修行開始です!
〇聖剣と悪の血統者シリーズ
ニルナ本編
『英霊様は、勇者の体を乗っ取りました』
『聖剣魔王~嫌いな勇者は殲滅です!~』
この物語は、タイトル通りです。
単体でも楽しいと思いますが、
本編読んだ後だとより楽しめると思いますので、
シリーズリンクからジャンプお願いします。
ここは、サンヴァーラ。
元気に邪竜が空を飛び回り、ゾンビがたまに這いずり回ってる世界一平和な国です。
私は、ニルナ・サンヴァーラ。
太陽に燦爛と輝く黄金の髪と、黄昏時の紫の瞳が自慢です。
自分で言うのもなんですが、スタイル抜群の超絶美女。
そして、現サンヴァーラの女魔王です。
今日はぽかぽかいい天気。
国を守るため、今日も修行に勤しみます。
ドレス型の真紅の鎧に身を包んで、頭にはティアラが輝いています。
そして手には、変形する聖剣『サンライズ』。
準備は万端です
「さあ、今日も頑張って修行を行いましょう!」
私は、聖剣を太陽にむかって、掲げながら言いました。
「ニルナはいつも元気じゃの」
そんな私の隣には、眠そうな女の子がいました。大きく口をあけて欠伸をしています。
「それに、なんなのじゃ? 急に呼び出して」
茶色の髪に、尖った耳をしています。服装は真っ黒なマントを来た可愛らしい女の子です。だたし、見た目に反してしゃべり方はとっても老獪。時代に一人置いてけぼりにされたような人です。
名をルーン。
種族はヴァンパイアロードエルフ。
ルーンさんは、ふぁあああと、再び大きく欠伸をすると尖った犬歯がキラリと光りました。
「いいお天気なので、今日は修行をしようと思いまして、付き添いお願いします」
ルーンさんは、気怠げな表情をしながらも頷いてくれました。
「まあ、いいがの。お城の公務は大丈夫なのか?」
「はい。全部、フィルクにお願いしてきました!」
頭を使うことは、全部愛しの旦那様に丸投げなのです。
私が修行に行ってくるというと、爽やかな笑顔で送り出してくれました。
なんの問題もありません。
ルーンさんは呆れながら言いました。
「小僧も、災難じゃな。それで妾はなんで呼ばれたんじゃ。普段はひとりで修行してるんじゃろ?」
「はい! ルーンさんは、ヴァンパイアで、斬っても死なないので、試し斬りに付き合ってもらおうと思いまして」
ヴァンパイアは亡者の一種なので、殺してもすぐ蘇ることが出来ます。
試し斬りにもってこいなのです。
だというのに、ルーンさんは顔を青くしながら言いました。
「な、なんて奴なのじゃ。発想が酷すぎる……。さすが魔王」
「いやぁ。そんなに褒めても、なにも出ませんよ?」
数多くの勇者を葬ってきた私は、魔王としての力量が十分ということでしょう。
と思っていたら、ルーンさんはなぜか渋い顔をしています。
「褒めてないんじゃが……。というか、試し斬りはいやなのじゃ」
「心配しないでください。グングニルとレーヴァティンは使用しないので!」
『サンライズ』はいろいろな形態に変形することができますが、中でも剣最強形態であるレーヴァティンと槍最強形態であるグングニルは魂破壊効果があり、ヴァンパイアであろうと殺害することが出来ます。
「そういう問題じゃなくてじゃな……」
なぜかルーンさんは、ますます渋い顔をしました。
「斬られるのが嫌ということですか?」
「そうじゃ」
「不死身なのに?」
「不死身でもじゃ……」
死なないなら、いくら斬ってもいいかと思いました。ルーンさんはどうやらそういうわけではないようです。
「魔力、いっぱいあげますよ?」
「うーん。悩むのじゃ」
ヴァンパイアの主食は、魔力です。
吸血行為は、あくまで魔力を吸うための動作にすぎません。
ルーンさんは悩み始めました。
私の魔力は美味しいらしいのです。
「ぐぬぬ」
結論が出るまで時間がかかりそうです。
「まずは、素振りをするので、見ててください!」
ルーンさんが悩んでいる間、私は基礎動作の訓練から始めることにしました。
私は、まず足を肩幅程度に開くと、愛剣『サンライズ』を軽く構えました。
「いきます!」
私はかけ声をあげました。
上段から一閃!
全身の力を剣に込めると、一気に振り下ろしました。
音もなく空を切り裂くと、剣の軌跡にそって風が吹き抜けます。
飛んでいる虫にちょうど剣があたると、風圧だけで粉々に吹き飛びました。
「な、な、なんちゅう威力なんじゃ……。そんなもんくらったら木っ端みじんじゃろう」
「最近は、敵が鎧を着てても、斬れるようになってきました」
コツは、鎧の継ぎ目や脆そうなところを狙うことです。
「それだけ斬れれば、十分じゃろう。なんでまだ妾を斬ろうとするんじゃ」
「いやぁ。たまには人を斬らないと肉斬る感触忘れそうで」
「ためらいなく妾を斬ろうとするでない。ニルナは、妾のことをなんだと思ってるんじゃ」
「ソウの愛人ですかね」
「認識も酷すぎるじゃろう」
ソウというのは、私の祖先。
私のひい×?おじい様です。
国がアンデッドパニックになった時に、英霊として蘇り、私に剣術を教えてくれました。
私にとっての師匠であり、目標でもあります。
「ソウは、基礎が大切だと言っていました。やはりまずは素振りをしなければ、いけません!」
「何回やるんじゃ?」
「とりあえず千回ですかね」
「とりあえずで千回やるじゃな……」
千回ぐらいは振らないとウォーミングアップにもならないというのに、ルーンさんはなぜか呆れています。
私はそんなルーンさんを尻目に、まずは素振りから修行を開始したのでした。