517話 家族会議
……あれから、3日。
僕達は聖域に留まり、今後のことを話し合っていた。
まずは、僕とソフィアとレナの三人で。
話し合いを重ねて、重ねて、重ねて……
やっぱり、スノウとマシュマロは聖域に返した方がいい、という結論に至る。
別れは寂しい。
ずっと一緒にいたいと思う。
でも……
それ以上に命が大事だ。
外に出たら、悪人に狙われる可能性が高い。
酷いことになってしまうかもしれない。
だから、聖域で保護してもらうのが一番。
そんな結論に至る。
そんな話をアイシャとリコリスにして……
「まー、そうなるわよね。あたしは、仕方ないと思うけど……」
「やーーーっ!!!」
リコリスは納得してくれたものの、アイシャは大反対。
スノウとマシュマロを連れて、どこかに行ってしまった。
「あぁ……アイシャちゃんが、アイシャちゃんが……」
「ソフィア、落ち着いて。たぶん、そんなに遠くに行っていないと思うし、ここは聖域だから危険はないよ」
意気消沈するソフィアをレナに任せて、僕は、一人でアイシャ達を探しに出た。
――――――――――
「……いた」
歩いて30分ほどのところにある、湖の畔にアイシャの姿があった。
すぐ近くで、スノウとマシュマロがじゃれあって遊んでいる。
でも、アイシャは一緒に遊ばず、ぼーっと湖を眺めていた。
そっと彼女の隣に座る。
「……」
「……」
言葉はない。
ただ、のんびりとした時間を過ごす。
「……おとーさん……」
ややあって、アイシャがひしっと抱きついてきた。
少し震えていた。
ちょっと迷ってから、彼女の頭を優しく撫でる。
「本当はわかっているんだよね?」
「……ん」
アイシャは子供だけど、でも、賢い子だ。
スノウとマシュマロのこと、どうするのが一番か?
すでに答えは出ている、そこに辿り着いている。
でも、答えに気づいたからといって、簡単に納得できるものじゃない。
アイシャが子供ということは、あまり関係ない。
僕達でも、納得できないものは納得できなくて……
心の整理を簡単につけることはできない。
下手をしたら、ずっとできない時がある。
だから……
「わたし……わがまま?」
「ううん、そんなことはないよ。僕も別れたくないって思うし」
「なら……」
「でも……このままはいけない、とも思うんだ」
誰かがアイシャの話を聞いてあげる。
そして、背中をそっと押してあげる。
そうしてあげることが大事だ。
「アイシャは……もしも、アイシャが生まれた村に戻れるとしたら、どうしたい?」
「それは……」
「ごめんね、意地悪なことを聞いて。ただ、考えてほしくて……スノウとマシュマロは、戻ることができるんだ」
それが、なにより重要視されなくてはいけない事実であり、真実でもあった。