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493話 思わぬ収穫と出会い

「ふむ」


 フェンドリックは顎髭を指先で撫でつつ、考えをまとめる。


 剣術大会の優勝者、フェイト・スティアート。

 彼がいるということは、剣聖ソフィア・アスカルトも一緒なのだろう。

 それと、正体不明の凄腕の剣士、レナ・サマーフィールドも。


 プラスで獣人の少女や犬などを飼っているらしいが……

 そちらの細かい情報までは、さすがに持ち合わせていない。


 ただ、剣聖と一緒にいることを考えると、実はとんでもない価値を秘めているのかもしれない。


 彼らの情報は金に匹敵するかもしれない。

 商人として、普通なら調べるのだけど……


「……やめておきましょう」


 苦笑しつつ、フェンドリックは首を横に振る。


 フェイトは、フェンドリックのことを信用してくれた。

 商人としてではなくて、一人の人間として。


 その信頼を裏切れるほど、フェンドリックは心を捨てていないつもりだ。


 それに、ここで信頼を得る方が、今度、色々と美味しいことになる。

 そんな商人としての直感も信じることにした。


「やあやあ」

「おや? あなたは……」


 後ろから馬車が追いついてきて、そこら小柄な少女が降りてきた。

 笑顔がよく似合う、なんとなく猫を連想させる少女だ。


 彼女が剣聖だろうか?


 いや。

 フェンドリックは、ちらりと馬車の御者台を見た。

 そこに座る銀髪の女性……彼女こそが剣聖だろう。

 なにも言わなくても、その風格と、実力者だけが持つオーラでわかる。


「あなたは……もしかして、レナ・サマーフィールドさんですか?」

「あれ? ボクのこと、知っているの?」

「先の剣術大会で、大活躍をされていましたからな」

「ふっふっふー、そう! ボクも大活躍していたんだよね。それをわかっているなんて、キミ、やるねー」


 レナは機嫌よさそうに笑う。

 褒められて悪い気をする者は、そうそういない。


「どうかされましたか?」

「ひとまず、一緒に行動をすることになったんだよね? だから、ボクが一緒に……近くにいた方がいいかなー、って」

「はて?」


 レナの言うことが理解できず、フェンドリックは首を傾げた。


 商人は足元を見られてはいけない。

 そのため、知らないことはない、なんでも知っていると振る舞う者が多いが……

 フェンドリックは、それは悪手と考えている。


 知らないものは知らない。

 だからこそ、相手に教えを請うことができる。


 商人のプライド?

 そんなものはどうでもいい。

 それよりも、プライドを捨てることで得られる情報の方が価値がある。


「気づいているかな? ちょっとだけど、ここ、魔物に囲まれているよ」

「なんですって……?」

「あ、大丈夫。慌てないで。キミ達は、なにもしなくていいよ。というか、魔物もほとんど攻めてこないと思うから」

「どういうことでしょうか?」

「こういうこと♪」

「っ!?」


 瞬間、ぶわっとなにかが広がった。


 フェンドリックは背筋に悪寒が走るのを感じた。

 他の者達は顔を青くして……

 馬は怯えた様子で鳴く。


「今、なにを……」

「殺気を放っただけ。ここに近づいてくるヤツは殺すよー、っていう感じで♪」


 レナはにこやかに言う。

 笑顔で言うことではないのだけど……

 ただ、今はその笑顔が頼りになると、フェンドリックは心の中で感心した。


「魔物といっても、本能で動くところは動物と似ているからね。こうして、ちょくちょく殺気を放っておけば、近づいてくることはないと思うよ。さながら、殺気の結界かな?」

「……ありがとうございます。ですが、そのままでは疲れてしまうでしょう。今日はここを野営地として、魔物除けの結界を設置することにします。少し、お手伝いいただけますか?」

「おっけー♪」


 心強い味方を得たものだ。

 彼ら、彼女達がいれば、安全に南の街に行くことができるだろう。


 フェンドリックはその幸運に、思わず笑みをこぼすのだった。

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【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
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