482話 世界の果て
「世界の果て、と呼ばれている場所を知っていますか?」
「えっと……ううん。ごめん、よくわからないや」
「謝らないでください。普通、知らない場所ですから」
ソフィア曰く……
世界を下り、下り、下り……
最南端。
そこは、誰も足を踏み入れたことのない未踏の地。
世界の果てと呼ばれていて、未知の巨大生物がいるとか、山程の財宝が隠されているとか、色々な噂が流れているらしい。
財宝が得られなかったとしても、全未踏の地を踏破するということは意味がある。
誰からも尊敬の目を向けられるような、大きな栄誉を得ることができるだろう。
とても夢のある話だ。
ある者は富を求めて。
ある者は名声を求めて。
これまで、たくさんの冒険者が世界の果てに挑んできた。
その秘密を解き明かそうとしてきた。
しかし……
生還者はゼロ。
世界の果てに挑んだ冒険者は、全て帰らぬ人になっていた。
それほどまでに過酷で。
人類の知識、常識の範疇を超えた危険が潜んでいるという。
「世界の果てに、聖域が?」
「実は、非公式ですが、一人だけ、世界の果てからの生還者がいるみたいです」
「それが、冒険者ギルドの創設者。初代グランドギルドマスター、ってね。んー、強かったのかな? ボク、戦ってみたかったなー」
「話が逸れていますよ」
「おっと」
レナの気持ちは、ちょっとわからなくもない。
僕も一人の剣士として、どこまで届くか、自分の力を試してみたくなる時がある。
まあ、まだまだ未熟だけどね。
「フェイトが未熟なら、世の中の剣士の大半は未熟ですね」
「だねー。いつになったら、自分はかなりのレベルに到達している、って自覚してくれるんだろ? ま、そんなとぼけたフェイトも好き♪」
「さりげなく、そういうことを言わないでください!」
「ふふーん♪」
「えっと……ケンカはしないでね?」
時々、二人はこんな風になる。
仲が悪いように見えるけど、でも、服や化粧について楽しそうに話をする時もあって……
うーん、女の子ってよくわからない。
「じゃあ、あたし達の次の目的地は、世界の果て、ってことになるの?」
「だねえ。妖精ちゃん、怖気づいた?」
「まさか! 未踏の地となれば、とんでもないお宝が眠っているかもしれないわ。美少女トレジャーハンター、マジカル怪盗リコリスちゃんとしては興味津々ね!」
名乗りに情報量が多すぎる。
「ライラさんは、世界の果てに聖域があると思いますか?」
せっかくなのでライラにも意見を求めてみた。
「そうだね……うん。十分に可能性はあると思うよ」
「本当ですか?」
「聖獣は、人前に姿を見せることを好んでいないみたいだからね。自分達の住処が、誰もやってこられないようなところにある、っていうのは十分に納得のいく話さ。世界の果てなら、人間だけじゃなくて、獣や魔物もやってこられないだろうし、条件としてはこれ以上ないと思うよ」
「なるほど」
可能性は十分にある、と。
なら、目指してみるのもいいかもしれない。
ただ……
「わふ……」
「んにゃ……」
スノウとマシュマロは互いに体を寄せて、あくびをこぼしていた。
微笑ましい光景だ。
でも、二人を聖域に戻したら、この光景は見られなくなってしまう。
お別れになってしまう。
それで……いいのかな?
聖獣について調べることは必要だ。
深淵について調べることは必要だ。
その上で、なにかしらの対処を取ることも必要だ。
ただ……
その先のことは、まだ、なにも考えていない。
どうすればいいか。
どうするべきか。
まだ……僕達は、なにもわからない。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新連載です。
『堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く』
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