表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/520

57話 モンスターテイマー

「それにしても、こんなところにケルベロスがいるなんて……しかも、何匹も。どうなっているんだろう?」

「偶然なわけがありませんね。まあ、自然発生することは絶対にない、とは言い切れませんが……そうだとしても、盗賊が無事な理由がありません。おそらく、モンスターテイマーがいるのでしょう」

「なによ、それ? 魔物をゲットするの?」


 なんか、リコリスの知識は偏っていないだろうか?

 ゲットとか、どういうこと?


「名前の通り、魔物を操る人のことだよ」

「へー、魔物を? そんなことできるの?」

「一部の人だけで、才能がないとダメだけどね。モンスターテイマーの家系に産まれるとか、幼い頃から師事するとか……それくらいの努力は必要で、難しい職業なんだ。ただ、魔物を操ることができるから、かなり強力だよ」

「ってことは……」


 リコリスは考える仕草をして、そのまま固まること数十秒。

 ややあって、ピコーンと閃いた様子で、目を輝かせて言う。


「敵にモンスターテイマーがいる、っていうことね!?」

「え……あ、うん。そうだと思う」

「ふふんっ、やっぱり? やっぱりそう思うわよね? あたしの推理力、めっちゃ恐ろしいわー。こんなにも早く、真実に辿り着いちゃうなんて、すごすぎるわー。自分で自分が怖いわ」

「……」


 あ、ソフィアがイラッとした顔に。


 それに気づいた様子もなく、リコリスはドヤ顔で続ける。


「そのモンスターテイマーとやら、大したことはないわね」

「え、なんで?」

「ふっふっふ……この超絶天才美少女リコリスちゃんに、とっておきの秘策があるわ!」

「そうなの? どんな?」

「あたしのような妖精は、色々と魔法が使えるのよ。ほら。この前、ダンジョンでフェイトの傷を癒やしたでしょう?」

「うん、そうだね。あの時はありがとう」

「とんでもなく強力な魔法は使えないけど、あんな感じで、ちょっとした魔法はたくさん習得しているの。その中に、テイマーの天敵と呼べる魔法があるわ」

「それはどんな?」

「『ディスペル』っていうヤツよ。対象にかけられている魔法を解除することができるの。今聞いた感じだと、モンスターテイマーって、魔力を使って魔物を使役しているんでしょ? なら、あたしの魔法で契約を解除して、元に戻すことができるわ。まあ、魔物だから味方になることはないだろうけど、それでも、盗賊に牙を剥くかもしれないし、いい感じになると思うんだけど」

「なるほど」


 そんな魔法があるのなら、確かに便利だ。

 リコリスが言うように、契約解除された魔物が暴れ回る可能性はあるけれど……


 でも、敵の味方が減るのはうれしい。

 敵も、突然コントロールが効かなくなって混乱するだろう。


「それ、本当に大丈夫ですか?」


 ソフィアが疑わしそうな視線をリコリスに向ける。


「なによ、あたしの力を疑うつもり? あたしは天下無敵の美少女超絶かわいい妖精よ」

「ですが、実際に契約解除を試したわけではないのでしょう? うまくいくかどうか、確実なことは言えないと思うのですが」

「大丈夫よ」

「その根拠は?」

「だって、あたしだもの!」


 ふふん、と胸を張るリコリス。

 対するソフィアは、コレはダメだ、というような顔をしていた。


「えっと……でも、効いても効かなくても、どっちでもいいんじゃないか?」

「フェイト、それはどういうことですか?」

「効いたら、僕らにとってうれしい展開だよね? 効かなかったとしても、僕らのやることは変わらない。敵が多いのは誤算だけど……でも、僕とソフィアならなんとかなると思うんだ」

「……そうですね。はい、私とフェイトなら、できないことなんてありません!」


 ソフィアは、どこか感動したような感じで僕の手を握る。

 柔らかくて温かい。


 そんな彼女の手を、僕も握り返して……


「あんたら、いつでもどこでもイチャイチャしてないと気が済まないの……?」


 ジト目のリコリスに、そんなことを言われてしまうのだった。




――――――――――




「ディスペル!」


 リコリスの魔法が発動した。

 光の波が洞窟内を駆け抜けて、番人として配置されていたキメラを飲み込む。


 無機質だったキメラの瞳の色が変わり……

 己の意思を取り戻す。


「ガァッ!!!」

「な、なんだ!?」

「コイツ、急に味方を……ぎゃあああああ!?」


 操られていた恨みを晴らすかのように、キメラは盗賊達に襲いかかった。

 悲鳴が上がり、盗賊達が次々とキメラの豪腕の前に倒れていく。


「神王竜剣術・壱之太刀……破山っ!!!」


 キメラは盗賊達を第一目標としているから、隙だらけだ。

 その背中に向けて、とびっきりの一撃を叩きつける。


 雪水晶の剣がキメラの巨大な体を断ち切る。

 大きな悲鳴を上げて……

 そして、そのまま倒れて、キメラは絶命した。


「よし」


 リコリスのおかげで、攻略はかなり順調だ。

 盗賊達が使役する魔物を解放して、その混乱に乗じて攻める。

 こちらは怪我一つすることなく、すでに半分近くを制圧することができた。


「ところで、フェイト」

「うん?」


 傷を負い、動けない盗賊達を捕縛しつつ、ソフィアが尋ねてくる。


「どうして、キメラをもう少しそのままにしておかなかったのですか? キメラに倒してもらった方が簡単だと思いますが」

「うーん……それはそうなんだけどね。この人達は盗賊で、たぶん、とてもひどいことをしてて……それでも、私刑みたいな真似はしたくないんだ。どうしようもない時は仕方ないと思うけど、今は、なんとかなるよね? きちんと捕まえて、きちんとした裁きを受けさせたい」

「なるほど、そのために、こうして捕まえているのですね」

「後で連絡して、大人数で運ばないといけないけどね。でも、できることなら無駄な殺しはしたくないんだ。って、僕にその度胸がないだけかもしれないけど」

「いいえ、そんなことはありません。フェイトのそれは、優しさですよ」

「そうかな?」

「はい、私が保証します。悪人に情けをかけることは、なかなかできることではありません。その優しさは、ずっとずっと持ち続けてほしいです」

「うん……ありがとう。ソフィアにそう言ってもらえると、僕はこれでいいんだ、っていう自信が湧いてくるよ」


 色々なことがあって、人間を憎みかけていた。

 でも、ソフィアを想うことで、僕は人の心を捨てずに済んだ。


 だから、これからも心を大事にしていきたいと思う。

 そうすることが、また、ソフィアのためになると信じて。


「ところで、ソフィア」

「はい?」

「リコリスは、どこへ行ったのかな?」

「そういえば……」


 キメラを解放した後、奥に飛んでいくのは見えたんだけど……

 でも、なぜか戻ってくる気配がない。

 どうしたのだろう?


 盗賊達の捕縛を終えた後、不思議に思いつつ、奥へ。

 そこで僕達が見たものは……


「あ、リコリス」

「……」

「どうしたの? ここは盗賊のアジトだから、一人で行動すると危ないよ?」

「……侵入者、コロス!」

「えっ!?」


 いきなりリコリスが襲いかかってきた。

 その目は正気じゃなくて……


「もしかして……逆にリコリスが操られた!?」

『面白かった』『続きが気になる』と思って頂けたなら、

ブックマークや☆評価をしていただけると、執筆の励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ