第332話 妹ができました
ランズフェロー王国で孤児を一人保護した、という名目にした。
さすがに、女神アマテラスが統べる異世界からやってきた、なんて話をしたら頭がおかしくなったと思われちゃうからね。
あ、今川義元あらためケイの処遇である。
とりあえずしばらくはクランハウスで大陸公用語の勉強だ。まだランズフェロー語っていうか、ヒノモト語しか話せないからね。
このあたりはアニータに任せれば問題ない。
ユウギリに教えた実績もあるしね。
「うちがぁ、おしえてもおいいよぉ」
様々な言語に精通しているサリエリが申し出てくれたけど、これはもちろん却下。
なぜって? 絶対ろくなこと教えないからさ。
「のじゃろり語を教えてあげるのぉ」
「うん。それがなにかは判らないけど、間違いなくやめた方が良いことだけは判るよ」
ともあれ、ケイは十歳ということなので、至高神教会で天賦を調べてもらうことになった。
「汝らの世界では己の天賦がわかるのだったな。面白くはあるが、さまざまなことに挑む楽しみが減るな」
などと、家康と似たような感想を漏らすケイである。
「判るのは方向性だけだし、天賦の通りに生きなくてならないなんて決まりもないさ」
軍師で剣士もいれば、鷹の目で戦士もいる。
その程度のもんだ。
自分にはこういう才能か眠ってるんだなってなくとなーく判るってだけの話だからね。
「それ以上に、衝撃の事実がわかりますわよ」
「なんだよ衝撃って」
不穏当なことをいって笑うメイシャに、俺は胡乱げな視線を向ける。
なんか天啓でもあったのか。
女の子が加入すると大騒ぎするアスカやミリアリアもおとなしいしね。
不気味ではあるな。
衝撃の事実だったよ!
祝福の儀式がはじまると、至高神教会の礼拝堂は白い空間に変わった。
神界化だ。
俺たちは体験したばっかりだけど、司祭様は驚いている。
ただ、女神アマテラスのときのように神様の姿は見えない。
ぼわっとした光が、なぜか遠くに見えていて、そこに至高神がいるんだろうなってのがわかる。
「義元、いや、ケイよ」
「ははっ!」
平伏したままケイが返事をする。かなり緊張した様子だ。
「そなたはライオネルの妹だ」
「へ?」
「は?」
おもわず俺まで変な声を出しちゃったよ。
妹ってなにさ妹って。
俺、父親も母親も知らないんだけど。
「そもそもケイはこの世界の人間ではない」
驚く俺たちに至高神が説明してくれる。なぜだか苦笑交じりの気配をさせて。
本来であればすぐに元の世界に戻すというのが正解なんだそうだ。
俺たちも帰ってきたしね。
ところがケイの場合は帰ることができない。
なので、こちらの世界の人間として受肉しないといけないんだってさ。
「面ど……ライオネルをベースにしたので、遺伝情報としては同じ両親から生まれたものというかたちになる」
「いま、面倒って言いかけませんでしたか? 至高神様?」
「気のせいだ。邪推だ」
ホントかよ……。
アマテラスにむりやり押しつけられたんで適当にやっつけ仕事で終わらせたんじゃないだろうな?
「というわけで、天賦もそなたと同じ軍師だ。あと兄妹だから結婚はできんぞ」
ごほんと咳払いしたあと、至高神の声が遠ざかっていく。
なんだろう。
都合悪いことを訊かれないうちに逃げたって感が否めないんだけど。
「なんとも衝撃の展開だな……」
気がつけば、もとの礼拝堂だ。
俺だけでなくケイも司祭様も驚きを禁じ得ない表情だけど、なんか娘たちだけはニヤニヤしている。
こいつら知ってたな。
たぶんメイシャに天啓があって、それを伝えたんだろう。
「よろしくな、兄上」
いちはやく驚きから回復したケイが改めて挨拶してくる。
「立ち直りはやいなぁ」
「いまさらだよ。異世界にきたり童女になったり、驚きなどとうに限界を突破しておるわ」
「肝が太いな。そこは相変わらずだ」
「それに、妹となれば血縁だ。他のおなごのように飽きたから捨てられるということもなかろうしな」
「なあケイ? おまえ俺のこと鬼畜かなんかだと思ってないか?」
ほんっとね、勘弁してくださいよ。
俺、女遊びなんてしたことないからね?
あと娘たちも、にやにや笑いをやめたまえよ。
拾った孤児はなんと生き別れの妹でした。
普通にきいたら信じられない話だけど、ガイリアの至高神教会の司祭様が保証つきだからね。
疑う余地はゼロです。
「しかもライオネルと同じ軍師の天賦をもつとはな。将来が楽しみではないか」
鷹揚に笑うのはロスカンドロス王だ。
いち冒険者に妹がいたことなど、王様にとっては些末事にすらならないことなんだけど、『希望』のリーダーとなるとそういうわけにはいかない。
と、冒険者ギルドのギルド長に言われ、王城に参内したのだ。
もちろんケイを連れてね。
言葉はまだわからないんだけど、随伴のサリエリが横で通訳してくれている。
「国王陛下のご尊顔を拝し、不肖ケイ恐懼の極みでございます」
頭の下げ方まで、完璧に決まった礼法だ。
あ、サリエリの通訳はのへのへしてるんで、こんなにハキハキは訳してないよ。
みんな馴れてるから、ちゃんと脳内で変換してる。
「大陸公用語を憶えたら、軍略の学校に通うそうですよ」
「小ライオネルだな。三人目の軍師は他国からうらやましがられることだろう」
ロスカンドロス王が笑う。
なにしろこのガイリア王国には、キリル、俺、ケイっていう三人の軍師が集うことになったのだ。
セルリカに一人、マスルですらゼロ人だってことを考えたら、すごい確率だって判るだろう。
※著者からのお願いです
この作品を「面白かった」「気に入った」「続きが気になる」「もっと読みたい」と思った方は、
下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして評価していただいたり、
ブックマーク登録を、どうかお願いいたします。
あなた様の応援が著者の力になります!
なにとぞ! なにとぞ!!




