499話 目的地はどこ?
「「「うーーーん」」」
僕、ソフィア、レナ……三人でフェンドリックさんからもらった地図を見る。
このどこかに『聖域』に繋がる道があるはずだ。
でも、『世界の果て』は広く、未踏破の場所が多い。
目的地を定めないで歩き回れば、たちまち物資を失い、干からびてしまうだろう。
きちんと目的地を決めてから出発したいけど……
「聖域の入り口って……どこにあるんだろう?」
「レナは、なにか知りませんか?」
「ボクに振られても困るよ。黎明の同盟にいた頃も、聖域の話なんて聞いたことないし。それらしい話も、確か、なかったかな?」
「では……」
「あたしも知らないわ! ふふんっ」
「なぜドヤ顔なんですか……はぁ」
話が先に進まない。
「んー……」
「オフッ」
「にゃぅ」
ふと、アイシャとスノウとマシュマロが地図を覗き込む。
興味があるのかな?
地図なんて見るの、これが初めてかもしれないから……いや、ちょっと待て?
三人共、視線が同じところを向いているような……
「ねえ、アイシャ」
「なに、おとーさん?」
「どこを見ているのか、ちょっと指をさしてくれるかな?」
「うん。ここ」
アイシャは、地図の一点を指さした。
それに合わせるかのように、スノウとマシュマロも前足を伸ばす。
三人、共に同じ場所を示す。
「これは……」
「どうして、そこを指したんですか?」
「なんとなく?」
アイシャ自身、よくわかっていないみたいだ。
でも……
アイシャは巫女で。
スノウとマシュマロは聖獣で。
その三人が同じ場所を注目するなんて偶然、あるだろうか?
「もしかして……」
「そう、ここが聖域の入り口よ!」
あ……
僕の台詞、リコリスに取られた……
「なんかこう、あれよ! 巫女とか聖獣にしか感じられない、なんやかんやで、場所を特定しているのよ! そんな感じ!」
「ものすごーく曖昧だね」
「とはいえ、リコリスの言うことも間違っていないかと。私も、同じ考えです。フェイトはどうですか?」
「うん。僕も、そう言おうとしていたところ」
地図を確認すると、横に伸びる山脈の中央辺りだ。
「なんか、えぐい場所にあるわねー……リコリスちゃん、美少女だから山登りとか苦手なんだけど」
「ボクは山登りは好きだなー。一つ一つの山を征服する度に、なんかこう、ゾクゾクするんだよね」
「そういう微妙に危ない発言はやめてください。教育に悪いです」
「そういう発想をする方が危ないんじゃないかなー?」
「なんですって?」
「なにさ?」
バチバチと火花を散らすソフィアとレナ。
うん。
今は大事なところだから、ケンカは止めようね?
「しっかりと準備をするのはもちろん、この山脈に関する情報と……あと、登山に必要な道具を手に入れないとね」
「そんなものあるの?」
「……ないかも」
この街の人は、あくまでも商人に向けた商売をしているだけで……
山を登る人なんていないから、そんな道具を扱っていることはないだろう。
いや、待てよ?
「フェンドリックさんなら、情報も道具も持っているかも」
「ですね。彼のような一流の商人なら、きっと応えてくれるかと」
「でもさー、それって高そうじゃない? また払える?」
「「「……」」」
沈黙。
剣術大会で得た賞金はだいぶ減っていた。
フェンドリックさんに払った、ここの街と果てに関する情報量。
それと、水や食料などの物資を買うお金を考えると、厳しいかも……
「……とりあえず、話をしてみよう」




