第14話
試作型【万能反応装甲】。
魔力のセンサーが攻撃の属性を読み取り、その属性に有利な属性をぶつけて威力を相殺する。【爆発反応装甲】の原理を応用した魔法だ。
俺には闇属性の魔法は使えないけど、光属性以外の魔法に耐性を獲得できる。
早速データを取るべく冒険者ギルドに足を運んだ。
建物内に足を踏み入れるなり冒険者がチェアから腰を上げた。
俺が勲章と爵位を得たことはすでに広まっていたようだ。無数な賛辞の次には、俺を私を家臣にぜひ! と申し出が殺到した。
次は変装して来ようと強く決意して、一人で依頼を受注した。
依頼の内容はゴブリンメイジの討伐。荒く削った木の棒を持つゴブリンの魔法を受けてみた。
属性の相殺は確認した。
火球には水色、水球には緑色の光が反応した。
その一方で課題も見つかった。火球の爆発で跳ね返った砂利が俺の衣服を傷つけた。
盲点だった。
魔法自体を無力化できても、飛来する魔法の副産物には属性がない。試作型の万能反応装甲では飛んでくる砂利を防げない。
属性を帯びていない攻撃には【爆発反応装甲】を発動させる必要がある。
これはまた術式をいじくり直さないといけないなぁ。
そう思った時だった。視界内に黒いもやが見えてひざを曲げる。
黒い球体が頭上を通り過ぎて、その先にある壁に当たって霧散する。
「何だあれ」
球体が当たった壁がへこんでいる。
火球や風刃でも壁を破壊するのは簡単だ。
でも瓦礫が発生する。へこみの箇所にあった物質は完全に消えたりしない。
黒い球体は違った。地面の上には壁だった物の破片すらない。
まるで当たった箇所を喰ったみたいだ。
振り返った先にはフードをかぶったゴブリンの姿。さっきほうむったゴブリンメイジの別個体だ。
「もしかして、今のが闇属性の魔法なのか?」
再び黒いもやが宙に灯った。
今度は紙一重で回避してみた。予想通り【万能反応装甲】が発動して金色の光が発生する。
風の刃でゴブリンメイジを処した。安全な場所まで下がってから術式構築デバイスを起動する。
先程観察した限り、闇属性の魔法は他属性と似て非なる性質を持っていた。
でも光属性と相克する以上は取っかかりがある。
要は考え方の問題なんだ。
仮に四つの基本属性を1から4までの数字で置き換える。
この時全属性をまとめ上げた光属性は10、もしくは1234となる。
闇属性は光属性に相克する。であれば闇属性のコードは-10、または4321となるはずだ。
俺の持ち札をフル活用すれば闇属性の魔法を作れるかもしれない。
サブプランとして、岩を消滅させる性質を既存魔法で再現することも考えよう。
ああ、脳汁がどばどば出る。早く屋敷に帰って研究したい。
ともあれまずは目先の課題だ。
爆発反応装甲に万能反応装甲を組み込むだけなら簡単だ。
でもそれだと二つの魔法を同時使用することになる。魔力消費が大きい。
無属性攻撃には爆発反応装甲、属性攻撃には万能反応装甲が発動するように調整したい。
問題はどうやってセンサーに無属性攻撃と認知させるかだけど……。
「面白そうなことをしてるね」
バッと顔を上げる。
ここは森の中。俺以外に人がいるのは不自然だ。
警戒して振り返った先には小さな人型があった。
ファンシーな羽を背から伸ばした金髪の子人。前世の創作物で見たことがある。
「人間さん。あなたの力を貸してくれない?」
フェアリーらしき存在に、そんなことを問われた。




