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10/15

10 夢の中なら

 ディーディラインは、引き寄せられるようにティーゼリラに覆いかぶさり真上から愛しい姫の寝顔を見つめる。

 長い睫毛が影を落とし、金色の瞳が見えないことを残念に思う一方、起きている彼女にこんなことはできないという、臆病な自分に苦笑いを浮かべる。

 じっと見つめていると、睫毛が震える。

 もしかして起きてしまうのかと思ったが、ティーゼリラは未だに気持ちよさそうに寝たままだった。

 残念に思いながらも、その美しい寝顔を瞳に焼き付ける。

 だいぶ日も陰り、室内が暗くなってくると、ティーゼリラが寒そうに身を震わせた。

 ディーディラインは、即座に上着を脱いで、ティーゼリラの小さな体に掛けていた。

 床に座り、じっとティーゼリラを見つめていると、ディーディラインの掛けた上着を抱きしめて、にこりと微笑んだのだ。

 それを見た瞬間、ディーディラインは心臓がどうにかなってしまうのではないのかというほど騒めいた。

 私の姫は、世界一可愛いなどとその微笑みにうっとりとしていると、ティーゼリラが小さくくしゃみをする。

 可愛らしいくしゃみを聞いたディーディラインは、ティーゼリラの体を気遣いさらに着ているものを脱ぐ。

 シャツを脱いでしまえば、半裸になってしまうがそんなことはどうでもよかった。

 ティーゼリラ第一のディーディラインは、ためらうことなく半裸になり、ティーゼリラが寒くないように服を掛けていく。

 暖かさを得たことで再び眠りにつくのかと思ったティーゼリラだったが、睫毛を震わせて目を覚ましていた。

 

 目が覚めたティーゼリラは、心地いい暖かさと森の中にいるような優しい香りにまだ夢から覚めていないのかと思った。

 そして、視線を上げた先にいる半裸のディーディラインを見て、やはりこれはまだ夢の中なのだと勘違いをする。

 

 ティーゼリラは、夢の中らな許されるだろうと、目の前の適度に筋肉のついた体に手を伸ばした。

 昔のディーディラインは、どこもかしこもぽよぽよのモチモチで抱き着くと気持ちよかったが、帰ってきたディーディラインは、その反対でどこもかしこも固そうに思えた。

 確かめるように、六つに割れている腹筋に触る。

 思ったようにカチカチで、それでいてすべすべの肌が触り心地が良くて何度も触れてしまっていた。

 

「固い……。でも、すべすべ……」


 そう言ったティーゼリラは、人の腹はこうも固くなるのかと不思議に思い、自分の腹に手を置く。

 簡易のワンピースを着ていたティーゼリラは、腹の部分のボタンだけ外して自身の腹を触ってみる。

 そこは、ディーディラインの物とは大違いで、ぷにぷにしていた。

 腹に力を入れてみても変わらず、残念に思うながら再びディーディラインの腹部を触る。

 

「わたしのお腹はぷにぷになのに、ディーのお腹はカチカチ。不思議だわ」


 そんなことを呟いていると、目の前に見えるディーディラインの肌が赤くなっていくの分かって、ティーゼリラは、首を傾げた。

 急激に肌が赤くなり、体温も上がっていくことを不思議に思い、ディーディラインの腹を何度もぺちぺちと触っていく。

 すると、もう我慢できないとでもいうかのように頭上からディーディラインの苦し気な声がしたのだ。

 

「ティーゼリラ様……。駄目です。そんなことされてしまうと、私だって男なのですから、我慢の限界というものが……」


 苦し気な声にティーゼリラが視線を上げると、瞳を熱に潤ませたディーディラインがいた。

 その瞳を見たティーゼリラは、あまりの色気に言葉を失っていたのは一瞬だった。

 

 一瞬で今までのことが夢ではなく現実だったのだと理解したのだ。

 余りの恥ずかしい行為の数々に逃げ出したいティーゼリラだったが、一度視線の合った瞳を逸らすことができずにいた。

 それはディーディラインも同じだった。

 互いに熱を孕んだ瞳で見つめあう。

 ディーディラインは、確かめるようにティーゼリラの瞳を見つめたままその頬に手を触れた。

 親指の腹で軽く頬を撫でると、ティーゼリラの肩がピクリと揺れる。

 それでも二人の視線は絡んだままで、ここだけ時の流れが止まってしまったかのようだった。

 

 ティーゼリラは、自分の頬に触れるディーディラインの温かな手にうっとりとしながら瞳を閉じていた。

 このままキスしてもいいかもなどと夢見心地で思ってしまっていたのだ。

 

 そんなティーゼリラの様子を見ていたディーディラインは、ごくりと喉を上下させていた。

 どう見てもキスをすることを許してくれているティーゼリラの様子を見たディーディラインは、、彼女の甘そうな唇を味わってしまいたいという誘惑に勝てるわけもなく。

 ディーディラインは、吸い寄せられるようにティーゼリラの小さく瑞々しい唇に自身の唇を寄せていた。



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