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73話 運命の日

 会場の警備を任されたものの、ドクトルも僕達を完全に信用はしていないだろう。


 クリフと協力していると、疑っているとは思わないのだけど……

 ただ、自分の暗部を見せていい者かどうか、測りかねているところはあると思う。

 会場の警備を、と言われたものの、周辺を担当することになるかもしれない。

 それは問題だ。


 なので、警備を任されるまでの間、クリフの手のものを撃退するなどの成果を示してみせた。

 これにより、僕達はクリフじゃなくてあなたに味方するよ? というアピールをすることができて、信頼もゲット。

 無事、オークション会場の内部の警備を任されることに。


 何度も何度も打ち合わせを重ねて……

 当日のドクトルの動きも、可能な限りシミュレートして……


 これ以上の作戦はない、という完璧な準備ができたところで、オークション当日が訪れた。




――――――――――




 オークション会場は、郊外にある寂れた屋敷だ。


 一見するとお化け屋敷のように見えるのだけど、それは外観だけ。

 中はきちんと整備されていて、綺麗、なおかつ豪華だ。


 それだけじゃなくて、要塞のような堅牢な作りになっている。

 いざという時に備えて、このような作りにしたのだろう。


 僕とソフィアはホールの担当だ。

 来場者を全員把握することができるし、いつでもどこへでも駆けつけやすいから、とても助かる配置だ。


「やあ」


 ドクトルが現れた。

 ファルツも一緒だ。


 ただ、護衛が見当たらない。

 ここは絶対安心、ということなのかな?


「調子はどうですか?」

「はい、問題ありません」

「なにかしら問題が起きても、私とフェイトですぐに解決いたしましょう」

「そうですか、そうですか。とても頼もしい。前にも言いましたが、今日はとても大事な取り引きがあるため、しっかりと頼みますよ」

「「はい」」


 ドクトルは機嫌よさそうに笑い、


「……ふん」


 ファルツは不機嫌そうに鼻を鳴らす。


 ドクトルからの信頼は、ある程度、得ることができたみたいだけど、ファルツはそうでもないみたいだ。

 ファルツも重要なターゲットなのだけど、優先順位はドクトルの方が上。


 今になって急に信頼を得ることはできないし、放置しておくしかないんだけど……うーん?

 ちょっとイヤな感じがするな。

 この予感、外れてくれるといいんだけど……


「フェイト」


 二人が去った後で、ソフィアがそっと声をかけてきた。


「もう一度、今日の手順を確認しておきましょう」

「うん、そうだね」


 まずは、すでに内部に潜入している僕達が動く。

 見回りと称して屋敷内を探索。

 事前に屋敷の設計図を入手してチェックしておいたので、オークションの会場となる場所は大体の予想がついている。

 そして、オークションの現場を確認したところで、魔道具を使い、クリフに合図を送る。


 合図と共に、クリフを始めとする冒険者達が屋敷へ突入。

 もちろん、誰一人逃さないように万全の包囲網を敷く。


 僕とソフィアの第一目標は、アイシャの救出。

 そして余裕があれば、ドクトルとファルツの確保。


「……とまあ、こんなところだよね?」

「はい、そうですね。補足するなら、第三の目的として、隠し通路などがないかの調査。あるとしたら、それを潰しておくことでしょうか」

「あ、そっか。それもあったね」

「ですが、さすがにそこまでの余裕はないと思うので……私達は、アイシャの救出に専念しましょう。ドクトルとファルツは、クリフがなんとかすると言っていますし」

「そう、だね……」

「どうかしましたか?」

「うーん、なんて言えばいいのか……ちょっとイヤな予感がして」

「イヤな予感ですか……」

「ごめんね、根拠のない話で」

「いえ、問題ありません。フェイトがそう言うのなら、私も、最大限に警戒することにします。なにしろ、世界で一番大事で、一番信頼できる人の言葉ですからね」

「ありがとう、ソフィア」

「……あのさー」


 僕の頭の上に乗るリコリスが、呆れたような感じで言う。


「あたしのこと忘れて、イチャつかないでくれる? っていうか、あんたら、イチャつかないと生きていけないの? とある魚なの? あたし、砂糖を食べさせられているみたいで、胸焼けしてきたんだけど」

「「ごめんなさい」」


 リコリスに陳謝する僕とソフィアだった。


 その後……


 一時間ほど経過したところで、屋敷内の巡回と称して探索を始めた。

 これは事前に話をしているため、怪しまれることはない。


 一階、二階、三階を見て回るものの、オークション会場はない。

 となると、地下室だろうか?

 事前に入手した設計図で、この屋敷に広い地下室があることは確認済みだ。


「オッケー。今はあんた達が巡回してるってことで、途中に見張りはいないわ」


 先行偵察をしてくれたリコリスから、そんな報告を受け取る。


「ただ、ちょっとでかい扉があって、その先は確認できなかったから、そこはどうなってるかわからないわ」

「とりあえず、行ってみるしかないね」

「設計図も、この屋敷が建てられた当時のものなので、改築などされているかもしれませんし……見落としがないよう、注意していきましょう」


 こうして、僕達は地下へ。


 地下は暗く狭くおどろどろしい……なんていうことはなくで、地上階と同じように綺麗で清潔だ。

 しかも広い。

 さらに言うと、多方面に通路が伸びている。


 設計図にこんな情報は載っていない。

 改築されていることは確定かな。


「ここがその扉か……」


 五分ほど歩いたところで、リコリスが言う扉に行き着いた。

 鍵は……かかっていない。

 見張りもいない。


 大丈夫かな?


 警戒はしつつ、扉を開ける。

 そこで見たものは……


「さあ、おまたせいたしました。続いての商品は、金髪碧眼の美女です! 見ての通り、スタイルは抜群。夜の相手をさせるのならば、文句はないでしょう。それだけではなくて、コレは、ある程度の戦闘能力も有しています。性奴隷だけではなくて、戦闘奴隷としても使用できるという優れもの。さあさあ、いかがでしょう? まずは、一万からスタートです!!!」


 おぞましいほどの欲望が行き交うオークションの現場だった。

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【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
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