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二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!  作者: 南野 雪花
新1章

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閑話 インゴルスタの四名臣


 インゴルスタ王国の王城である『氷華宮』は、蜂の巣を突いたような騒ぎになった。


 その日、いつまでも出仕しない将軍アレクサンドラを心配して、侍従の一人が様子を見に屋敷へと赴いた。

 体調でも崩しているのか、と。


 お節介な話ではあるが、アレクサンドラの家から使いもこない以上、こちらから出向くしかなかったのである。


 そして、そこで侍従が見たものは、想像を絶する光景だった。

 家人が一人残らずロープでぐるぐる巻きに縛られていたのだ。すわ強盗事件かと早合点するのも当然というものだろう。


 ところが、拘束を解かれた家人たちの言葉で、インゴルスタ王国の上層部は混乱の淵にたたき落とされることになる。


 家人たちを縛ったのはアレクサンドラ自身。

 目的は、駆け落ちのため。


 自室には「旅に出ます。探さないでください」と書かれた紙切れまで置かれていた。


「どどどどどどうすんですか!?」


 四名臣のなかで最も若く、そして最もメンタルの弱いリリエンがパニックを起こす。


「落ち着きなさいなリリエン。ただの駆け落ちじゃない」


 まあまあとニーニャが取りなす。


「そ、そうですよね」

「ニーニャは駆け落ちの意味をもう一回辞書で引きなさい。そしてリリエンはそんなタワゴトで落ち着かない」


 海よりも深いため息をマイオールがついた。


 たいへん穏やかな気性で温王(えんおう)とよばれる女王ピリムのもとには多くの人材が集っている。

 そのうちとくに有名な四名が、『温王に過ぎたるもの』と称されるのだ。


 剛勇無双で、雷帝の斧『グランダリル』の使い手として知られる豪腕アレクサンドラ。


 インゴルスタの政治を一手に取り仕切る辣腕マイオール。


 女王を救うため、たった一人でスペンシルの陣内に赴いた忠烈リリエン。


 そして、かつては敵国の人間だった鯔背(いなせ)ニーニャ。


 四名臣の一角が、なんと駆け落ちしてしまったのだ。


「とっとと結婚を認めてやれば良かったのに、じらすからこういうことになると思うんだけどね」

「そう簡単な話じゃないんですよ。ニーニャ」


 弱り切った顔の女王ピリムだ。


 平民の出であるニーニャには理解しがたいことではあるが、王国というものは体面が非常に大切になる。


 大将軍が成人していない子供と結婚するなんて認めることはできない。ましてその子供が、かつてアレクサンドラがスラムで拾ってきた孤児だったなんて、笑い話にもならない。


「最悪、そのために誘拐してきたなんて誹謗されるかもしれないんだ」

「アレクさまがそんなことするわけないじゃん」


 マイオールの言い分にニーニャが顔をしかめる。

 豪腕アレクサンドラが、子供を誘拐して自分好みの男に育てるなどいう真似、するわけがない。

 そんな駆けがあったら、全財産をベットしたって良いくらいだ。


「僕もそう思うよ。だけど、大事なのは事実じゃない。政敵にとっては攻撃できる材料であれば何でも良いんだ」

「そうなの? ようするに悪口が言いたいだけってこと?」


「ああ、君は本質を突いたね、ニーニャ。この国を良くしたくて、ただその方法が違うから僕たちと対立するって人たちは敵ではないんだ」


 どうしたら良いのか、という話がちゃんとできるからと付け加える。

 たとえば農地を増やすにしても、干拓するのか森を切り開くのか、方法を巡って建設的な話ができる。


 ところが、どちらのプランもダメだと主張し、主張するだけで対案を出さない勢力もいるのだ。

 ただ王国政府を悪く言いたいだけの連中。


「そいつらが悪口を言ってくるってこと?」


 ミゲルを保護したのは見目麗しい少年だったから。なぜなら、アレクサンドラは他の孤児を保護していない。

 福祉の心があるなら、保護した子供と恋仲になどなるはずがない。

 最初からそのつもりだったに違いない。


「とね」

「カチンときた。マイオールさまをぶん殴っていい?」

「例を挙げただけじゃないか」


「アレクはどこに行ってしまったのか、マイオールには心当たりがありますか?」


 忠臣たちのじゃれ合いを微笑ましく見守っていたピリムが口を開いた。

 遊んでいる場合ではないんですよ、と。


「必ず、という予想はできませんが、ガイリアかマスルではないかと」

「遠いですね。そのこころは?」


 隣国のスペンシルではなく、わざわざそんな遠くまで逃げるだろうか。


「ライオネル王はアレクにとって親友といって良い間柄ですからね。困ったら一番に頼ると思いますよ」


 肩をすくめるマイオールに、リリエンとニーニャがこくこくと頷く。

 あれほど頼りになるお母さんは、中央大陸じゅうを探しても見つからないだろう。


「マスルは人種の坩堝ですからね。ドワーフと人間のカップルがうろついていても、誰も変に思いません」


 人間族がキャットピープルと結ばれたり、魔族とダークエルフが恋仲だったりするのだ。

 そんなのに比べたら、ドワーフと人間なんて没個性といっても良いくらいである。


「判りました。その二ヶ国に泣き言を書いて送りましょう」

「泣き言は書かないでくださいね? 陛下」

「では、なるべくエモーションに訴える手紙にします」

「できれは普通の書簡にしてください」


 なんで僕はこんなくだらない念押しをしているんだろう、と辣腕マイオールは思うのだった。



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