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52話 陰謀の匂い

 その後、簡単な後始末をして……

 ギルドに戻り、ソフィアとリコリスとクリフの四人だけで話をする。


 なんでも、他の人には聞かせられない話があるらしい。


「これは、闇寄せの水晶と呼ばれている、厄介な呪いのアイテムなんだ」


 コツン、とクリフはテーブルの上に、僕が見つけた水晶球を置いた。


「魔物を引き寄せる効果があって、しかも、特定の魔物の力を増幅する作用まである」

「それじゃあ、今回のスタンピードは……」

「うん。間違いなく、コイツが原因だろうね」


 ソフィアから聞いたけど……


 魔物の数は五千じゃなくて、十倍の五万だったという。

 それに、僕が戦った女王も、なぜかSSランクに進化していたし……


 それらが全てこの呪いのアイテムの仕業だとしたら、納得だ。


「スティアートくんは、これをどこで?」

「女王がいたところの近くに、不審な男を見つけて……その男には逃げられちゃったんだけど、でも、コレを落としていったんだ」

「ふふんっ、あの時、あたしが酔ったフリをしてフェイトを留めたおかげね! つまり、あたしの手柄! さすがリコリスちゃん、かわいいだけじゃなくて賢い!」


 酔いから回復したリコリスは、いつも通りに元気だった。


 パチコーン、とソフィアがリコリスをデコピンしつつ、話を続ける。


「つまり……今回のスタンピードは、人為的に引き起こされた?」

「ちょっと怪しいなー、とは思っていたんだけどね。でも、スティアートくんが、決定的な証拠と証言を手に入れてくれた。ほぼほぼ、その見解で間違いないと思うよ」

「そんなことをする人がいるなんて……」


 許せない。

 今回は、なんとか防ぐことができたけど……

 もしかしたら、失敗していたかもしれない。


 その時は、とんでもない犠牲と被害が出ていただろう。


「犯人がなにを考えているのか、なにを目的としているのか。それはわからないけど……でも、こんなことは絶対に許せない。許したらいけないことだ」

「はい、その通りですね。絶対に見逃してはいけません」

「でもさー、人為的なものだとしたら、なんでそんなことをするわけ? ま、人間って同じ種族同士で殺し合いをしたりするバカっていうのは知ってるけど、それにしても、行き過ぎじゃない?」


 たまに、リコリスって辛辣になるよね。


「確かに、そこは不思議なところだよね……こんなことをして、犯人になんの得があるんだろう?」

「んー……得というか、プライドを満たすため、っていう感じじゃないかな?」

「クリフは、なにか心当たりが?」

「ものすごく」


 そう言うクリフは、とても苦い顔をしていた。

 なんだろう?


「あー……実は」


 クリフがなにか言いかけた時、客間の扉が開いた。


「邪魔するぞ」


 姿を見せたのは、横と奥に広い中年の男だ。

 華やかな衣服と装飾品で身を飾っているものの、そこに品というものはない。

 ただただ見栄を感じさせるだけのコーディネートで、服だけでその人の性格がわかるようだ。


 突然現れた男を見て、クリフは嫌味たっぷりの笑みを浮かべる。


「おや、これはギルド幹部のファルツさんじゃないか。こんな田舎町に足を運ぶなんて珍しいね。ダイエットでもするつもりになったのかい?」

「ちっ、相変わらず目上に対して敬意を払わない、失礼なヤツだ」

「やだなー。僕を礼儀知らずみたいに言わないでよ。相手によって、態度を変えているだけだからね?」

「このっ……!」


 ファルツという男はクリフを睨みつけるものの、彼は飄々としたままだ。

 力も権力も怖くない、とアピールしているかのように見える。


「それで、どうしたの? なにか用かな?」

「……ふんっ。用というほどのものはない。ただ、スタンピードが起きたらしいな? それで、被害状況を確認しにきたのだが……」


 ファルツは、ちらりとソフィアを見る。


「……どうやら、そこの剣聖のおかげで大したことはないようだな」

「そうだね。スティアートさんがいてくれて、本当に助かったよ。あと……まあ、こっちはいいや」

「なんだ?」

「なんでも。それよりも、不思議だと思わない? いきなりスタンピードが発生して、しかも、規模は予想していたヤツの十倍。おかしいよねえ」

「ほう、それは初耳だな」

「本当に初耳?」

「それはどういう意味だ?」

「……いーや、なんでもないさ。気にしないで」

「ふんっ、本当にいけ好かないヤツだ……貴様のような異端児、すぐに排除してくれる」


 ドスドスと足音を響かせつつ、ファルツが客間を後にした。

 バタン! と乱暴に扉が閉められる。


「なによ、あの偉そうな人間は? このかわいいリコリスちゃんに挨拶の一つもないなんて、失礼しちゃうわね」

「一応、私のことは認識していたみたいですが……それでも、挨拶をすることはありませんでしたね」

「それどころか、邪魔者扱いしていたような……? ねえ、クリフ。今のは?」

「ファルツ・ルッツベイン。冒険者ギルドの幹部の一人で、おそらく……今回のスタンピードを引き起こした犯人だよ」

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さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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