514話 たくさんの仲間たち
可愛い鳴き声をこぼしつつ、うさぎが顔を出した。
ただ……
ちゃんと見ると、うさぎ……なのかな?
基本、姿形はうさぎなんだけど、耳がとても大きくて長い。
毛先は淡いスカイブルー。
こんなうさぎ、見たことがない。
「クルルルッ」
今度は鳥がやってきた。
一見すると、どこにでもいるような鳩なのだけど……
尾が長く伸びていて、孔雀のように綺麗な飾りがついていた。
他にも、時間が経つにつれて見たことのない動物達が次々と姿を見せて……
「わぁ……♪」
「これ、すごいわね……」
僕達は、たくさんの動物達に囲まれていた。
かといって、動物達に敵意があるわけじゃない。
みんな、一定の距離を保っているものの、興味深そうにこちらを見ている。
スノウとマシュマロのおかげかな?
二人がいてくれたから、ここの動物達もある程度、警戒心を解いてくれたのだろう。
「やっぱり、ここが聖域なのかな?」
楽園のような場所。
そして、そこに住む不思議な動物達。
たぶん、正解で間違いないはず。
「みんなはどう思う?」
「ふわぁ……もふもふです。こんなに、もふもふがたくさんです♪」
「やばい、めっちゃやばいわ……美少女妖精とあろうものが、くっ……こんな風にたぶらかされちゃうなんて!」
「いいねぇ、いいねぇ♪ 抱きしめたい、なでなでしたい……ほーらほらほら、おいでー?」
……みんな、動物達の魅力にすっかりやられてしまっていた。
「……」
そんな中、アイシャだけ違う様子を見せていた。
どこか不思議そうな顔をして。
どこか懐かしそうな顔をして。
動物達のことを、じーっと見つめている。
「アイシャ?」
「……」
「どうしたの、アイシャ」
「……ぁ……」
ニ度、問いかけると、こちらに気づいた様子でアイシャが振り返る。
「……おとーさん……」
「気分でも悪い? 大丈夫?」
「ううん、だいじょーぶ。ただ……」
アイシャは、再び動物達を見る。
「この子たちに……呼ばれているような、気がして」
「呼ばれている?」
動物達は一定の距離を保ったまま。
時折、鳴き声を発している。
ただ……
よくよく聞いてみると、その鳴き声は一定の法則性があるような気がした。
一定の間隔で鳴いて……
そして、その鳴き声はアイシャに向けられているような気がする。
僕にわかるのは、それくらい。
でも、『巫女』であるアイシャなら、もっと大きな情報を得ているのかもしれない。
「他に、なにか感じるものはある?」
アイシャが鍵と思い、感じているもの思っていることを教えてもらうことに。
「えっと……」
アイシャが考える仕草をとる。
彼女自身、ハッキリとした感覚は得られないのだろう。
ちょっともどかしそうにしつつ、がんばって言葉を紡ぐ。
「ようこそ……って、喜んでくれている、のかな?」
「歓迎されている、って考えてもよさそうだね」
「あと……こっちに来て、って」
誘われている……か。
ここは聖域のようだけど、しかし、まだ確定したわけじゃない。
もしかしたら、真逆のとんでもない場所かもしれない。
でも、アイシャと動物達を信じることにした。
「行ってみよう」




