る。


 嘲笑する小宇宙(コズミックパワード)はリッチから奪った戦利品だ。彼らからすれば仲間を殺されたに等しい。


 でも下手な嘘を言えば敵対の意思ありと判断されるのは目に見えている。


 せっかく言葉が通じるんだ。戦わない道をあきらめたくない。


 正直に言って駄目ならその時はその時だ。


「リッチが持っていた。これはそいつからの戦利品だ」


 茂みの中からおおーと感嘆の声が上がった。


 予想とは違う反応を前にしてきょとんとする。


「そのロッドを持ったリッチには覚えがある。我々はそのリッチに故郷を追い出されてここまで来たのだ」

「つまりリッチはあなたたちにとっても敵同然だったと?」

「その通りだ」


 言いよどみがない。


 そうか。リッチは元人間。魔なる存在に堕ちたからといって、魔物や魔族に友好的ってわけじゃないんだ。


「意図したものかは知らないが、奴を討ってくれて感謝する」


 茂みの中からぞろぞろとリザードマンが出てきた。


 緊張したのも一瞬。彼らも続々とお礼の言葉を口にする。


 もう戦う前の緊張感はみじんもない。


「リッチは討伐したけど、あなたたちはこれからどうするんですか?」

「と言うと?」

「故郷を取られていたんでしょう? リッチがいない今、あなたたちは故郷に戻ろうと思えば戻れるじゃないですか」

「そうだな。しかしここにも長いこと居ついている。我々にとっては第二の故郷と言って差し支えない」

「面倒ごとは起きないんですか? 立ち退きを要求されたり、討伐隊を派遣されたりとか」

「それはないな。そもそもこの場所を提供してくれたのは中立国家ジマルベスだ」

「中立国家?」


 聞き慣れない単語を口ずさむ。


 リザードマンが目を丸くした。


「知らんのか? 人間と魔族の抗争を禁じている国だ」

「そんなところがあるんですか⁉」

 

 思わず声が張り上がった。


 リザードマンが首を縦に振る。


「ある。許可証だって受け取っているからな」

「へえー」


 興味が泉のごとくわき上がる。


 人間と魔族に飾られた街並み。そんなものが存在するなら見てみたい。


 でも今は依頼中だ。のんびり旅行なんてしていられない。


「一応確認ですけど、そちらに俺と戦う意志はないって考えていいんですか?」

「もちろんだ。我々の方に君と戦う意志も理由もないからな」

「分かりました。ちなみに最近人間に迷惑をかけたリザードマンとかいましたか?」

「いや? そんな話は聞いていない。そもそもこの辺りに人間は居ついていないからな。迷惑のかけようがない」

「そうでしたか。情報提供ありがとうございました。俺はそろそろ行きますね」


 彼らに背中を向けて元来た道を戻る。


 俺が受けた依頼はリザードマンの討伐だ。彼らのことと見て間違いない。


 無防備に背中を向ければ襲ってくると思っていたけど、万能反応装甲エンシェントアーマーは反応しなかった。


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