496話 名探偵リコリスちゃん
あたしの名前は、リコリス。
超絶スーパーウルトラミラクル可愛い、美少女妖精よ。
今は、人間のフェイトのパーティーに参加して、世界を旅しているの。
どうしても、って言われて断れなくて。
人気者は辛いわ。
今、目指しているのは『世界の果て』と呼ばれている、大陸の最南端。
その前に色々と補充をしないといけないから、南の街を目指しているわ。
そこで、あたし達を待ち受けているものは?
「ふふふ……名探偵リコリスちゃんが、その謎を解き明かしてみせるわ!」
「ほら、リコリス。よくわからないことを言っていないで、洗濯を手伝ってください」
「……いや、まあ。あたしだけ楽をするつもりはないけどさ。リコリスちゃんを都合よく使いすぎじゃない? あたし、可憐な妖精よ?」
「妖精だろうとなんだろうと、働かざるもの食うべからず、ですよ。ほら。早く魔法で水を出してください」
「はいはい、わかりましたよー」
シリアスに決めてみたけど、ソフィアがそれをぶち壊してしまう。
まったく、空気が読めないんだから。
そんなだから、レナにフェイトを取られそうになるのよ。
「リコリス……今、なにか言いました?」
「イイエ、ナニモ」
ソフィアってば、フェイトのことになるとマジのマジになるから怖いわ……
気をつけないと。
それから洗濯をして、あたしは近くを散歩することにした。
「ワンッ!」
「あら? ワンコロも散歩に行く?」
「オフゥ」
「よし、レッツゴー!」
あたしはスノウの頭の上に乗り、指示を出した。
瞬間……
「ぴゃあああああ!?」
ものすごい勢いでスノウが走り出して、思わず悲鳴を上げてしまう。
ちょっと待ちなさい。
落ち着いて?
あたしはミニマムサイズだから、本気で走られるとやばいの。
振り落とされて、そのままどこかに飛んでいっちゃいそう。
でも、あたしは慌てない。
名探偵はいつも落ち着いていて、冷静なのよ。
そう。
あたしはこの困難も乗り越えて……
「ぴゃあああああっ!?」
無理。
振り落とされて、吹き飛ばされてしまう。
くるくると回転して空を舞い……
「にゃん!」
猫が飛んできて、あたしをキャッチした。
「ナイスよ、にゃん吉!」
「……にゃん」
「なんでぇーーー!?」
不服そうにあたしを、ぽいっと捨てた。
なんで!?
にゃん吉っていうあだ名、気に入らなかったの!?
あたしは羽を動かして、どうにかこうにか空中で静止した。
「ちょっと、にゃん吉! スーパーアドバイザーのリコリスちゃんがつけたあだ名が気に入らないっていうの!? よーし、その挑戦、受けて立つわ。かかってきなさい! あたしの素敵なあだ名を実力であんたに納得させてにゃあああああっ!?」
ぱくりと咥えられて。
そのまま、ぽいっと投げられた。
「……ふっ、なかなかやるみたいね。それでこそ、あたしのライバルだわ」
「にゃん」
「でも、これで終わりと思わないことね。あたしは、まだ、本気を出していないわ。そう……あたしは、あと、ニ回変身できる!」
「うにゃー……!」
「いくわよっ」
――――――――――
「おとーさん、おかーさん。リコリスとマシュマロ、仲いいね」
「いい……のかなあ?」
「いいんじゃないですか? ふふ」
猫と本気でケンカをするリコリスを眺めつつ、旅は続いていく。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新連載です。
『おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~』
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