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490話 なるようにしかならない

「ま、なるようにしかならないんじゃない?」


 夜。

 適当な場所に馬車を止めて、野営をして……


 僕とリコリスが火の番をすることになり、流れでレナのことを相談してみたら、そんな答えが返ってきた。


「なるようにしか、って……適当だなあ」

「でも、実際、そうでしょ? こうしたい、ああしたい、って思ってもその通りにうまくいくなんてことないんだから。大体、どこかしらでトラブルが起きるものよ」

「それは、まあ」

「だから、フェイトが絶対ソフィアを……とか思っていても、10年後、実はレナと結婚しました、っていうこともありえるわ」

「それは……」


 そんなことはないと思う。

 思うのだけど……

 でも、可能性として否定することはできない。


 『絶対』なんてものはない。


「それはわかっているんだけど……」

「納得できない?」

「……うん」


 リコリスにそんなつもりがないことはわかっている。

 それでも、今の僕の決意や想いを否定されているような気持ちになってしまう。


 もやもや、っと。


「はぁ……なんか、ダメだなあ、僕は」

「いいんじゃない?」

「え?」

「別に、ぐよぐよーって、あれこれ迷ってもいいんじゃないの?」

「でも……」


 迷うことなく、ソフィアへの想いを貫くのが一番なのでは?

 二人の女性の間で心揺れているなんて、ダメな気がする。


 でも、リコリスの意見は違うみたいだ。

 あっさりと、さっぱりと言う。


「ってか、迷わない方が無理っしょ。リコリスちゃんも、昔はけっこうモテたんだけど、どうしようかなー? って迷ったわ」

「えっ」

「なによ、そのありえない、って顔は」

「いや、えっと……そ、それで?」

「ごまかしたわね……まあ、とにかく。迷うってことは、『考える』っていうことでしょ?」

「あ」


 その発想はなかった。

 ついつい、間の抜けた声がこぼれてしまう。


「たくさん迷うかもしれないけど、言い換えれば、それだけ考えている、っていうことなのよ」

「それは……」

「特に迷いもせず即決するよりは、考えて考えて考えて、それから迷って……そうして出した答えの方が価値があるんじゃない? 少なくとも、あたしはそう思うわ」

「……」


 そう……なのかもしれない。

 でも……うーん?


 リコリスの言葉に納得する一方。

 素直に受け入れることができない自分がいて、また、気持ちが複雑になってしまう。


「ま、あたしの言葉を素直に受け入れなくてもいいわ。ってか、そうするべきよ」

「そういうもの……なのかな?」

「そうよ。あたしの言葉を借りるんじゃなくて、フェイトは、フェイトの言葉を見つけなさい。あの二人に胸を張れるような、しっかりとした言葉を……ね」

「……」

「なに、どうしたの?」

「なんか、リコリスがリコリスじゃないみたい」

「うっさいわね!? どうせ、あたしらしくないことを口にしたわよ!」

「でも……ありがとう」


 お礼を言うと、リコリスはちょっと照れた様子で視線を逸らしてしまう。


「べ、別にあんたのためなんかじゃないんだからね!?」

「なんていうテンプレ……」

「ふふーんっ! テンプレは大事よ。この、天才知的無謀マジカル美少女リコリスちゃんが言うんだから、間違いないわ!」

「途中、入ってはいけない単語が入っていたような……」


 悩みは消えていない。

 答えは見つけていない。


 それでも、少し心が軽くなったような気がした。


 これから先、やるべきこと。

 そして、僕の心に整理をつけること。

 それらを見失わないようにして、しっかりと前に進んでいこう。


 時に迷うことがあるかもしれない。

 道を見失うことがあるかもしれない。


 でも……


「なによ?」

「ううん、なんでも」


 リコリスが……みんながいるから、きっと大丈夫。

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【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも安定安心!最強なリコリスちゃんが皆を案内するわ! って台詞出てくるかなから
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