501話 その時が来たら?
無事、フェンドリックさんとの交渉が終わり……
情報と登山道具が集まるまで、再び待機となった。
「すぅ……すぅ……」
「おふぅ……」
「にゃー……」
アイシャ、スノウ、マシュマロの三人は、折り重なるようにして寝ていた。
種族は似ているようでまったく違うのだけど……
こうしているところを見ると、兄弟みたいだ。
微笑ましい。
自然と笑顔になってしまう。
「ところでさ」
レナが、ふと思い返したように言う。
「聖域を見つけたとして」
「うん」
「その後、どうするの?」
「え」
最初、レナの言っていることが理解できなかった。
でも、それは、よくよく考えるとしっかりと向き合わないといけないことで……
「聖域って、聖獣が本来いるべき場所なんだよね? なら……」
「……スノウとマシュマロは、そこで暮らすべき?」
「そうなると……お別れになってしまう?」
なんともいえない空気が流れた。
こんなにも大事なことなのに……
今の今まで、まったく考えていなかった。
僕は、保護者失格かもしれない。
「でもさ、別に聖域で暮らさないとダメ、っていうルールはないんでしょ?」
リコリスが気楽な感じで言う。
「スノウとマシュマロも、あたし達と別れたくない、って思うんじゃない? とりあえず聖域は見つけるとして、そこから先、無理に離れる必要はないでしょ」
「そう言われるとそうなのかな?」
「……ううん、そうならないかも」
あまり否定的なことを言いたくない。
でも、楽観的に構えるわけにもいかない。
「どういうことですか?」
「聖獣は、聖域にいなければいけない理由があるとしたら?」
「どういうこと?」
「例えだけど、聖域でないと生きられないようになっている、とか」
聖域は、特別なエネルギーで満たされていて。
それが聖獣の生きる糧となっている……とか?
そんな特殊な条件があるとしたら?
「その場合、本人達が望んでいなかったとしても、別れないといけないかも……」
「そんなこと……」
ソフィアが難しい顔に。
たぶん、僕も似たような顔になっていると思う。
僕達は、聖獣についてあまりにも知らなすぎる。
伝承を知るだけで、正確な生態などは不明だ。
ついでに言うと、聖域のこともわからない。
こちらも伝承のみ。
聖獣のことを知るために目指しているものの、なにが待ち受けているか……
「……とりあえず、さ」
話をまとめるようにレナが言う。
「なにがあってもいいように、覚悟はしておいた方がいいんじゃないかな?」
「そう……ですね」
ソフィアは、すやすやと眠る三人に目をやる。
そっと、スノウとマシュマロに触れた。
「場合によっては……別れないといけないんですね」
「うん……そうだね。レナが言う通り、覚悟はしておかないと」
聖域に到着してハッピーエンド、とはならないかもしれない。
苦みのあるビターエンドかもしれない。
それでも。
「前に進まないとね」
どんな結末が待っていたとしても。
ここで立ち止まるわけにはいかない。
逃げるわけにはいかない。
みんなと一緒に前に歩いていこう。




