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1.躍進の始まり

 王太子であるレオバード・セントラルの身体を乗っ取り、究極の呪いを生み出すべく暗躍していた『呪いの女王』リズベッド・ランクォード。

 かつての戦友である彼女の野望を打ち砕いた元・勇者……リオン・ローランは今回の一件によって、多くの味方を得ることになった。


 まずはアルフィラ・スノーウィンド。

 リズベッドによって呪いをかけられた妹……サフィナ・スノーウィンドを救い出したことにより、公爵令嬢であるアルフィラの信頼を得た。

 アルフィラはリオンが真の勇者であると信じており、妹を助けた御礼に子供を産むという口約束までしている。


 次にシュエット・セントラル。

 レオバードが斃れたことによって、女性でありながら新たな王太子となった王女。

 シュエットもまたリオンが真の勇者であると知っており、自分達の祖先が邪神殺しの功績を奪い取った罪人であることも自覚していた。

 罪滅ぼしのため、そして、復活するであろう邪神に備えるためにリオンに抱かれている。

 リオンはもちろん、本人にも自覚はないが……すでに子を孕んでおり、次代の勇者の母となることが決まっていた。


 そして、三人目。

 サフィナ・スノーウィンドと同じようにリズベッドに呪いをかけられており、リオンの手によって解放されている女性がいた。

 彼女の名前はフェリエラ。

 かつては貴族であったが、政治争いが原因で娼婦に身を落としている美女だった。



     〇     〇     〇



「お帰りなさいませ、ご主人様」


「…………」


 セントラル王国北方にある主要都市スノーレスト。

 その一角にある屋敷の玄関ホールにて、大勢のメイドが並んでいた。

 年齢は十代後半から三十代。いずれも絢爛豪華な美女ばかり。


 その中央にいるのは赤髪の美女……フェリエラ。

 少し前まで、この都市にある娼館で娼婦をしていた女性である。


「何というか……照れ臭いなあ、こういうのって」


「慣れてくださいな。これから、当たり前になるんですから」


 恥ずかしそうに頭を掻いている屋敷の主人……リオン・ローランに、フェリエラが微笑みながら小首を傾げる。


 この屋敷はリオンが所有する邸宅。

 スノーウィンド公爵家から与えられた報酬の一部だった。

 いつまでもホテル暮らしではいられないということで、新しい拠点として、この場所を与えられたのである。


 広々とした屋敷はスノーウィンド公爵家のものには遠く及ばないものの、貴族の邸宅としては十分な広さがある。

 もちろん、屋敷には使用人が不可欠。

 そこで雇われたのがフェリエラを始めとしたメイド達。

 かつて娼館で娼婦として働いており、身請けされて雇われた女性らである。


 その中でも、フェリエラはかつて王宮で王族に仕えていた。

 経験を生かして、屋敷におけるメイドの責任者に任命されている。


「貴方はこの屋敷の主人。私達のご主人様なのです。どうぞ胸を張ってくださいな」


「ムウ……そうだよね、慣れないといけないよな……」


 リオンは邪神殺しの勇者ではあったが、生まれも育ちも平民である。

 勇者として活動していた時期にも、宿に泊まった日数よりも野宿した日数の方が多いくらい。

 こんな豪華な屋敷で、大勢のメイドから世話をされると思うと、嬉しさよりも気恥ずかしさの方が勝ってしまう。


「ところで……リオン様、今夜の『伽』の話ですけど、どちらの女性にいたしますか?」


「う……」


「ここにいる全員、リオン様の子供を産むことを同意しています。誰でも好きなように御指名くださいませ」


「……それも慣れないな。いや、慣れなくちゃいけないんだけど」


 もちろん、この屋敷で働いているメイド全員が次代の勇者の母親候補。

 いずれ、リオンの子供を産むことになるであろう女性達だった。

 子供を産んだ時点で身請けになった金額を返済。支度金まで与えられて自由を手に入れることができるということもあって、彼女達はいずれも夜伽に積極的。

 中には、どうにかしてリオンの妻の座を勝ち取ろうとしている野心家もいた。


(俺は長く地上にはいられないから、結婚はできないんだけどね……)


「それじゃあ……フェリエラで」


 ある程度、好きなように女性を選べる立場にはなったが……いまだに慣れないリオンは親しんだ女性を指名する。

 いずれは他のメイドもくまなく抱いてあげなければいけないが、もう少しだけ、時間を与えてもらいたかった。


「はい、畏まりました」


 指名されたフェリエラが穏やかな笑みを浮かべる。

 かつては呪印に覆われていた顔は玉のような白い肌、赤い瞳とスラリとした鼻筋の美貌となっていた。

 主人の寵愛を一身に受けて、フェリエラは自信満々に大きな胸をグッと張るのであった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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