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69話 情報整理

 一夜明けて、ドクトル邸での朝を迎える。


 ソフィアと一緒のベッドで寝る、なんてことになった時は、緊張して眠れるか不安だったのだけど……

 いざ横になって目を閉じると、すぐに眠ることができた。

 色々あったから、疲れが溜まっていたのだろう。


 その後、朝食をいただいて、再び客間に戻る。

 ドクトルは話をしたい様子だったが、昼過ぎまで仕事があるらしい。


 専任について話し合う時間ができましたね、なんてことを言っていた。

 もちろん、そんな話をするつもりはない。

 話し合うことは、これからどう動くか? というものだ。


 専任についての話をすると、


「なるほど……それは、受けた方がいいかもしれませんね」

「え、そうなの?」

「専任になることで、より深いところに潜り込むことができますし、ドクトルも私達を信用するでしょう。不正の証拠をより集めやすくなります」

「うん、それは考えたんだけど、でも、最終的には敵対するわけだよね? 専任になっておいてそんなことをしたら、後々でまずいことになるんじゃないかな?」

「確かにまずいですが、ドクトルが失脚すれば問題ありません。クリフがなんとかしてくれるそうです」

「と、いうことは……ドクトルが失脚しないとダメ、っていうことか」

「そうなりますね……ハイリスクな案件になります。フェイト。やはり、安全安心を第一に考えて、退いたとしても……」

「ううん、それはやらない」


 きっぱりと言う。


 ソフィアが僕のことを心配してくれているのはわかる。

 その気持ちはとてもうれしいし、僕もソフィアを危険な目に遭わせたくない。


 でも、


「ドクトルが好き勝手やっているのなら、放っておくことはしたくないんだ。僕には関係無いことなのかもしれない。冒険者をやめればいいだけの話かもしれない。でも……そのことを知って、なおかつ、どうにかできるかもしれないというのなら、僕は、どうにかしたい。自分にできることをしたい」

「はい、わかりました」

「ごめんね、ソフィア」

「どうして謝るのですか?」

「僕のわがままにソフィアを付き合わせることになるから……」

「ぜんぜん気にしていませんよ。むしろ、うれしいくらいです。フェイトのそんな真面目でまっすぐなところを、私は好きになったのですから」

「……ありがとう」


 ソフィアが幼馴染で本当によかったと思う。

 僕にはもったいないくらいの女の子だ。


 でも……いつまでも、こんな考えじゃいけないよな。

 早く彼女に釣り合う男になって、それから、ずっと大事にするんだ。


「じゃあ、専任は引き受ける、っていうことでいいかな?」

「はい、それでいいと思います。ただ、専任になったからといって、すぐに全ての情報が開示されるわけではないと思うので……たぶん、少しずつ汚れ仕事をさせられるでしょう」

「そこは……うん、そうだね。ただ、人を傷つけるようなことはしたくないかな。そうなりそうな時は、ちょっと方法を考えたいかも」

「はい、それは私も同意です。盗賊団の財宝を横流しするのなら、後で取り返せばいいのですが……脅迫とか暗殺とか、そういう話になった時は、別の方法を考えましょう」

「うん。じゃあ、ひとまず、今後の方針はそんなところかな?」

「あ、少し耳に入れておきたい情報が」


 なんだろう?


「アイシャのことですが……もしかしたら、ドクトルが関与しているかもしれません」

「え?」


 思わぬ情報に、ついつい声を大きくしてしまう。


「それ、どういうこと?」

「確たることは言えないのですが、クリフからの情報によると、どうも、ドクトルとその協力者であるファルツは、人身売買にも手を染めていたらしく……」

「もしかして……アイシャは、その被害者?」

「その可能性が高い、とクリフは言っていました。盗賊団に貴重な獣人などを誘拐してもらい、商品として売る……その可能性が高い、と」

「……」


 拳を強く握りしめる。


 あんなに小さな子を誘拐して……

 しかも、奴隷として売ろうとするなんて。


 許せない。

 証拠が揃っているのなら、今すぐにでも斬り捨ててしまいたいくらいだ。


 激しい怒りが湧き上がるのだけど……

 でも、短気はいけない。

 ここでドクトルを斬り捨てたら、パートナーであるソフィアも巻き込まれるかもしれない。

 かといって正規の手順で弾劾しようにも、証拠足りない。


 大丈夫。

 アイシャは、クリフがちゃんと保護してくれているらしい。

 焦らず、できることを確実にこなしていこう。


「うん……教えてくれてありがとう。アイシャのことも注意した方がよさそうだね」

「はい。あと、これは時間があったらでいいのですが……アイシャに会いにいってあげてくれませんか? あの子、フェイトのことが気になるらしくて……」


 なんてことを言いつつ、ソフィアは微妙な顔に。


 もしかして……妬いている?


「あー、この子めんどくさいわねー。あんな小さな子を相手に妬くんじゃないわよ」

「うっ」


 成り行きを見守っていたリコリスが、呆れた様子で言う。

 ソフィアは赤くなり、視線を逸らす。


「で、ですが、それは……」

「はいはい、言い訳はいいの。とりあえず、子供相手に嫉妬して、変なことはしないでよ」

「わ、わかっています!」


 ムキになるソフィアもかわいいなあ、なんてことを考えてしまう。


「じゃあ、専任を受ける、ということで」

「はい、それでいいと思います」

「そこら辺は任せたら。あたしにできることがあれば、ま、協力してあげる」


 三人の意見が一致する。


 さて……これから、どんな展開になるか?

 気を抜かず、しっかりとやっていきたい。




――――――――――




 午後。

 ドクトルが帰ってきた後、専任を引き受けるという話をした。


 ドクトルは、こちらが予想していた以上に喜んでいた。

 僕が、というよりは、ソフィアが味方になってくれることがうれしいのだろう。


 なにしろ、剣聖だからね。

 その力は、個人で小さな国を制圧できてしまうほどだ。


 そのまま、ぽんぽんぽんとスムーズに話が進んだ。

 専任になったことで、ある程度の情報も開示してもらえることになった。

 全てというわけじゃないけど、これは大きい。

 うまい具合に調査を進めれば、確たる不正の証拠を手に入れることができるだろう。


 ……と、良い話はここまで。


 悪い話がある。

 専任になったことで、さっそく、僕達は仕事を与えられた。

 その仕事というのが……


「まさか、アイシャを探し出すこと……なんて」

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【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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