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95話 ぽかぽか

 わたしは、とある里の獣人。

 犬の耳と尻尾がついている種族。

 普通の人間とは違う。


 だからなのか、街から離れた山奥の里で暮らしていた。


 わりと不便。

 火は自力で起こすしかない。

 水は、毎日川まで汲みに行かないといけない。


 毎日大変。


 でも、不幸と思ったことはない。


 たくましいお父さんがいた。

 優しいお母さんがいた。


 それだけじゃなくて、おじいちゃんがいて、おばあちゃんがいて、仲間がいて……

 みんながいた。

 だから、毎日笑顔で過ごすことができた。

 全部全部、満たされていた。


 だけど……ある日、全部が終わった。


 人間が攻めてきた。

 里がどうなったのか……わたしは知らない。


 お父さんとお母さんが逃してくれた。

 絶対に捕まるな、と言われた。


 わたしは泣きながら逃げた。

 走って、走って、走って……


 でも、捕まった。


 わたしを捕まえた人間は……

 ううん、あれは人間なのだろうか?


 確かに、見た目は人間だ。

 でも、中身はまるで別物というか……

 すごく怖い、と思った。


 その人間に捕まって、わたしは奴隷に落ちた。


 痛くて。

 悲しくて。

 寂しくて。

 苦しくて。


 ……そんな毎日。

 私の心はからっぽになった。

 世界を見るから苦しい。

 なら、なにも見なければいい。


 そんな感じで、なにも考えないようにして……


 でもそんなある日、フェイトとソフィアが助けてくれた。

 お父さんとお母さんのような人だった。

 強くて、優しい。


 フェイトは太陽のような人。

 強いだけじゃなくて、心に光を当ててくれて、導いてくれる。


 ソフィアは月のような人。

 優しく静かに、みんなを見守ってくれている。


 そんな印象を抱いて……

 それと、お父さんとお母さんのように見えた。


 フェイトとソフィアはお父さんとお母さんじゃない。

 まったく別の人間。

 それなのに同じに見たら失礼。

 不愉快に思われるかもしれない。


 だから、一緒にいたらいけないと思っていたんだけど……

 そんなことはなかった。

 フェイトとソフィアは、わたしと一緒にいたいと言ってくれた。


 そんな二人の笑顔は、今でもハッキリと思い出すことができる。

 ぽかぽか。

 温かいおひさまのよう。


 わたしは……もう無理だった。

 二人の優しさに甘えずにはいられなくて……

 新しいお父さんとお母さんになってほしいと、そうお願いをして……


 わたしは幸せ。

 全部、失ったと思ったけど、でもそんなことはなくて……

 また新しく、大事なものを手に入れることができた。


 心が温かくて、ぽかぽか。


 おとーさんとおかーさんの匂いを感じて、わたしはにっこりと笑う。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 作者様、妄想の時間となりました。 もしも、フェイトとアルトとレインの三人が力を合わせたら? レイン「うおおっ!ファイアウォール!」←タニアの力で強化 アルト「はああっ!双刃斬!」←レインの技…
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