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500話 それくらいなら安いもの

「ふむ……山脈に関する情報と、登山道具ですか」


 すぐにフェンドリックさんに会いに行き……

 そして、こちらが欲するものに関しての話をした。


 商売の話ということで、快く応じてくれたものの、金額がどうなるか、そこは不明だ。

 できるだけ安く済めばいいんだけど……


「登山道具は、まあ、少し待っていただければなんとかなりますね」

「本当ですか!?」

「ええ。全ての方の要望に応えることこそが商人ですからね」


 フェンドリックさんがとても頼もしく見えた。


「ただ、ほとんど需要のない商品なので、どの荷馬車にしまっていたか思い出せず……少々、お待ちいただけますか? 明日には見つけて、点検をしておきますので」

「はい、問題ありません」

「ねえねえ、おっちゃん。山脈の情報は?」

「こら、リコリス! 失礼ですよ!」

「えー、おっちゃんをおっちゃんと言ってなにが悪いのさ? ねえ、おっちゃん」

「はっはっは、その通りですな。私はおじさんですから、まさにその通り。ソフィア殿も、どうか気になさらず」

「えっと……すみません」


 ソフィアは申しわけなさそうに頭を下げて、


「……後で覚えておいてくださいね?」


 ぼそりと、呟いた。


 怖い怖い。

 リコリス、生きていられるかな……?


「山脈に関する情報ですが、残念ながら、こちらは持っておりません」

「そうですか……」

「ただ、情報を手に入れることは可能です。この街の人に聞き込みをしつつ、商会の者を現地に派遣することで、完璧とまではいかないものの、ある程度の情報は得られるでしょう」

「本当ですか!?」

「ただ……かなりお高くなってしまいます」

「うぇ!?」


 フェンドリックさんが提示した額は、僕らの予想の遥か上だ。


「こ、こんなに……」

「ちょっと、ぼったくりじゃない? ボクらのこと、騙してない?」

「そのようなことは決して。ただ、現実に商会の者を派遣するとなると、それなりの危険が伴いますので……どうしても、この値段に」

「危険料込み、っていうわけか。うーん……それなら仕方ないか」


 レナがそう納得した。

 僕も、それなら仕方ないと思う。


「とはいえ……フェイト殿達には助けていただいた恩があります。それはまだ、全て返しきれたとは思っておりません」

「え? それじゃあ……」

「半額にいたしましょう」

「半額か……」


 それでもかなりの大金だ。

 物資を買う余裕がなくなってしまう。


「あるいは……」


 フェンドリックさんは、ちらりとリコリスを見た。


「そこの彼女を、1日、貸していただけないでしょうか?」

「へ? あたし?」

「長く商人をやっておりますが、妖精と出会うのは初めてでして……ぜひ、色々なお話を聞きたいところです。それと、妖精だけが知る情報も。それを対価とする、ということも可能ですが、いかがでしょう?」

「ちょっとちょっと。そんなこと言って、可愛いリコリスちゃんに変なことをしようって企んでいるんじゃない? フェイト、こんな話受けちゃダメよ」

「わかりました。では、それで」

「フェイト!?」


 リコリスは、えぇ!? という感じでこちらを見た。


「大丈夫。フェンドリックさんは、そんな悪いことをするような人じゃないから」

「いやいやいや、そんなあっさりと信じて……ソフィアとレナもなんとか言ってよ!?」

「うちのリコリスでよければ、いくらでも」

「1日だけじゃなくて、1年貸そうか?」

「あんた達まで!?」


 二人にも裏切られて、リコリスは、ガーン! という感じで、へなへなとテーブルの上に落ちた。


 ……ちょっと意地悪が過ぎたかな?


「大丈夫、リコリスを売るようなことはしないから」

「じゃあ……!」

「フェンドリックさん、ソフィアも一緒でもいいですか?」

「微妙に売ってるじゃん!」


 フェンドリックさんは、酷いことをするような人じゃないと思うし……

 それに、見張りとしてソフィアが一緒なら、なにも心配はいらない。


「リコリス、お願い。他に方法がないんだ」

「むー、だからって、なんであたしが……」

「今度、いっぱいのドーナツを買ってあげるから」

「任せておきなさい! こういう時、パーティーのために体を張るのが真のヒロインなのよ!」


 実にわかりやすい子だった。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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