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503話 雪の中で

「うわ……すごいな、これ」


 防寒具を身に着けて。

 馬車の温度を確保するために、幌を二重にして。

 馬も温かな毛皮を着せて。


 万全の準備をしたけど、それでもまだ、足りないほどの吹雪に襲われた。

 視界が雪に覆われて、数メートル先でさえ見えないほどだ。


「フェイト、無理に進むのは止めましょう。これ以上は危険です」

「うん、そうだね」


 平地を見つけて、そこに馬車を止めた。


 馬車の幌を横に伸ばして、そこに馬の休憩所を作る。

 こういう事態を想定して作っておいたんだけど……本当、作っておいてよかった。

 でないと、馬が凍死するところだった。


「リコリス、周囲の雪を壁のように積み重ねることはできますか?」

「え、なんで? 雪遊び?」

「違います。風を防ぐためですよ……まったく、少しは勉強してください」

「し、知ってるしー? それくらい常識だしー? 賢い美少女探偵リコリスちゃんが知らないわけないしー?」

「おー、たんてー!」

「ワフッ!」

「ニャンッ!」

「あっ、こら!? 毛玉達、あたしは餌じゃ……あああああぁ!?」


 遊んでほしいとばかりに、スノウとマシュマロがリコリスにじゃれついた。

 体格差もあり、リコリスは抵抗できず、されるがままだ。


「はいはい、遊ぶのは後にしようねー」


 レナがリコリスを拾い上げて、救出する。


「ふぅ、助かったわ……まいったわね。このリコリスちゃんの魅力は、種族を超えて通じるみたい。あたし、罪な女……」

「せいっ」

「ぎゃあああああ!?」

「ワフッ!」

「ニャン!」


 イラッと来たらしく、レナは、スノウとマシュマロの前にリコリスを放り投げた。

 再びニ匹のおもちゃにされてしまう。


「……リコリスは頼りにできないかな」

「ですね……仕方ありません。私達でなんとかしましょう。レナ、馬車の車輪を固定しておいてください」

「おっけー」

「私達は、近くの雪塊を切り、それでブロックを積み重ねていきましょう」

「うん、了解」


 剣を取り、ソフィアと一緒に馬車を降りた。

 途端に猛吹雪が押し寄せてくる。


 これ、さっきよりも酷くなっているな。

 早いところ対策をしないと、凍え死んでしまうかもしれない。


「はぁっ!」

「せいっ!」


 ソフィアと一緒に雪塊を切り……

 ブロック状にして、それを馬車の周囲に積み上げていく。


 ……1時間ほどでけっこうな高さの壁を作ることができた。


「これなら大丈夫かな?」

「そうですね。馬車に戻りましょう」


 そろそろ手がかじかんできた。

 慌てて馬車に戻り、温かいスープを飲んで温まる。


「ふぅ……酷い目に遭った」

「フェイト、大丈夫ですか? 凍傷になっていませんか?」

「大丈夫だよ。ソフィアは?」

「私も問題ありません。しかし……」


 ソフィアは馬車の外をちらりと見る。


「本当に酷い吹雪ですね……これ、しばらく足止めを食らうかもしれません」

「足止めって、どれくらいかなー? ボク、じっとしているのは退屈なんだよねー」

「ふふん、おこちゃまね。あたしは、おとなしくしているのなんて簡単よ。なにせ、大人の美少女レディだもの」


 その台詞、矛盾しているからね?


「山の天候は変わりやすいって聞くけど、実際に体験すると、想像以上だね」

「甘く見てはいけませんね。無理をせず、吹雪が収まるのを待ちましょう」

「おかーさん、おとーさん。お馬さん、大丈夫……?」

「ええ、大丈夫ですよ。一緒に幌の中にいますし、さきほど、リコリスに暖を取る魔法も使ってもらいましたからね」

「よかった」


 アイシャの懸念はもっともだ。

 でも、ソフィアが言ったように、数日なら問題ないと思う。


 食料も水も燃料も、まだまだたくさんある。

 しばらく吹雪が続いても大きな影響はないけど……


「……なんか嫌な予感がするな」


 そんな僕の予感はあたってしまうのだった。

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さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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