表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二度追放された冒険者、激レアスキル駆使して美少女軍団を育成中!  作者: 南野 雪花
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/413

第10話 遺跡探索(後編)


 ミリアリアという娘は、ちゃんと計画を立てそれに従って動くことを得意としている。

 非常に良い言い方をすれば、深慮遠謀の人だ。


 そして同時に、臨機応変の人ではないのである。


 突発的な出来事にひたすら弱い。彼女自身が立てた予想を超えるような事態に遭遇すると簡単にテンパってしまう。

 笑えるくらいにポンコツになってしまうのだ。


「大丈夫か。ミリアリア」

「は、はい……ネルさん」


 とんがり帽子を外し、茶色の頭を撫でて落ち着かせてやる。

 ふかーふかーと、威嚇する猫みたいだった呼吸が、普段通りに戻ってきた。


「ごめんなさい……」

「気にするな。突発的な事態が得意なんてやつはいない」


 そのつもりでいるから対応できるだけ。

 慣れでしかないのである。


 アスカみたいな剣士は鍛錬することで、その慣れを積み上げるコミットができるけど、魔法使いはそういうわけにはいかない。


 どの魔法を使うか考え、詠唱して、発動するのはそれからだ。

 咄嗟に剣を抜くとか、右に跳ぶとか、そういうふうに身体に憶えさせることはできないのである。


 素早い状況判断と正確な戦力分析、次の手その次の手と組み上げていく戦術的な思考、そういうものが要求される。

 高次元でね。


 十六歳の女の子が完璧にこなせたら、むしろ奇跡だろう。

 ましてミリアリアは本番に弱いタイプだし。


「少しずつ慣れていけばいいさ。それまでは俺に頼れ。袖の下なしで助けてやるから」


 ぽんぽんと小さな背中を叩いてやる。


「ほんと、ネルさんってお母さんですよね」


 くすりとミリアリアが笑った。

 いや、そこはお兄さんと呼んで欲しいのだよ。俺としてはね。


「ネルさんネルさん! メイがおなかすいたって!」

「もうダメですわ……」


 俺がミリアリアを落ち着かせている間に、ちょっとそのあたりを偵察していたアスカとへろへろメイシャが戻ってきた。

 ろくでもない報告を持って。


「またかよ……」


 ため息とともに俺は背負い袋から特製ペミカンを取り出し、パンで挟んでメイシャに与えてやる。


「うまうまですわ! ネルママ愛してますわ!」


 喜ばれた。

 やっすい愛だなぁ。


 ペミカンというのは、細かく刻んだ肉や野菜を香ばしく炒めてバターで固めた栄養満点の携帯食だ。

 お湯や温めた牛乳に溶いても良いし、パンに挟んだりそのままかじったりしても美味い。


 脂の塊だから、食べ過ぎたら身体に悪いけどね。

 少なくともメイシャみたいにがつがつ食べたら、間違いなく太ってしまうだろう。

 なんでこの娘は太らないのか、永遠の謎である。


 ただ、太らないけど燃費が悪いんだ。

 肉弾戦もそこそこできて、神聖魔法も使えて、俺の指示にも即応できるという優秀な冒険者なんだけど、とにかくすぐにお腹が空いちゃうのである。

 で、お腹が空いたら動けなくなる。


 困った体質の持ち主のため、俺の背負い袋には携帯栄養食がけっこう入っているのだ。


「おなかすいてないときのメイは、超有能なのにね!」


 からからとアスカが笑う。

 それを言うならお前さんだって、やたら前に出たがる癖がなければ優秀な冒険者なんだぜ?


 戦闘のセンスは充分なのに猪突しちゃう剣士。

 知識もあるし使える魔法も多いのに本番に弱い魔法使い。

 すべてにおいて高水準の能力がありながら、すぐに空腹で動けなくなる僧侶。


 我がクランの構成員たちは、とっても個性的です。





 紆余曲折はあったけど、調査は順調に進んでいる。


 規模としてはそんなに大きな遺跡じゃない。

 残っている建物も二十くらいで、あとは完全に瓦礫の山だ。


 そしてモンスターはほとんどいなかった。いたのはゴーレムである。かれこれ三十体ほどやっつけている。

 たぶん、あいつらがここを守っていたのだろう。

 住む人もなく、訪れる人もない街を。


「なんだか切ないですね」


 ぽつりとミリアリアが言った。

 もう慣れたのか、急にゴーレムが飛び出してきても慌てずに対処できるようになった。


「だれのために街を守っているのか。いまさらそんなことをしてなんになるのか」


 軽く首を振る。

 無意味な考えだと判っているからだろう。


 ゴーレムに意志などない。与えられた命令を忠実に実行するだけだ。

 機能を停止するその日まで。


 そこに感傷的(センチメンタル)な思いを重ねてしまうのは、まさに人間の得手勝手というものである。

 あるいは、彼女の優しさというべきか。


「けど、あいつらが守っていてくれたから、街は汚れたモンスターどもに荒らされることがなかった。何千年も後の世代の俺たちに当時の文化や風俗を伝えることができたんじゃないかな」


 だから、ちょっとずれていたとんがり帽子を直してやった。優しくな。

 ミリアリアが俺を見上げてきた。

 まじまじと。


「ネルさんって、意外とロマンチストですか?」

「いや? 本音を語れば、こいつらが守っていてくれたおかげでお宝が手に入るなー、と」

「だと思った」


 くすくすと笑う少女。

 OK。それでいい。

 余計なことを考えると剣も魔法も鈍るからな。


「でもさー、ゴーレムって決まった動きしかしないからつまんないよね。もっとこう、多彩な攻撃パターンがあっても良いと思うんだよ」


 俺とミリアリアの会話に割り込むようにして、すごくどうでも良いことをアスカが言った。


 うん。

 きみは何をしにこの遺跡にきたのか、もういちど言ってみたまえ。

 このバトルジャンキー娘が。


 ともあれ、探索は順調である。

 この分なら二、三日もあれば、地図作り(マッピング)は終わるだろう。



※著者からのお願いです


この作品を、少しでも「面白かった」「気に入った」「続きが気になる」と思った方は、

下にある☆☆☆☆☆を★★★★★にして評価していただいたり、

ブックマーク登録を、どうかお願いいたします。


あなた様の応援が著者の力になります!

なにとぞ! なにとぞ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 女性キャラの頭をなでる って描写が今作品でも見られるところは作風なんでしょうね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ