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48話 迎撃戦

 冒険者と憲兵達は街の門に陣地を構築して、徹底防御の構えをとる。


 そして、一方……

 ソフィアとクリフは、街から少し歩いたところにある広場に移動していた。

 偵察隊の報告が正しいのならば、あと三十分後に魔物の群れが津波のごとく押し寄せてくる。


 すでに、その兆候は見えていた。

 地平線の彼方に目をやると、空が見えない。

 代わりに黒いナニカが広がっていた。


 土煙を立てながら、こちらにゆっくりと向かっている。

 視界をびっしりと埋め尽くすほどの数の魔物だ。


 大災害。

 天災。

 世界の終わり。


 そんな言葉を連想するにふさわしい光景だ。


 常人ならば、恐怖に震えて、頭の中はまっしろになっていただろう。

 だがしかし、ソフィアとクリフは平然としていた。


 ありえないほどの数の魔物が見えていない様子で……

 いや。

 まるで気にかけていない。

 それだどうしたの? という感じだ。


「それで……私が三万、あなたが一万という配分ですか?」

「そうだね。そうしてもらえると、助かるかな」

「少し比率がおかしくありませんか? 普通、逆の配分では? 逆でなかったとしても、二万二万にすることが公平だと思うのですが」

「いやぁ、できれば僕もそうしたいんだけどね。僕の戦い方の仕様上、大軍をまとめて薙ぎ払うのには向いていないんだよね」

「……そういえば、あなたはどのような武器を?」

「僕の武器はこれさ」


 クリフは、やや大きいサイズの本を見せた。

 見る者が見ればわかる、圧倒的な魔力が込められている。


「おいで」


 クリフがそう言うと、その隣の地面が歪み……

 そこから巨大な狼が姿を見せた。

 黒い毛並みを持つ狼は、体長を三メートルは超えている。


「これは……珍しいですね。魔物召喚士ですか」

「正解。というか、知っていたんだ」

「詳しくは知りませんが、魔物を使役することができる、特殊な訓練を積んだ人だという程度の情報は」

「だいたい、それで正解だよ。今までに屈服させた魔物を使役することができる。さらに、裏で待機させておいて召喚することができる。モンスターテイマーに似ているね。この子は、僕が最初に使役した魔物でね。愛着もあるし、長い間、戦ってきてもらっているから、それなりに強いよ」

「どれくらいの数を使役しているのですか?」

「百以上かな」

「……それらを全部戦わせれば、あなた一人でなんとかなるのでは?」

「いやー、無理。さすがにそれは無理。けっこう強い魔物も使役しているんだけど、それでも、数の暴力の前にはやられちゃうくらいだからね。僕にできることは、壁を作り、できるだけ街に敵をやらないことかな」

「なるほど」

「でも……」


 クリフがニヤリと笑う。


「アスカルトさんは、数の暴力にやられたりはしない。むしろ、質で数を圧倒するタイプだ。違うかい?」

「……」

「僕は、前任者と違って剣聖を侮ったりなんてしないよ。大事なものを踏みにじるつもりなんて欠片もないし、応援もしたいと思う。だから、今は協力してくれないかな?」

「……やれやれ。悪人ではないようですが、掴みどころのない人ですね。あなたは」


 ため息をこぼしつつ、ソフィアは背中の剣を抜いた。


 それは、伝説の聖剣。

 全てを切り裂いて、刃こぼれ一つしない。

 例え刃こぼれしたとしても、自動で修復されてしまうという。


 最強の聖剣……エクスカリバー。


「まず、私が一撃を叩き込みます。その後、討ち漏らした敵を各自、相手にしましょう。私は一人だけなので、壁役になることはできません。そちらは任せました」

「オーケー、了解だ」

「新しいギルドマスターの力、しっかりと拝見させてもらいます」

「期待を裏切らないように、がんばらないといけないね。それじゃあ……」


 クリフは魔導書を開いて、意識を集中。

 魔力を注ぎ込み、今までに使役した魔物……その全てを呼び出す。


「来い!」


 クリフを中心に影が広がる。

 それは十メートルを超えて、さらに伸びて……

 百メートルほどに広がったところで、ようやく止まる。

 その影の中から、次々と魔物が出現した。


 ゴブリン、ウルフ、オーガ、ワイバーン……そして、ドラゴン。

 クリフに忠誠を誓う、ありとあらゆる魔物が現れた。

 その数は百以上。


「これは……驚きましたね。数十種類……百以上の魔物。さらに、ドラゴンまで使役しているなんて」

「一応、ギルドマスターだからね。これくらいは普通だよ」

「さて……では、私も負けていられませんね」


 ソフィアは、聖剣エクスカリバーを上段に構えた。

 天を突くかのように大きく、高く、剣を掲げている。


「ふぅ……」


 軽い呼吸。

 目を閉じて集中。


 すると、刀身が輝き始めた。

 最初は淡い燐光を放つ程度。

 その後、魔道具による夜の明かり程度になり……

 それで終わることなく、さらに光が収束されていく。


 間近に太陽が出現したかのような、強烈な光。

 世界が白に塗りつぶされていく。


 その輝きは、離れた街で待機していた冒険者、憲兵達もハッキリと目撃して……

 それだけではなくて、遠く離れた街からも見えたという。


「神王竜剣術・仇之太刀……」


 ソフィアが目を開く。

 強い眼差しで敵を睨みつけて、そして……一気に剣を振り下ろす。


「閃っ!!!」


 剣気、闘気、覇気……全てを圧縮させて、極大の一撃を放つ。

 神王竜剣術の中で、限られた者しか使うことができない奥義の一つだ。


 剣聖であるソフィアが力を練り……

 極限まで溜めて……


 そして、それを聖剣を媒介にして解き放つ。


 その一撃は神の一撃に等しい。

 全てを飲み込み、なにもかも打ち砕く破壊の光が顕現する。


 極大の光は大地をえぐりつつ、彼方から迫る魔物の大群に着弾。

 圧倒的な破壊力に抗うことはできず、魔物達は一瞬で消し飛んだ。


「いっ……けぇええええええええええぇぇぇっ!!!!!」


 その状態で、ソフィアは、さらに剣を横に薙ぐ。


 ゴッ、ガァアアアアアッ!!!


 地上に落ちた太陽が横に薙ぎ払われて、魔物の群れを飲み込んだ。


 ほどなくして光が穏やかになり、世界に色が戻る。

 そして……


 地平線の彼方に集結しつつあった魔物は、その半分が消し飛んでいた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] クリフ、テイマーだったのか! レインと同じくモンスターテイマーだったんだ。
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