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75話 タダで済むと思うな、はこちらの台詞

「おや? あなたは……」


 司会者が僕に気づいて、不思議そうな顔に。

 たぶん、ドクトルから話は聞いているのだろう。

 味方だと思っているらしく、不思議そうにしてはいるものの、慌ててはいない。


 好都合。

 隙だらけなので、遠慮なくやらせてもらうよ。


「ぐぁ!? な、なにが……」


 足を斬りつけて、ついでに腕も斬る。

 切断したわけじゃないから、ひどい出血じゃないし、死ぬことはないだろう。


 でも、すぐに動くことはできないはずだ。


「あ……うわあああああっ!?」

「きゃあああっ、な、なに!? なにが起きているの!?」


 突然の事件に、客達が騒ぎ始めた。

 中には、判断が早い者もいて、出口に向かい逃げ出そうとしている。


 しかし、無駄。

 一人も逃さないように、出口はリコリスの魔法で施錠しておいた。

 なにも能力を持たない一般人なら、逃げることは不可能だ。


 今のうちに、やるべきことをやる。


「あ、あなたは……」

「助けに来ました。じっとしててください」


 捕まっていた人達も驚いて、怯えていた。

 敵じゃないことを証明するために、なるべく優しい声でそう語りかけて、それぞれを縛る枷を切り落としていく。


 奴隷の首輪だとしたら、僕じゃあ切ることはできないんだけど……

 まだ奴隷として売られる前なので、契約は完了していない。

 彼女達を縛るものは普通の鉄製のものなので、順次、切断して自由にしていく。


「あ……ほ、本当に、私達を助けてくれるんですか……?」

「わたし、おうちに帰れるの……?」

「はい。もう大丈夫です」

「あ、あああぁ……! ありがとうございますっ、ありがとうございますっ」


 女性は涙を流して喜び、子供達もつられて泣き出してしまう。

 それだけ怯え、苦しみ、傷ついていたのだろう。


 改めて、こんなことを企むドクトルとファルツに強い怒りを覚える。


「リコリス、この人達を」

「りょーかい、任せておきなさい!」


 リコリスはふわりと飛び上がると、ぶつぶつとなにかつぶやいた。


 すると、捕まっていた人達を包み込むかのように、光のカーテンが現れる。

 これが結界なのだろう。

 軽く触れてみると、強い抵抗力を感じた。

 水の中にいるかのように、思うように手を進めることができない。

 しまいにはぴたりと止まり、それ以上は進めなくなる。


「この結界、すごいね。前に進むことができないよ」

「ふふーん、でしょ? そうでしょ? すごいでしょ? まっ、天才美少女キューティービューティー妖精リコリスちゃんの特製結界だもの。そんじょそこらのヤツじゃ突破することはできないわ」


 これなら安心だ。

 次は、アイシャだけど……


「てめえ、裏切るつもりか!?」

「台無しにしやがって……ぶっ殺す!」


 激怒するドクトルの私兵達が現れた。

 それぞれに武器を持ち、突撃してくるのだけど……


「私を忘れないでくださいね?」


 一陣の風が吹いた。


「ぎゃあああ!?」

「ぐあ!?」

「げはぁっ!?」


 ソフィアが一瞬で三人を迎撃して、地に叩き伏せた。

 うめき声をこぼしているところを見ると、一応、手加減はしたみたいだ。


 ただ、手足が変な方向に曲がっていて……

 たぶん、荒事に関わることは二度とできないだろうな。


「さあ、私が相手をしてあげます。どこからでも、いつでもかかってきなさい。ただし……」


 ソフィアは剣を構える。

 そして、鋭く睨みつけた。


「今の私はだいぶ不機嫌なので、相応の怪我を覚悟してくださいね?」


 凍てつくような殺気に、私兵達は顔を青ざめさせた。


 あの様子なら問題はないかな?

 やりすぎてしまわないか、という心配はあるのだけど……

 まあ、そうなったら、それはそれでいいか。

 こんな連中に同情する要素はゼロだ。


「じゃあ、あとはお願い。僕は、アイシャを探しに行くよ」

「はい、ここは任せてください」

「しっかりやりなさいよ」


 二人のエールを受けて、力を分けてもらったような気分だ。

 今ならなんでもできそう。


「くっ……こ、このようなことをして、タダで済むと思っているのですか……!?」


 司会者が体を起こして、こちらを睨みつけてきた。

 しぶとい。


 いっそのこと、バッサリと……

 なんて乱暴な考えが浮かんでしまうものの、それは我慢。

 無抵抗の相手をというのは、さすがにやったらダメだ。


「ドクトルさまに逆らうなんて愚かなことを……! 断言しましょう、あなた達は、アリのように踏み潰されるでしょう!」

「……タダで済むと思うのか、っていう台詞だけど、それは僕の台詞だよ」


 放っておけばいいのだけど、でも、そこだけは見逃すことができず、睨みつける。


「たくさんの人にひどいことをして、アイシャにもひどいことをして……そうやって好き勝手して、タダで済むと思わないでくれるかな? 絶対に、落とし前はつけさせる!」

「っ……!?」


 司会者がビクリと震えて、押し黙る。


「はー……フェイトってば、怒ると怖いのね」


 なにやらリコリスのそんな台詞が聞こえてきたけど、気にしないことにする。


 それよりも、今はアイシャだ。

 早く助けて、安心させてあげないと!

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