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人間嫌いの転生貴族 ~散々恋破れたので美少女に言い寄られてもなびきません~  作者: 藍色黄色


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第20話


 馬車が王都を介してフランスキー領に入った。


 ニーゲライテ領と比べると人の活気にあふれている。石だたみの上を歩く人影の多さは領土の豊かさを表しているかのようだ。


 適当なところで馬車を降りて冒険者ギルドに足を運んだ。


 たくわえはあるけど無限じゃない。まずは職の確保だ。


 勲章や爵位があってもまだ子供。出自を問われない冒険者としての活動を再開した。


 俺の身に突き抜けた才が宿っている自覚はある。自動防御の術式で不意打ちをケアできるし、下手な仲間と行動をともにしても分け前が減るだけだ。


 宿に住み込んで一人での活動を進めた。


 生意気と思われて絡まれることもあった。


 冒険者は身分や出自を問わないから気性の荒い奴も多い。子供が一人で悠々と活動して嫉妬でもしたのだろう。


 荒くれのリーダー格を拳一発で黙らせてからは、俺に絡んでくるやからはいなくなった。


 環境に慣れて、俺は闇属性魔法の開発を再開した。


 フェアリーと遭遇した地でヒントは得た。知らないものを一から作ろうとするから失敗するんだ。


 闇属性魔法の特性は、光属性との相克そうこくと対象をえぐるような性質だ。


 現状はヒントが少ない。できることから始めて取っ掛かりをつかもうと試みた。


 光属性は火や水の属性よりも純粋な魔力に近い性質を持つ。


 岩の壁をえぐっているから魔力に限った話じゃないけど、まずは魔力を喰う術式の開発に手を付けた。


 喰うといってもアプローチは一つじゃない。


 俺からは壁が喰われたように見えただけだ。原理の候補は対消滅や重力の発生など色々ある。


 どれが正解か分からない。地道に一つずつ潰していくしかない。

 

 依頼を達成してお金を稼ぎ、暇な時間を闇属性魔法の研究開発に捧げた。


 気がつくと冒険者のランクが上がっていた。ゴブリンメイジ以外にも魔法を使う討伐対象が増えてきた。


 せっかくだから試作の闇属性魔法を持ち出した。

 

 名付けて魔喰い(ドレーン)。魔力に触れると対消滅する性質に目をつけて、対象から魔力を奪い取る術式を組み上げた。


 効果はてきめんだった。


 調子に乗って魔法を連発する魔物が、突如魔法を使えなくなって慌てふためくさまは滑稽こっけいだった。

 

 上級魔法には属性を複合させる魔法もあると聞く。


 対になる属性がない複合魔法に万能反応装甲エンシェントアーマーは効果がない。


 闇属性魔法は教会に忌むべきものとされている。


 人前じゃ使いにくいけど命には代えられない。念のため魔喰い(ドレーン)を改良して組み込んでおこう。


 魔物との交戦を重ねて、拾ったロッドのことも分かってきた。


 リッチが愛用していた武器だけあって、闇属性の魔法を使う際に出力を増幅させる効果があった。先端を飾る宝玉が触媒のような役割を果たしているのだろう。


 フランスキー領の図書館で調べて名称も知った。


 これは嘲笑する小宇宙(コズミックパワード)と呼ばれる杖のようだ。


 魔法を極めんとした魔術師が特注でこしらえた最高級品。宝玉の特性からして闇属性の魔法を極めようとしたんだろうけど、それは教会によって禁忌とされる。使用者がどんな末路をたどったかは推して知るべしだ。


 幸いなのは、嘲笑する小宇宙(コズミックパワード)自体が禁忌指定を受けていないことか。


 家族やその他に見られている代物だ。下手をすると異端審問で人生が終わりかねなかった。つくづく無知とは罪深いものだと自覚させられる。

 

 思えば、俺は興味のある事柄以外を知ろうとはしなかった。これからは図書館で知識をたくわえることも視野に入れよう。


 この日も術式開発を中断して外に出た。一日一時間の読書をするべく図書館への道のりを進む。


 何度か依頼をこなす中で魔物に包囲されかけたことがあった。


 万能反応装甲があるから攻撃は受けないけど魔力は有限だ。仲間がいない現状、不測の事態で魔力が尽きたら詰む。


 対集団の魔法で何かないかと考えて、ふとニーゲライテ領で上げた花火のことを思い出す。


 魔法の威力を高めれば降りかかる火の粉でも魔物を仕留められる。方向性をつければ味方がいても使える。


 花火の術式をいじればこしらえるのは簡単だ。静かな空間で術式の構築にいそしむ。


 ゴーン! ゴーン! 


 外で大きな鐘の音が響き渡った。


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― 新着の感想 ―
内容も発想もとても面白いので超応援しています。頑張ってください。 凡百のネット小説ならこの話だけで10話くらい使いそうなところ、一人称で超スピーディに進むので、非常にタイパは良いのですが正直もっと読…
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