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8.逆襲の父上


 入浴を終えたリオンがリビングに戻ってくると、憮然とした様子の二人に出迎えられた。


「まさか、お姉様が出てくるとは思いませんでした……」


「マリアお姉様、ズルいですっ!」


 アルフィラとサフィナが腰に手を当てて、怒ったように待ち構えていた。


「あらあら、ごめんなさいね」


 怒る妹二人に、先んじてリオンと身体を重ねたマリアステラが「おほほ」と上品に笑う。


「でも、いいじゃありませんの。私は長女ですし、一刻も早く子を孕まなければいけない理由がありますから。跡継ぎというのは大変なんですよ?」


「それは理解する。しかし……抜け駆けは感心しませんね」


「もうっ! マリア姉様のそういうところ、大っ嫌い!」


「あらあら、うふふ……」


 マリアステラは笑顔で誤魔化すと、下腹部をゆっくりと撫でながらリビングから出ていった。


「二人とも……リオン様は想像している以上に逞しい方でしたから、くれぐれも気を引き締めなさい。むしろ、私が程よく抜いて差し上げたことを感謝すると思いますわよ」


「…………」


「うう……」


 リビングを出ていくマリアステラの背中を、二人の妹が睨むようにして見送った。

 マリアステラの夫であるエドガーが犬のようについていく。


「えっと……二人とも……」


「皆まで言わずとも良い。リオン」


 何故か後ろめたい気持ちになるリオンであったが、その言葉をアルフィラが途中で断つ。


「二人が浴室で遊んでいる間に、私達もしっかりと話し合った。そこで……私が先に君の相手をすることになったよ」


「不承不承ですけど……マリアお姉様に倣って、長幼の功に従うことにしました」


「あくまでも順番だ。実際には一緒に抱いてもらうのだから良いだろう?」


 控えていた公爵家の使用人が無言で部屋から出ていき、カチャリと鍵がかけられる音がした。

 部屋にはリオンと二人の女性だけが残される。


「あ、あの……二人とも。ここはリビングであって寝室ではないのだけど……」


「浴室よりはマシでしょう」


「そうそう。今さらだよ、リオン様」


 二人がスルスルと服を脱いでいく。

 アルフィラは細身であるが胸はしっかりと育っており、無駄なく引き締まって筋肉がついた身体つきをしている。

 サフィナはとにかく小さい。子供のような体型だったが、胸だけはしっかりと肉がついて育っていた。


「観念すると良い。今夜は寝かさない」


「朝までコースだよっ、リオン様っ!」


「お、おおう……」


 迫りくる姉妹を前にして、リオンもようやく腹を括る。

 先ほど長女を抱いたばかりだというのに、一時間と経つ前に次女と三女を抱くことになろうとは。

 どんな夜だと、天にツッコミを入れたくなる。


「グガアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


「ッ……!?」


「ムッ……!」


「ひゃあっ!」


 しかし、三人の身体が重なるよりも早く、部屋の壁が壊れて獣の絶叫が響く。

 何事かと視線をやると、そこにはスノーウィンド公爵家の当主であるベルハルト・スノーウィンドが、何故か上半身裸で赤いオーラをまとっていた。


「グガアアアアアアアアアアアアアアアッ! 娘を汚す不埒物はどこだああああああああああああっ!」


「お、お父様……?」


「そこかあああああっ! 男は全員んんんんんんん、皆殺しいいいいいいいいいいっ!」


 赤い謎オーラを身にまとったベルハルトは明らかに常軌を逸した目をしており、壁の残骸のガレキを素手で握りつぶす。

 そんな父親の姿を前にして……アルフィラが顔を引きつらせて口を開く。


「ど、どうやら娘を奪われるかもしれないという極度の怒りが原因で、魔力暴走を引き起こしてしまったようだな」


「魔力暴走って……」


「こんなことになるのは、お姉様の結婚式以来だ。あの時は私と来賓で来ていた騎士団長やギルドマスターが協力して、ようやく止めたのだったな」


「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 ムキムキの太い腕を振り回し、ベルハルトが周囲を無差別に破壊していく。


「すまない、リオン。こんなことになって申し訳ないのだが……頼めるだろうか」


「…………正直、すごく納得がいかないよ」


 言いながらも、リオンは魔法剣を取り出した。

 公爵家に咲く三本の華……そのうち、残る二本を手折るために、まずは一戦交えなければいけないようである。


「お嬢さんを……俺にください!」


 リオンは剣を振りかぶり、暴走中のベルハルトへと斬りかかった。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

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