502話 いざ出発!
「こちらが、依頼の品になります」
数日後。
フェンドリックさんから、登山道具を一式、渡された。
分厚いブーツに防寒具。
ピッケルにロープにゴーグルに……色々とたくさん。
「それと、こちらが山脈の地図と情報になります」
「これは……」
すごい。
かなり詳細な部分まで書き込まれている地図だ。
これは助かる。
「ありがとうございます。これ、調べるの大変だったですよね……?」
「なに、お気になさらず。その分、いただくものはいただいていますからな」
先日、ソフィアとリコリスはフェンドリックさんのところへ。
色々と話をして、色々な情報を交換したみたいだ。
フェンドリックさんは求めるものを手に入れられた様子で……
お菓子とジュースで接待されたらしく、わりと満足した様子だった。
「それと、これはおまけです」
水と食料。
テントなどの道具ももらうことができた。
「え、いいんですか?」
「ええ、今後ともよろしく、という意味を込めて」
「ありがとうございます」
素直に好意に甘えることにした。
そうして準備は終わり……
『果て』に向けて出発する日に。
「みんな、準備はいい?」
「はい、大丈夫ですよ」
「魔物が出たら、ボクに任せて。叩き斬るから」
「あたし、昼寝してていい?」
「おとーさんとおかーさんのお手伝い、する」
「わふっ」
「にゃん!」
みんなの良い返事。
気合は十分だ。
「どうか、お気をつけてください」
「はい。またお世話になるつもりなので、必ず帰ってきます」
「それはそれは。ぜひ、お待ちしていますぞ」
フェンドリックさんと握手を交わした。
「それじゃあ、いってきます」
「どうぞ、いってらっしゃい」
フェンドリックさんに見送られる中、馬車を出発させた。
――――――――――
「おー……なんか、ひやひやする」
御者台の隣に座るアイシャがぶるりと震えた。
街を出発して、さらに数日。
幸いというべきか、山脈は標高が高いものの、馬車が進めるようななだらかな形状になっていた。
その分、とても広いのだけど……
馬車で旅を続けられるというのは大きな利点だ。
ゆっくりと山を登り……
そろそろ、それなりの高さに。
合わせて気温が低くなり、冬のような感覚を得る。
「ちょっと、今日はここで止めようか」
ちょうどいい広場を見つけたので、そこに馬車を止めた。
「なになに? どうしたの?」
「ここから先はどんどん寒くなると思うから、ここで、しっかりと防寒具を着ておこう。合わせて対策も」
「そだねー。ボクも、ちょっと寒いかも」
「あたしは平気よ!」
「なんとかは風邪引かないと言いますからね」
「その通りよ!」
そこ、誇るところじゃないからね?




