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帯刀


「もう少し、こう魔力を流し込めば……手の力の込め方に工夫して」


 私は、なかなか抜刀術の威力があげられず苦戦していました。

 切り倒された木材ばかりが、増えていきます。あとで、復興中の村に届けなければいけません。


「がんばるのー」


 ルーンさんが、ぼんやり応援してくれています。


「はい! 修行は一日にしてならずです。毎日の積み上げが大切なのです」


「剣だけじゃなくて、政治もそのくらい熱心だったら、小僧も楽なんだがの」


「あーあーあー、聞こえません」


 人間得手不得手があります。

 なんでもかんでも出来るわけではありません。


 好きこそものの上手なれです。

 苦手なものを、頑張ってもたいして上手くはなりません。


「私は剣術を極めます!」


 拳を握りしめて、私は宣言しました。


「本当に小僧がいてよかったのう」


 ルーンさんが、小僧と呼ぶのは、私のフィアンセのことです。

 

 フィルクには頭が上がりません。

 でも、よく考えると、私の方が偉いので、フィルクに頭を下げたことはありませんでした。


 まあ、私は魔王なのでいいでしょう。


「では、次に行きたいと思います。剣の扱いですが、なにも戦闘中だけが大切ではありません」


「どういうことじゃ?」


「はい。剣を持ち運ぶ方法も大切ということです」


 私は、腰の剣を指さしました。


「私は、基本剣は左腰に差していますが、背中に背負うこともあります。背中に背負う利点は、長距離の移動時、疲れないからです」


 私は聖剣の鞘についている紐をのばすと、背中に背負ってみせました。


「剣もそこそこ重さがあるので、こうすること楽に持ち運ぶことができます」


「長期戦のときは、体力にも気を使うんじゃな」


 私は、こくりと頷きました。


「ただし、背中に差していた場合、そのまま引っ張り出そうとすると先端が引っかかり、そのまま抜くことができません」


 私は試しに背負った状態で剣を引き抜こうとしました。

 途中までは抜けますが、先端が引っかかり、最後までは抜けません。


「ほんとじゃな」


「解消方法としては、三パターンです」


「方法があるんじゃな」


「はい。まず一つ目は、背負い方を紐式にして、抜刀時はぐるりと前に持ってきながら、前で抜く方法です」

 

 私は、背中の剣を掴むと、納刀したままいつもの腰の位置にもってきて、抜刀してみせました。


「このように行うことで、通常の抜刀と同様に行うことができます」


「納刀は、どうするんじゃ?」


「納刀も同様ですね。前でいつものように納刀してから、ぐるりと回して背負います」


 私は、納刀すると、するりと回して背負いなおしてみせました。


「すごいのじゃ」


「紐式は、普通のドレスを着ている時も、剣を携帯できるので、意外と重宝します。問題としては、通常戦闘時、私は鎧を着て戦うので向いていないということです」


「鎧の場合は、どうするんじゃ?」


「鎧の場合はパターン2ですね。今度は、鞘側に工夫します」


「鞘側?」


「専用の鞘を持ってきました。見ていてください」


 私は、サンライズを別の鞘に差し替えると背負ってみせました。


「いきますよ」


 剣を握りしめると軽く捻ってみせる。ガチンッ!と音を立ててロックが外れ、鞘の上側が開き、そのまま振り回すように剣を抜くことができた。


「なるほど、鞘の上側が開閉式になってるんじゃな」


「はい。問題は、ロックをどの程度の力で解除できるようにするかということです」


「あんまり簡単に外れて、移動中落っことすのも問題じゃしなぁ」


「はい。逆に固すぎて、外れないのも、戦闘に入る時に困ります。つまり、使い手よりも職人の腕がいりますね」


「作るの大変そうじゃのう」


「私の鞘は、ドワーフのボーレンが作製したものですが、それでも、いざという時作動しないことがあるかもしれないことは、懸念しておく必要があります」


 私は、鞘をいつものに変えました。


「最後は、サンライズのような変形魔法剣専用の技です」


「どうするんじゃ? 普通の鞘ならひっかかるんじゃろう?」


「見ていてください!」


魔力解放『創世(グニルズ・ブルースト)


 私は、世界を作り替えるほどの魔力を放ちました。


聖剣変形「運命の剣(ウィーザルソード)


 聖剣のエンブレムが、光輝き聖剣が変形する瞬間に私は、剣を抜き放ちました。


「おお! すごいのじゃ、剣が鞘をすり抜けたのじゃ」


 私は、光輝く剣を掲げながらいいました。


「このように、変形するタイミングで引き抜くと、うまく抜刀することができます」


「ニルナは、この方法が一番良さそうじゃな」 


「問題は納刀でして、戦闘後魔力が残ってないと納刀できません」


「確かにそうじゃな」


「あと、私の場合は、刀身を消すような形態はないので、結局一旦鞘を背中から外して納刀してから背負いなおすことになります」


「紐式は、普通の服にはいいが鎧に向かない。上部開閉鞘式は、腰用の鞘としては、使いにくい。魔力抜刀式は、納刀がやりにくい。どれも一長一短じゃな」


「まあ、私の場合、腰に差すのが基本なので、通常服の場合は、紐式。移動中は魔力抜刀式。背中納刀は、諦めて、背中から鞘を外してからちまちまやります。完全に戦闘終わってからですね」


「ニルナ、思ったよりいろいろ考えてるんじゃな」


「体験派なので、最初の頃の魔力抜刀式はウィーザルソードにして強引に刃を壊しながら抜いていましたね……」


「ニルナの剣は、修復するからよいがの。普通の剣なら職人涙目じゃぞ」


「あくまで抜刀術の時も言いましたが、一番大切なのは、敵が来るのを予測し、しっかり構えた状態で対応する事ですからね」


「いい心構えなのじゃ」


「では、今日は、この辺までにして、あと千回素振りしたら帰りましょう!」


「まだやるんかのう? 政治もこのくらい熱心に勉強すると、いいんじゃが……」


「あーあーあー、聞こえません」


 私は、ルーンさんの小言を無視して、日が暮れるまで、剣を振り続けるのでした。

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