478話 すっかり忘れていた
翌日。
しっかりとした治療を受けていたこともあり、僕は、問題なく歩くことができるように。
この調子なら、あと数日で剣も振れるようになるだろう。
その時は、また、毎日の日課になっていた訓練を再開したい。
ソフィアに勝利したものの、次、戦ったらどうなるかわからない。
驕ることなく慢心することなく、日々、努力を続けていきたい。
それはそうと。
無事、剣術大会が終了したのだけど、僕は、とても大事なことを忘れていた。
――――――――――
「フェイト、代わりに零番図書館の入館申請をしておきましたね」
「あっ」
さらに後日。
ソフィアからそう告げられて、ついつい間の抜けた声がこぼれてしまう。
いつものように僕の肩に乗るリコリスがじっとこちらを見る。
「フェイト……もしかして、剣術大会に出た目的を忘れていた?」
「そ、そんなことは……」
「じーっ」
「……ごめんなさい、忘れていました」
優勝して零番図書館への入館許可を得るのが目的だったんだけど……
レナやソフィアという強敵というか、超えたいと思っていた壁とぶつかることになって、大会そのものを一番に考えるようになっていた。
どうにかこうにか優勝できたことで、全部、成し遂げたつもりになっていた。
「ふふ、フェイトらしいですね」
「まったく、あんたっていうヤツは。ソフィアも甘やかさないの」
「よしよし」
「ガウ!」
「にゃー」
みんなに慰められてしまう。
うぅ……情けない。
「ま、そこらはどうでもいいんじゃない? 問題なく、零番図書館に入る許可はとれたんだしさ」
僕が退院するまでの間に、ソフィアとレナが動いて、代わりに許可をとってくれたらしい。
感謝だ。
「さっそく行きましょうか。まあ、今後、何度でも入館できるみたいなので、焦る必要はありませんが」
「なら、どうして?」
「えっと……すでにライラさんが突撃してしまいまして」
「あはは……」
嬉々として零番図書館に突撃するライラの姿がはっきりと想像できた。
こう言ってはなんだけど、一人にさせたらなにをするか。
ソフィアが言うように、僕達もすぐに追いかけた方がよさそうだ。
ソフィアとレナが色々と交渉してくれたらしく、スノウとマシュマロが一緒でも問題はないらしい。
みんなで零番図書館に向かう。
……その零番図書館は、ソラスフィールで一番の大図書館に併設されていた。
一般入り口のある手前が大図書館。
その地下に零番図書館、という構造だ。
地下への入り口は厳重な警備が敷かれている。
さらに、物理的な施錠。
魔法による管理もされていて、こっそり忍び込むことは不可能。
強引に突破するにしても、相当な時間がかかるだろう。
もちろん、僕達は許可をとっているため、問題なく中に入ることができる。
螺旋階段を下る。
長く、深く……どこまでも続いているかのような錯覚さえ覚えた。
昇降機などを設置しては? と思うのだけど……
いざという時、それは敵の足になってしまう。
なので、面倒だとしても昇降機は設置しない方針らしい。
階段を降りて、降りて、降りて……
10分ほど足を動かし続けたとろこで、ようやく終点に辿り着いた。
巨大な扉。
複数の鍵と魔法による封印機構が組み込まれているみたいだ。
入館許可証を受付の人に見せると、複数人で扉の封印を解除する。
巨大な扉がゆっくりと開いて……
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新連載です。
『堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く』
https://ncode.syosetu.com/n7621iw/
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