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54話 同盟締結

「とりあえず、協力してくれる、っていうことでいいのかな?」

「うん、いいよ」

「はい、問題ありません」


 ソフィアと揃って頷いた。


 冒険者組合が腐敗していることが、スタンピードを招いたというのなら……

 さすがに、放っておくことはできない。


 このままだと、どれだけの被害者が出るか。

 それを止められる機会があるというのなら、見て見ぬフリはしたくない。


 僕は大した力を持たないけれど……

 でも、やれることがあるというのなら、逃げず、全力で挑みたい。

 そうあるべきだと、小さい頃からずっと思い、そうあろうと願ってきたのだから。


「ありがとう……うん。本当に助かるよ」

「ちなみに……」


 ソフィアが鋭い視線を飛ばす。


「もしもあなたの言っていることがデタラメで、私達を利用しようとしたり、フェイトに害をなそうとしていたら……斬ります」


 ソフィアが恐ろしい殺気を放つ。

 対象が僕じゃないんだけど、それでも、震えてしまうほどに脅威的だ。


 そんな殺気を受けて、クリフは怯まない。

 むしろ、気を引き締めることができたという感じで、真面目な顔に。


「そんなことは考えていないさ。女神に誓うよ」

「……わかりました。今は信じましょう」


 ひとまず納得したらしく、ソフィアは殺気を収めた。


「それじゃあ、これからの話をしようか」

「冒険者組合の不正を正す、っていうことだけど、具体的にはどうするの?」

「んー……質問を返して悪いんだけど、スティアートくんは、組合のこと、どれくらい知っている?」

「えっと……」


 冒険者ギルドを運営する組織が、冒険者組合。

 細かいところまで数えると、関係者は星の数ほど。


 ただ、その頂点に立つ者を数えるのなら、四つに分類される。


 冒険者組合は、五人の幹部で運営されている。

 名前は忘れたけど……

 組合の頂点に君臨する五人の幹部がいて、彼らが冒険者組合の在り方、方針を決めているのだとか。


「っていうことは、さすがに知っているんだけど……細かいことはわからないかな」

「うんうん、いいね。それだけ知っていれば十分。話がスムーズに進むよ」

「そう?」

「五人の幹部は……まあ、全員の名前を挙げる必要はないかな。一人は、かなりの善人だ。聖女と呼ばれているほどで、彼女のおかげで、冒険者組合はギリギリのところで踏みとどまっている。二人は、ちょっと腐っているものの、まだ救いようがある。更生しようと思えば、なんとかできるかな。ただ、さっきのファルツと……そして、最後の一人が問題だ」

「ブラスバンド家の当主……強欲のドクトルですね?」

「強欲の……?」

「そんな二つ名がついている幹部がいるのですよ。金、金、金……全ての物事においてお金を優先して、お金のことしか考えることはない」

「だから、強欲……っていうわけなんだ」


 かなり困った人みたいだ。

 詳細はまだ聞いていないのだけど……

 でも、聞くまでもなく、色々と悪いことをしているのだろうなあ、ということが想像できる。


 そして、その想像は正しい。


「ドクトルは、冒険者組合の不正を象徴するような人でさ。かなーり、困った人なんだよねー。彼がいるせいで、どれだけの被害が出ていることか」

「その人が問題だとわかっているのなら、追放するなり弾劾するなり、なにかしら対処すればいいんじゃあ?」

「そうしたいところなんだけど、悪知恵が働く人でさ。なかなか尻尾を掴ませてくれないんだ。おかげで、今まで手を出すことができなくて、こんな状態。ほんと、困ったものだよねー」

「それで、僕達に協力を?」

「そういうこと」


 話は理解したのだけど……

 でも、どうして僕達なのだろうか?


 信頼できる人が限られている、というのはわかる。

 悪知恵が働く人なら、あちらこちらに部下を潜ませているだろうし……

 簡単に味方を増やすことはできないのだろう。


 でも、その問題点を差し引いても、他に協力者は見つかりそうな気がした。

 ソフィアはともかく……

 新人冒険者の僕に協力を求める理由はなんだろう?


 そんな僕の疑問を察したらしく、クリフは話を続ける。


「スティアートくんとアスカルトさんに頼みたいことは、ドクトルに気に入られ、彼の懐に招かれること。そして、悪事の証拠を掴んでほしい」

「なぜ、僕達が?」

「アスカルトさんは剣聖だから、知名度は抜群だ。もしも味方にできるのなら、これ以上、心強いことはない。だから、ドクトルは、一度、ダメ元で接触してくるだろうね」

「ソフィア狙い?」

「アスカルトさんだけじゃなくて、スティアートくんも勧誘されると思うよ」

「え?」

「なにしろスティアートくんは、SSランクの魔物を倒した、期待の新人だからね。アイゼンがそうしたように、キミを自分のところに招いて、良い手駒にしようと考えるはずさ」

「なるほど」


 納得の話だった。


 ソフィアは、強力な切り札として。

 そして僕は、使い勝手の良い手駒として。


 それぞれに利用価値を見出す、ということか。

 わかりやすい。


「だから、キミ達が適任なんだ」

「正直、フェイトをエサにするのは気が進まないのですが……」

「やれやれ、ソフィアは過保護ねぇ」


 こちらを見るソフィアに、僕はしっかりと頷いてみせる。


「心配してくれてありがとう。でも、僕はやろうと思う」

「危険なことになりますよ?」

「それは覚悟の上」

「冒険者だけではなくて、他にも仕事はたくさんありますよ?」

「ソフィアと一緒に冒険者をしたいんだ」

「えっと……」


 それ以上は思い浮かばない様子で、ソフィアが言葉に詰まる。

 そんな彼女を見て、リコリスが笑う。


「ソフィアの負けよ。フェイトが頑固っていうこと、あたし以上にわかってるんでしょ?」

「それは、まあ……」

「なら、背中を押して、支えてあげるのが良いパートナー、っていうものでしょ」

「……わかりました。これ以上、あれこれと言うのはやめておきます。ただ、いくつか確認しておきたいのですが……バックアップやサポートは、当然、あるのでしょうね?」

「もちろん。情報収集なんかは手伝うし、いざという時の救助班も編成済み。まあ、絶対に助けられるとか、安全を保証することはできないんだけど……そこはどうしようもないところだから、納得してくれるとうれしいかな」

「フェイト、最終的な判断は任せます」


 どんな道を選んでも、僕を支持して、一緒にいる。

 そんな彼女の強い意思を感じた。


 そのことをうれしく思い……

 そして、クリフを見る。


「改めて返事をすると……引き受けるよ。僕とソフィアでドクトルに近づいて、彼の悪事の証拠を手に入れてみせる」

「ありがとう。スティアートくんの勇気に、最大級の感謝を」


 僕とクリフは握手を交わして……

 そして、腐敗した冒険者ギルドを正すために戦うことを決意するのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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