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516話 あるべき場所

「……聖獣王……」


 聖獣のさらに上位にいる存在。

 聖域の守り手。


 なるほど、納得だ。

 そのような存在でなければ、この威圧感はないだろう。


「僕は、フェイト・スティアートといいます」

「ソフィア・アスカルトです」

「レナ・サマーフィールドだよ」


 それぞれ自己紹介をして、それから、少し離れたところにいるリコリス達を見る。


「彼女達は……」


 リコリス達の紹介も代わりにした。


「ふむ。妖精に巫女……そして、聖獣か。面白い組み合わせだな」


 アイシャが巫女ということ、わかるのだろうか?


 って……

 それもそうか。

 聖域を統べる者なら、それくらいの力は当然のようにあるだろう。


 力というか、観察眼かな?


「さて……では、本題に入るとしよう。人間であるお前達は、なぜ、聖域に? 邪な人間でないことは理解しているが、しかし、警戒はしなければならない。その目的を教えてもらおうか」

「はい、実は……」


 マシュマロを保護したこと。

 本来、いるべき場所に返した方がいいかもしれないと、聖域を探していたこと。


 ついでに……

 アイシャとスノウや、魔獣についての話などもした。


「なんと……お前達が、あの魔獣を倒したというのか」


 聖獣王がひどく驚いていた。


「あ、いえ。倒したというか、最後は、アイシャが説得してくれたというか……」

「フェイトって、こういう時、謙虚になっちゃうよねー。もっと、どっしり構えてもいいのに」

「そうですよ。確かに、最後はアイシャちゃんがジャガーノートを鎮めてくれましたけど、でも、それを成し遂げるにはフェイトの働きがあってこそ、なんですから」

「あはは……」


 そう言われると、ちょっと……いや。

 かなり、くすぐったい感じだ。


「ふむ……話は理解した。そなた達がマシュマロと呼ぶ聖獣を、ここで保護することに、なんら問題はない」

「それじゃあ……」

「ただ、本人がそれを望むだろうか?」

「……ぁ……」


 振り返る。


 アイシャとリコリスは、話の邪魔にならないように少し離れたところで待っていた。

 スノウとマシュマロも一緒で、四人で仲良く楽しそうに遊んでいる。


 保護してもらうとなると、当然、お別れだ。

 場合によっては、マシュマロよりもずっと長い間一緒にいた、スノウともお別れだ。


 アイシャは泣くと思う。

 僕も泣いてしまうかもしれない。


 でも、寂しい現実だけど、世界に悪意は多い。

 スノウとマシュマロを狙う者がいる。

 アイシャも狙われるかもしれない。


 アイシャだけなら、僕とソフィアで守ることができる。

 でも、そこにスノウとマシュマロも加わると、守り切ることができるのか……


 安全をとるべきなのか?

 それとも、絆を選ぶべきなのか?

 すぐに答えを返すことができない。


「しばらくここに滞在するといい。そして、話し合い、後悔のない選択をすることだ」

「……はい、わかりました。ありがとうございます」

「また、少ししたら来る」


 そう言い残して、聖獣王は空の彼方に飛び去った。


「フェイト……大丈夫ですか?」

「うん、問題ないよ。これからのこと……きちんと考えないとね」

「でもさー」


 レナが当たり前のように言う。


「結論は、もう出ているんじゃない?」

「え?」

「わんことにゃんこのことを考えるなら、聖域で保護してもらった方がいいでしょ」

「それは……」

「ボクが言うのもなんだけど、深淵だけじゃなくて、黎明の同盟のような連中もまだまだいるかもだし。そんな連中からしたら、聖獣は格好の獲物。本格的に狙われないうちに、あるべきところに返すべきだと思うよ」

「そう……だね」


 それが正しい答えだ。

 でも、心が簡単に納得できるかというと、そうでもなくて……


「……そうなんだよね」


 僕は空を見上げて、ため息をこぼすのだった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] さて、ここがまたフェイト達の考える所になりそうですね。 フェイト達はどうするのか? こういうとき、レインやアルトも思うところは同じなんだろうなあ。
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