491話 商隊からの依頼
「あれ?」
御者は交代で行い、今日は僕の番だ。
馬の扱いにも慣れてきて、一定のペースで走らせることができるようになった。
遅すぎず。
しかし、馬が疲れないように速すぎず。
一定のペースで進んでいると、道の先に複数の馬車が見えた。
「ソフィア、レナ。ちょっといいかな? あれ、なんだと思う」
「えっと……このようなところに、あれだけの数の馬車は珍しいですね」
「斬る?」
「どうしてこう、あなたは物騒な発想に突っ走るんですか……あれは盗賊などではなくて、どう見ても商人の隊商でしょう」
「だよね」
でも、複数の馬車を止めて、いくらかの人が話し合いをしているのが見えた。
このまま横を通り過ぎてもいいんだけど……
トラブルとなると気になる。
もしかしたら、この先の情報を手に入れられるかもしれない。
そう判断した僕は、ソフィアとレナの許可を取り、馬車を近くで止めて、商人のところに向かう。
「すみません」
「おや? こんにちは、旅の方ですかな?」
「はい。南へ向かう途中です」
「そうでしたか。いや、道を塞いでしまい申しわけない。すぐにどかしましょう」
「あ、いえ。気にしないでください。それよりも、なにかトラブルですか?」
「それは……ふむ」
40くらいの男性が、値踏みするような目を向けてきた。
ただ、あまり嫌な感じはしない。
「もしかして、冒険者の方ですかな?」
「はい。後ろの馬車に仲間がいます」
「でしたら……ギルドなど、後で私が調整しますので、この場で依頼をお願いできないでしょうか?」
「依頼ですか?」
「ええ。実は、この先で魔物の群れを発見しまして。どうしようか、困っていたところなのです」
「魔物ですか……商隊に護衛はついていないんですか?」
「いるにはいるのですが、盗賊が魔物を追い立てた、という可能性も捨てきれず……」
……あ、そういうことか。
魔物を討伐するために護衛を派遣する。
その間、商隊は無防備になるわけで……
そこを盗賊に狙われたらおしまいだ。
魔物が盗賊に追い立てられたものではないか、確信がないうちは迂闊に動くことはできないのだろう。
「そこで、あなたとその仲間に魔物の討伐を……可能なら、周囲の探索もお願いしたいのですが……」
「そうですね……ちょっと仲間と相談してきますね」
僕一人で勝手に決めるわけにはいかない。
一度、僕達の馬車に戻り、みんなに今の話をした。
「……と、いうわけなんだけど、どうかな? 僕は、引き受けてもいいと思うんだけど」
「仕方ないわねー。このマジカルミラクルトラブルリコリスちゃんにお任せよ!」
「問題ないと思います。どちらにしても、魔物がいる以上、対処は必要ですからね」
「倒すなら、報酬をもらえる方がいいよねー」
全会一致で決定。
ちなみに、アイシャ達はまだ寝ているので除外。
「リコリス、ついてきて」
「へいよー」
「ソフィアとレナは、この馬車をお願い。あと、商隊も気にかけてくれると」
「任せてください」
男性のところに戻る。
「すみません、おまたせしました」
「いえいえ。それで、どうでしょうか?」
「はい、お引きうけします」
「おお、それはありがたい」
「討伐は、僕とリコリスでやりますね」
「ええ、ええ。あなたなら安心でしょう。妖精もサポートしてくれるというのなら、百人力でしょう」
「えっと……」
ちょっと戸惑ってしまう。
大抵の人は、僕を見ても「大丈夫?」という顔をするんだけど……
「……僕で不安に思ったりしないんですか?」
「なぜ?」
「いや、その……あまり強そうに見えないかなー、って」
「はっはっは。自分でそのようなことを言ってしまうのですか?」
「あはは……まあ、事実かなあ、とは思うので」
「そうですな。確かに、そのように感じる人もいるでしょう」
ですよね……
「ですが私は、あなたのことをとても頼りにしていますよ」
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新連載です。
『おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~』
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