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二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!  作者: 南野 雪花
外伝

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王妹殿下と北の戦士 2

「殿下―っ! 殿下―っ!」

「なんでお主は、いつも叫びながら走ってくるのじゃ? 疲れぬか?」


 お茶のカップをソーサーに置き、ケイは小首をかしげた。

 いつものサロン。

 息せき切っているシッファ。


「走ったり叫んだりすることなど、世の中にそうそうないぞ?」

「殿下は落ち着きすぎなんですよ。本当に十一歳ですか?」

「この年齢のわりに、世の不条理をけっこう体験しておるからの」


 お家騒動続きの名家を立て直し、戦国大名へと育て上げ、ともに歩んできた師を喪い、それでも天下に号令する一歩手前までいき、歴史改変を目撃し、異世界転生し、幼女化した。


 しかも王妹になった。

 波瀾万丈すぎて、達観もしようというものだ。


「で、どうしたのじゃ? シッファ」

「アメニの山賊討伐に向かった『デス&グローリー』が退却した(よし)

「ほう?」


 目を細めるケイ。

 二百名の傭兵団と五十名の正規兵を投入し、山賊に負けて退却する。

 そんなことがあり得るだろうか。


「指揮を取っていた小隊長は、責任を取って自裁すると言っていたらしいですが総参謀長閣下に止められたそうです」

「キリルも人材を惜しむからのう」


 とはいえ切腹ものの失態ではあるがな、と、ケイは内心で呟いた。

 山賊ごときに正規軍が敗れるなど、あってはならない事態である。百戦百勝などないのは当たり前だが、それでも正規軍の精強さは常に喧伝しなくてはいけない。


「『デス&グローリー』が半壊した時点で退却を指示しおり、正規軍に死者はいないそうですが」

「悪くない判断じゃな。欲を言えばもう少し早く逃げても良かったのう」


 腕を組む。

 数的に圧倒的不利なはずの山賊が戦闘を選択した時点で、ライオネルやキリルであれば警戒するだろう。

 だが、戦ってもいないうちから退却を決められる指揮官など滅多にいない。


 一当たりして傭兵団の損害が大きすぎると判断し、本隊が打撃を受けずに済ませた手腕は、腹を切らせるのは惜しかろう。


「軍学校時代にライオネル陛下をいじめて逆襲され、泣きながら逃げていったメリスって野郎ですがね」

「そして二十代のうちに隊長まで出世したとな。根性があるではないか」

「根性はありますね。卒業までの間に、都合十七回も決闘を挑んで、ことごとく負けましたから」


 負けても負けてもライオネルに挑み続けたメリスは、卒業後ガイリア軍に入隊した。ガイリアの王がライオネルに代わっても、退役することなく忠誠を誓った。

 かつての宿敵に悪びれることもなく。


「ど根性と言い直そうかの」

「まあ、ガキの頃の話なんで、もう誰も気にしてないですけどね。たまに三人で飲んだときには、あの頃の話に花が咲きますよ」


「国王と王妹の侍従武官と王国軍の小隊長が酒を酌み交わす、なかなか愉快な光景じゃな」

「もちろんこっそりですよ」


 シッファが楽しそうに笑った。




「ともあれ、『デス&グローリー』を一敗地にまみれさせた山賊か。生半可な相手ではないな」

「討伐隊は一本の麦も収穫できなかったわけじゃない。『デス&グローリー』のやられ具合(・・・・・)から、山賊団の人数は五十名前後という推測が成り立った」


 場所を軍務省に移し、キリルと面会したケイは善後策について話し合っている。


 傭兵団が負けてしまった以上、今度はちゃんと正規軍を動かさなくてはいけない。これは既定の事実だが、問題は規模だ。


 二百名の『デス&グローリー』は、状況から五十名の山賊に敗北したことになる。

 そんな事態は普通に考えてあれ得ない。


「それこそライオネル陛下が指揮を執られているならともかくね」

「キリルでも同じじゃろうに」


 笑いつつもケイは野戦ならばライオネルに軍配が上がるだろう思っている。逆に攻城や拠点防御などといった戦いではキリルの方が強いと読む。


 彼が設計したガイリアの五芒星の攻略をシミュレートして、ケイはキリルの凄みを思い知らされた。

 十通りの作戦を試し、一つも成功しなかったのである。


 もちろん百倍などの圧倒的戦力で攻めれば陥せるだろうが、王城がそんな戦力に攻められるほど追い詰められたなら、逆転の目などないからとっとと降伏した方が良い。


「つまりキリルは、山賊のなかに軍師がいると読むのじゃな?」


「わからない。私なら一人も生かして返さないか、とっとと陣を引き払って逃げるからね。こんな中途半端に勝つなんて、軍師のやることじゃないとも思うんだ」

「たしかにの。次にくるのは圧倒的多数での攻撃じゃからな」


 ふむとケイが形の良い顎に右手の指先を当て、とんとんと軽く動かす。

 熟考しているときの、癖とも言えない癖である。


 山賊にしては戦術能力が高すぎる。しかし軍師にしては先が見えていない。

 奇妙な敵だ。


「……キリルや、我に百ほど兵を貸してくれぬか?」

「百? 倍でもぜんぜんかまわないけど?」

「そんなにいらん」


 自信に満ちて言い放つケイ。

 了解したと頷き、キリルが手配のためにオフィスを出る。


「大丈夫なんですか? 殿下」


 それを横目で見ながらシッファが心配そうに尋ねた。


「大丈夫じゃ。二百で負けたのに次は百なのかと違和感を持たせるのも計略のうちじゃでな」


 に、と笑ってみせる。

 乱世の梟雄みたいに不敵な笑みだと本人は思っているが、じつのところ可愛いだけであった。



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― 新着の感想 ―
賢いのじゃロリ可愛い
ケイちゃんカワイイヤッター
あっさり片付くはずの山賊討伐がきな臭くなってきましたねー
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