481話 情報整理とこれからの道筋
「……」
紋章について、少しでも情報を得られればいいな、なんて思っていたけど……
知りたいことのほとんどが書かれていた。
少し複雑な気持ちになる。
昔、聖獣に関する争い、欲望が繰り広げられていた。
今では考えられないほどの事件が頻発していたんだろう。
だからこそ、『黎明の同盟』が誕生した。
それは、復讐を果たすためだけじゃなかったのかもしれない。
自分達を守るためでもあったのかもしれない。
ある意味で、彼らは正しい。
でも……
『深淵』は違う。
ひたすらに欲だけを追い求めた、とても罪深い存在。
決して許されない、許されてはいけない者。
「そんな人達がいたなんて……」
……今も存在するのかな?
紋章は見つけたものの、それで『深淵』と決めつけるのは早計な気がした。
末端の中の末端かもしれない。
ただの偶然かもしれない。
「って、そうやって楽観的に考えるのはダメだよね」
黎明の同盟と同じように、今も『深淵』が存在している。
表に出てこないものの、裏で策謀を張り巡らせている。
そう考えた方がいい。
間違っていたら、その時は笑い話で済ませよう。
そうでない時は……
「……戦わないと」
僕の大事な人達を守るために。
――――――――――
「フェイト」
図書館の中央に移動して、ソフィア達と合流した。
そのまま情報交換をする。
「『深淵』……ですか。また、厄介な存在が出てきましたね」
「関与しているか、そこは断言できないけどね」
「でもさー、紋章ってのがあったじゃん? 関与は間違いないんじゃない?」
レナの言う通りなんだけど……
「それにしては、なーんか、影薄すぎない? 暗躍するにしても、目立たなすぎっしょ」
リコリスの言う通りでもある。
どれだけ隠れて行動しても、足跡は残るものだ。
全ての人からそれを隠すことは不可能。
必ず、どこかで人の目に触れるものだ。
それがないということは……
「もしかしたら、だけど……『深淵』の本体は、もうないのかもしれない」
「どういうことよ?」
「黎明の同盟のように、『深淵』は長く存在することはなかった。欲がメインで構成された集団だから、瓦解しやすいと思うんだよね」
黎明の同盟は、ある意味、信念が源にあったため強い絆で結ばれていた。
しかし、『深淵』は欲だけ。
そんな集団、長く存在することはできないと思う。
「だから、今の『深淵』は残党のようなもの。昔ほどの規模、力はないと思う。だから、前の事件のように個人で活動しているとか……そんなところなのかな、って思う。もちろん、あまり楽観的に考えたらいけないんだけどさ」
「んー……一理あるね。ボクもフェイトの考えに賛成」
「まあ、この先も関わらない、なんてことは難しいだろうけど……」
スノウとマシュマロがいる。
連中が求めるものが近くにいる以上、必然と関わりを持つことになるだろう。
「これ以上の情報は残っていないから、気をつける、っていうことしかできないんだよね」
「もどかしいなー。怪しいところを街ごと吹き飛ばしたら楽なのに」
「レナ、それは絶対にしないでね……?」
「あはは、嘘だよー。冗談。さすがのボクも、そこまで常識知らずじゃないよ」
ちょっと……いや、かなり本気にしたよ。
「では、私達が得た情報ですが……聖域の場所がわかりました」
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新連載です。
『堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く』
https://ncode.syosetu.com/n7621iw/
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